Project/Area Number |
23KJ0885
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 17010:Space and planetary sciences-related
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
岡本 珠実 東京工業大学, 理学院, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 2024: ¥500,000 (Direct Cost: ¥500,000)
Fiscal Year 2023: ¥500,000 (Direct Cost: ¥500,000)
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Keywords | 原始惑星系円盤 |
Outline of Research at the Start |
太陽系内側で形成されたと考えられる非炭素質コンドライト隕石(NC)と、外側で形成されたと考えられる炭素質コンドライト隕石(CC)の間では、明らかに異なる安定同位体比が報告されており、この二つの形成領域の間で物質の交換は行われていないと推測される。一方で、太陽至近で形成されたとされる高温凝縮物がCCの中に多く含まれていることから、太陽系内側領域から外側領域へ物質を輸送する何らかのプロセスも存在すると考えられる。本研究では隕石の原料であるダストの運動とサイズ成長を同時に計算し、これらの観測事実を統一的に説明可能な理論の構築を目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、研究目的の一つである地球の炭素枯渇に関する問題について主に取り組んできた。地球の炭素量が太陽に比べて2桁から3桁ほど低いこと、星間物質中に含まれる固体炭素の多くは地球軌道付近で気化しない難揮発性物質であることを踏まえ、太陽系の前身である原始惑星系円盤中の固体難揮発性炭素の運動を計算した。そしてこの固体炭素が円盤上空まで移動した際に中心星からのFUV照射により固体炭素が光分解することを考慮し、この光分解反応によって地球軌道付近の固体炭素量が初期の値に比べてどれだけ減少するか調べた。この計算では円盤鉛直方向及び動径方向の固体の運動を同時に計算する必要がある。そのため従来の固体面密度の移流拡散方程式を数値的に解く手法ではなく、固体粒子を円盤内にばら撒きその動きを確率的に追跡する、モンテカルロ法を用いて計算した。その結果、氷が固体炭素や珪酸塩より付着力が高い場合、及び円盤上空が円盤中心面よりも高温である場合において地球の炭素枯渇が説明可能であることがわかった。これらの効果は先行研究には取り入れられていなかった。また、彗星の炭素量は太陽とほぼ変わらないという事実を説明するためには、氷が凝固するスノーラインより外側で光分解反応を抑制する必要があることもわかった。氷が固体炭素や珪酸塩よりも付着力が高い場合、スノーライン内側に堆積する珪酸塩が中心星からの光を遮るため、スノーライン外側の光分解を抑制する可能性が高い。すなわち、氷の高い付着力及び円盤鉛直方向の温度分布を考慮することで太陽系の炭素分布を再現可能であることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究課題の一つである難揮発性炭素の破壊について詳細な計算ができた。しかし、初期段階で先行研究との比較にあまり時間を割かなかったので、計算結果の妥当性に関する議論が二転三転してしまい、論文執筆に想像していたよりも時間がかかってしまい、結局今年度中の論文投稿には至っていない。また、研究計画に記したダストの合体成長計算を組み込んだモンテカルロ計算コードは既に開発済みであるが、それを用いて円盤中のダストの運動を計算し、研究課題である同位体二分性が再現できるかどうかの確認はまだ済んでいない。これは、モンテカルロ計算の計算コストが高すぎるために計算時間が非常に長くなってしまい、かつ難揮発性炭素の破壊に関する計算及びコート・ダジュール天文台での共同研究に多くの時間を割いたためである。 一方で今年度はコート・ダジュール天文台に出張し、そこで木星大気に関する共同研究を行った。この研究では、原始惑星系円盤中の貴ガスの面密度進化を円盤ガスの光蒸発を組み込んだ上で計算し、最終的に貴ガスはダスト表面に凝固し水素ガスのみが光蒸発で散逸することにより、木星大気中の貴ガス水素比が上昇するか検討した。この研究は今年度中に初期成果が出るなど順調に進めることができた。 また、この共同研究では原始惑星系円盤のガス・ダストの面密度進化を数値的に解いているため、今後の研究課題の遂行に非常に大きく寄与すると期待される。特に、今回の数値計算で使用している円盤進化モデル(Morbidelli et al. 2021)は研究課題である隕石中の同位体二分性問題を微惑星の形成位置を二分することで説明しようとするモデルである。この先行研究の結果をモンテカルロ計算で再現し、そのモデル下でCAIなどの高温凝縮物の分布を計算することで、研究課題を遂行できるようになるだろう。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度は主に進化しない定常降着円盤上で固体炭素の運動を計算した。しかし、本研究課題の遂行の為には原始惑星系円盤を円盤形成段階からの時間進化を解く必要がある。コート・ダジュール天文台での共同研究では円盤進化の計算コードを使用していた。したがって研究課題遂行の為、まずこのコードをモンテカルロ計算でも扱えるように改良する。次に、研究課題である同位体二分性について計算した先行研究である Morbidelli et al. 2021 の計算結果をモンテカルロ法で再現する。その後、固体粒子の動きをモンテカルロ法で追跡し、超高温凝縮物であるCAIが円盤内でどのような分布を示すのか計算する。そして、先述の Morbidelli et al. 2021 の結果と照らし合わせ、隕石の分析結果からCAIが多く存在すると想定される領域と計算結果が整合的になっているか確認する。 同時に、進化する円盤上での難揮発性炭素の運動についても計算する。上記のCAIの分布が分析結果と整合的となる円盤モデル上で固体炭素の動きを追跡し、地球の炭素枯渇を再現できる結果になるか確認する。一方で、複雑有機物の熱分解が地球の炭素枯渇に大きく影響するという先行研究もいくつか存在する(Li et al. 2021)。それを踏まえて、複雑有機物の熱分解が太陽系の炭素分布にどのような影響を与えるかも同時に計算する。まず定常降着円盤上で複雑有機物ダストの運動を計算し、熱分解のみを考慮した結果と光分解のみを考慮した結果の間にどれほど差が出るのか調べる。そして、先述の進化する円盤上でも同様の計算を行い、地球の炭素枯渇を説明可能な最適モデルを検討する。
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