Project/Area Number |
23KJ0878
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 01050:Aesthetics and art studies-related
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Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
井奥 陽子 東京藝術大学, 美術研究科, 特別研究員(RPD)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,210,000 (Direct Cost: ¥1,700,000、Indirect Cost: ¥510,000)
Fiscal Year 2025: ¥390,000 (Direct Cost: ¥300,000、Indirect Cost: ¥90,000)
Fiscal Year 2024: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2023: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
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Keywords | 初期近代 / 啓蒙主義 / ヴォルフ学派 / バウムガルテン / カント / poeta vates / 予言 / 迷信 |
Outline of Research at the Start |
「啓蒙の世紀」と呼ばれるヨーロッパ18世紀は、理性で迷信を排除し、学問の近代化を推し進めた時代である。学問としての美学は、18世紀中頃のドイツで哲学者バウムガルテンによって創始された。美学は美や芸術を扱う学問と通常考えらえているが、申請者の調査によって、初期の構想では占術が大部分を占めるものであったことが判明した。なぜ占術が美学の主柱になりうると彼は考えたのか。本研究はこの問いに記号術と認識論の観点からアプローチし、「啓蒙の世紀」に理性と迷信がどのような緊張関係にあったのか、その一端を明らかにする。それによって美学研究の側から「近代啓蒙とは何であったのか」と問い直すことが、本研究の狙いである。
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Outline of Annual Research Achievements |
2023年度はまず、哲学・神学・科学史における占術の歴史について考察し、占星術を代表とする占術が近代に学術の外へ追いやられていった道筋を辿りつつ、本研究が対象とするヴォルフ学派の位置付けについて見通しを示した。 また占術と芸術の接点として注目すべきpoeta vates(予言者としての詩人)という思想について、古代~近代までの系譜を辿った。この思想はロマン主義でおおいに復興・流行するが、他方で18 世紀半ばのバウムガルテンのテクストには、この伝統に対して否定的な記述が見出される。これをたんにロマン主義がその反動となるような近代合理主義として片付けるのではなく、占いを脱神秘化することで学問へ取り込もうとする積極的な企てとみなすべきであろう、という見解を示した。その成果は3月に研究会で発表した。 バウムガルテンの美学は一般にカントによる批判を通して理解されていることから、カントによるバウムガルテン批判を改めて検討した。具体的には、完全性と合目的性およびそれらについての「形式」の概念を中心に、両者の根本的な立場の違いに由来する相違点を整理したうえで、それにもかかわらずカントはヴォルフ学派を受け継いで概念を形成したことを指摘した。その成果は10月に学会シンポジウムで発表した。 さらに新書『近代美学入門』を執筆したことで、美学史における近代の特徴を包括的な視点から検討し直すことができた。関連イベントとして、研究者との対談や、2度の合評会、講演会を開催し、近代美学について多角的に検討する機会を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2023年度は大半が研究中断期間であり、研究活動に十分な時間を割くことができなかった。研究内容としては、カントとバウムガルテンの比較研究について、本研究にとって重要な予見能力論にまで踏み込むことができず、この点に課題が残った。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の2つめの柱である、予見能力論の考察に注力する。ヴォルフ、ビルフィンガー、バウムガルテン、マイアー、カントを中心に調査し、適宜その他の周辺の思想家にも目を配る。
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