Project/Area Number |
23KJ0926
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 13030:Magnetism, superconductivity and strongly correlated systems-related
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
姚 大鵬 東京工業大学, 理学院, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥1,600,000 (Direct Cost: ¥1,600,000)
Fiscal Year 2024: ¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
Fiscal Year 2023: ¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
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Keywords | カイラルフォノン / マグノン / スピン流 |
Outline of Research at the Start |
本研究では、スピン回転結合を中心に、カイラリティ誘起磁性から発展させてカイラル分子やカイラル超伝導体に現れる特異なスピン物性を明らかにする。様々な実験が先導したが、その物理的なメカニズムはまだ完全に理解されていない。このようなカイラル伝導性は、結晶自身の持つらせん対称性と密接に結びつき、格子振動と回転に絡み合って効果が増大するということに特徴づけられる。そこで、フォノン存在下でのスピン物性を1つの可能性として提案したいと考えられ、カイラル分子の誘起磁性やカイラル超伝導体のスピン蓄積のメカニズムを理論的に解決することを目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
今年度は,物質中のスピン回転結合の理論を中心に「磁性体におけるカイラルフォノンのマグノンへの変換」と「超伝導体におけるカイラルフォノンによる電場誘起スピン流」の2つの研究テーマに取り組んだ. (1)強磁性体と反強磁性におけるカイラルフォノンがマグノンに与える影響の研究を行った.すなわち,原子の微視的な回転運動により,原子間距離が周期的に変化し,スピン間相互作用が変調されるときにマグノン励起状態がどのように影響を受けるかに関して断熱近似に基づいたベリー位相の方法を用いてカイラルフォノンがマグノンへ変換する現象を初めて理論的に予言した.具体的な研究対象は,2次元のカゴメ格子における強磁性マグノンおよびハニカム格子における反強磁性マグノンであり,これらはスピン間相互作用とジャロシンスキー守谷相互作用を含んだスピン模型である.それぞれの格子上でカイラルフォノンモードを導入すると,マグノン励起状態はカイラルフォノンによって変調され,原子回転の向きに依存してマグノン数が増えたり,減ったりすることを指摘した. (2)最近交流電場下で,らせん構造を有する超伝導体の両端に逆向きのスピン偏極が生じるという実験に注目し,フォノン角運動量を超伝導体へ拡張し,カイラルフォノンによる電場誘起スピン流の生成法を理論的に提案した.本研究では,らせん構造の持つ超伝導体に電場を印加することにより,電子フォノン相互作用を通じてカイラルフォノンによる有効磁場が誘起され,スピン偏極した準粒子が運ぶスピン流が流れることを現象論的に示した.その結果,スピン流は電場の偶関数であることを示し,その温度依存性は実験結果と定性的に一致し,超伝導状態下でスピン流が増大することを見出した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
まずカイラルフォノンによる幾何的な効果により,マグノン数が増大したり,減少したりすることで磁化はそれに応じて変化することを,強磁性体と反強磁性体の両方において予言した.この現象を通じて,カイラルフォノンが有効的な磁場とみなされることが磁性体でも結論づけられ,イオンのミクロな回転により,マクロな磁化を変調することができることが理論的に実現された. また,最近報告された,超伝導体におけるスピン蓄積という実験に着目し,超伝導体においてカイラルフォノンを考慮した,新しいスピン流の生成法を提案し,計算したスピン流の電場や温度依存性などは実験結果と定性的に一致することを見出すことができた. 以上のことから,磁性体と超伝導体においてカイラルフォノンを取り入れた理論を構築し,それがもたらす現象を予言し,実験結果の説明へも応用できた.
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Strategy for Future Research Activity |
カイラリティ誘導スピン選択性(CISS)は多くの実験観測が報告されたが,その背後にスピン分極が起きるメカニズムについては未だ理解されていない.カイラル分子において不純物散乱や電子フォノン相互作用がどのような役割を果たすか,特に時間反転対称性のもとで散逸効果などがどのように効いてくるかをカイラル分子のモデルを簡単化した上で理論的な解析を行う.まずらせん対称性を持つ金属系を,らせん対称性の既約表現を用いて簡単な2バンドモデルに帰着する.ここにポテンシャル壁を設けた系は,非磁性カイラル分子の端とみなすことができ,その系でCISS効果の消失を証明する.さらに,一般化に向け時間反転対称性さえあれば,不純物散乱や電子フォノン相互作用が存在してもスピン分極が起きないことを理論的に予言する.今まで混乱してきたCISSの研究現状をある範囲できちんと整理し,実験研究者へも有意義な結論を提案することを目指す.
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