Project/Area Number |
23KJ1008
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 16010:Astronomy-related
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Research Institution | The Graduate University for Advanced Studies |
Principal Investigator |
吉田 有宏 総合研究大学院大学, 物理科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥3,000,000 (Direct Cost: ¥3,000,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
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Keywords | 原始惑星系円盤 / アストロケミストリー / 同位体組成 / 惑星系形成 / アルマ望遠鏡 / 電波観測 |
Outline of Research at the Start |
惑星系がどのように形作られたのかを明らかにするためには、物質の「指紋」とも言える同位体比が役に立つ。惑星とその材料物質の同位体比を比較することで、惑星の起源に制約を与えることができるのである。しかし、惑星の材料物質の同位体比を測定することは未だ難しい。本研究では、まず、アルマ望遠鏡を用いて惑星の材料物質の同位体比を測定するための新しい手法を確立することを目指す。次に、その手法をさまざまな惑星形成現場に適用し、惑星が作られる過程で同位体比がどのように変化するかについて統一的な理解を得る。さらに、得られた材料物質の同位体比を惑星の同位体比と比較して、惑星形成過程を物質科学的観点から理解する。
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Outline of Annual Research Achievements |
惑星系物質の起源を明らかにするためには、惑星系の形成現場である原始惑星系円盤の化学構造を理解することが重要である。本研究では、特に炭素同位体組成に着目し、アルマ望遠鏡を用いてその観測的制約に取り組んだ。また、原始惑星系円盤中のガスの絶対量も円盤の物理・化学構造を議論する上で非常に重要なパラメータである。さらに、惑星系の固体成分の直接の材料である円盤ダストのアルベドを新たな手法を用いて測定することで、ダストの物質的性質にも迫ることに成功した。具体的には、本年度は以下の3つの項目を集中的に行なった。 (1)TW Hya円盤における12CN/13CN比の測定: アルマ望遠鏡のアーカイブデータにおいて、TW Hya周りの原始惑星系円盤で13CN分子の輝線が検出されていることを発見した。既存の12CN分子輝線のデータも用いることで、12CN/13CN比が70程度であることを見出した。これは同じ円盤での12CO/13CO比とは異なっているが、H12CN/H13CN比とは整合的であり、円盤中で複雑な炭素同位体分別が起きていることを初めて明らかにした。本研究は査読論文としてまとめ、本年度中に受理された。 (2)原始惑星系円盤ガス質量・面密度分布の制約手法の提案: 原始惑星系円盤のガス質量と面密度分布を測定するために輝線の圧力広がりを用いる新たな手法を考案し、4つの原始惑星系円盤を対象にしてアルマ望遠鏡に観測提案を行ない、受理された。観測は2024年秋までに実行される予定である。また、本手法を用いて別の2天体についての既存の観測データの解析も進行中である。 (3)円盤ダストアルベドの制約: (2)の副産物として、一酸化炭素輝線の圧力広がりによるウィングを用いてTW Hya円盤中のダストのアルベドを測定した。アルベドは高く、今まで考えられてきた一部のダストモデルとは整合的でないことがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
原始惑星系円盤中で進行する炭素同位体分別の描像全体を明らかにするためには、さまざまな分子において炭素同位体比を測定し、どのようなメカニズムによって分別が引き起こされたかを理解する必要がある。本研究では、原始惑星系円盤中で12CN/13CN比を初めて測定し、12CO/13CO比と異なる値を示すことを確認した。この結果は円盤化学進化の議論に波及し、観測結果を説明するためには時間進化や円盤鉛直方向の構造を考慮した、より高精度な理論モデルが必要であることを示している。 また、採択されたアルマ望遠鏡の観測提案が実行されれば、原始惑星系円盤中のガス質量に強い制限を与えることができ、円盤化学構造のみならず、惑星形成論の分野全体に対し大きなインパクトを与えることができると考えられる。さらに、円盤ダストのアルベドをモデルに依存せず測定することに成功したのは初めてであり、本手法のさらなる応用も期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、まずTW Hya円盤において、さらに他の分子でも炭素同位体比を測定するほか、TW Hya円盤以外の天体に関しても同様の研究を行うことを検討する。加えて、輝線の圧力広がりを用いるガス質量測定手法を観測提案中のものを含めた複数の天体に適用する予定である。特に、申請者が参加しているアルマ望遠鏡大型プログラム「exoALMA」で得られたデータの解析を優先して行う。得られた結果は論文にまとめるほか、国際学会等にも積極的に参加し発表する予定である。
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