Project/Area Number |
23KJ0983
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 13010:Mathematical physics and fundamental theory of condensed matter physics-related
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
レイエス ラウスティン 横浜国立大学, 大学院理工学府, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥1,600,000 (Direct Cost: ¥1,600,000)
Fiscal Year 2024: ¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
Fiscal Year 2023: ¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
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Keywords | 量子中継 / 量子通信 / ダイヤモンドNV中心 |
Outline of Research at the Start |
長距離における量子通信は光ファイバ中の伝送損失で数100 kmで実施することは困難であり、これを解決する手法として量子中継が提案されている。量子中継において最も重要なのは遠隔地における量子もつれ状態を生成することにある。本研究ではダイヤモンド中の窒素―空孔中心を用いて遠隔量子もつれ状態の生成を目的とする。遠隔量子もつれ状態生成には様々な手法が存在するが、本研究では発光の効率が小さい状況でも有用な光子干渉を原理とした手法に着目する。
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Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は遠隔2ノードにおける量子もつれ生成に向けて以下の研究を実施した。 1.10mの可視光帯光ファイバリンクを実験室内に設置し、片側ノードのダイヤモンドNV中心から放出した光子をもう片方のノードに送信した。反対ノードのNV中心が光子を吸収し、さらに自然緩和によって放出した光子を超伝導ナノワイヤ単一光子検出器(SSPD)で検出し信号を得た。その検出信号はNV中心の吸収波長を掃引することでスペクトルを得ることができ、共鳴時にのみ吸収が起こることを確認した。 2.実地での長距離量子中継に向け周期分極反転ニオブ酸リチウム(PPLN)導波路を用いてNV中心から放出された可視光帯光子(637nm)を通信波長帯光子(1550nm)に変換し、10kmの光ファイバスプールを透過させSSPDで単一光子の検出を行った。この実験はNV中心の準位に共鳴しないレーザー及び共鳴するレーザーで行い、前者は波長フィルタで後者は偏光によってダイヤモンド表面で起こる反射光を除去した。 3.量子中継の前段階実証として1ノードにおいて要素技術である、量子もつれ生成量子もつれ吸収・ベル測定を複合した操作をNV中心に存在する電子スピン・窒素核スピンを用いて実証した。あらかじめ量子もつれ状態に状態準備した電子スピン-窒素核スピンに対して定まった偏光のレーザー光を入射し、吸収が起こると光子の偏光状態が窒素核スピンに転写される。吸収が起こった後の自然緩和光の偏光と電子スピン-窒素核スピンのベル測定には相関があり、これを検出した。レーザー光は10km伝送に必要な量子波長変換に関わるロスを考慮した強度まで減衰させた状況(1光子以下)においても相関が観測された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現在、実地での遠隔2地点間での量子もつれ生成に向けて、今年度は光子干渉計の作成の前に、NV中心から放出される可視光帯(637nm)の光子を日常の光通信で利用される通信波長帯(1550nm)の光子に波長変換するための光学系の開発や、開発した光学系を利用してNV中心光子に対して実際に波長変換を施し、実験室内で10kmの通信波長帯の光ファイバ中を伝送させる実験を行っている。将来、実地での光子干渉方式を用いた2地点間量子もつれ生成を実施する問題として、2024年1月にボストンエリアにおける50km通信波長帯ファイバテストベッドの研究の中で、10時間程で40nsの時間ずれが生じることが報告された。これを受けて、ファイバの伸縮に対して量子もつれ状態の忠実度が変化しない、発光―吸収型の量子もつれ生成に向けた実験を進行するようになったため、計画とは異なる方式でゼロ磁場における遠隔2地点量子もつれ生成を試みている。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は光子レベルまで強度を減衰させたレーザーを10km伝送して通信波長帯からNV中心に共鳴する波長に変換して吸収させることで、発光―吸収型の量子もつれ生成を行う上での基盤技術を複合した操作を実証した。2024年度は光子レベルまで強度を減衰させたレーザーではなく、NV中心から放出された光子を伝送しもう片方の地点に設置したNV中心に吸収させることで量子もつれ状態の生成に挑戦する。本実験を行う上では、10kmファイバ中の偏光回転が問題になるが、十分に密封された空間では偏光回転の抑制が見込めるため、そのような環境を整備する。整備された環境で偏光の回転度が大きいのであれば、強度の大きいレーザーを用いた偏光モニタリングによるフィードバックで解決を図る。また、現状の波長変換の効率では単一光子検出器のダークカウントノイズに埋もれてしまうので、精密な調整が可能なアライメントマウントを利用して効率向上を試みる。
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