Project/Area Number |
23KJ1028
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 90140:Medical technology assessment-related
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
前田 達哉 金沢大学, 医薬保健学総合研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥1,800,000 (Direct Cost: ¥1,800,000)
Fiscal Year 2024: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2023: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
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Keywords | 放射線防護 / 医療被ばく / 放射線物理学 / X線遮蔽体 / 被ばく線量測定 / 診断用X線 |
Outline of Research at the Start |
本研究の目的は,医療現場でのX線を用いた診療や手術において,患者さんや医療スタッフの被曝線量を減らすために用いる新しいX線遮蔽体を開発することである.被ばくによる健康リスクに加えて,肉体的・精神的な負担を軽減できる快適な遮蔽体の開発を目指す.柔軟性や通気性に富んだスポンジに金属粒子を付着させることで,快適に使用できる新しいスポンジ遮蔽体の開発を行う.本研究によって,スポンジ遮蔽体を用いた防護製品が実現できれば,医療現場における労働環境の向上が期待される.
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Outline of Annual Research Achievements |
X線は医療で広く用いられているが,放射線被ばくによる発がんリスクが内在しており,患者及び医師の双方の被ばく低減が急務である.線量低減を目的とした放射線防護具の開発や,リスク因子を適切に管理するための被ばく線量の推定手法の開発が重要な研究テーマとなっている.これらの研究は,理論研究に始まり素材開発及び臨床応用に至るまで,非常に幅広い分野にまたがっているため,これらを統括的に解決した研究は非常に少ない. 今年度は,新しいX線遮蔽体の開発に取り組み,英語原著論文が医学物理学分野で最も権威があるMedical Physics誌(IF=3.8)に掲載された(2023年12月).多孔質のポリウレタンフォームに金属粒子を付着させることで,“弾性のあるX線遮蔽体”を作製できることを世界で初めて着想した.評価手法として(a)X線遮蔽性能,(b)均一性及び(c)柔軟性の3項目が重要であることを科学的に導き,遮蔽体の至適条件を導出し実証をした.特に,(b)均一性に関しては,医療用装置を用いて遮蔽体のレントゲン撮影を行い,X線画像を解析することで汎用的な手法の開発に成功した. また開発した遮蔽体は医療用X線CT検査における甲状腺の被ばく防護への応用が見込まれた.そこで,CT検査における被ばく線量測定や遮蔽性能評価手法の開発に着手し,「X線画像を解析することで螺旋軌道を描くX線管の位置を同定し,被曝線量測定に応用できる」という新規のアイデアを考え付いた(2023年度特許出願2件).このテーマは,CT画像と線量測定を融合させた新しい概念の被ばく線量評価手法の提唱に繋がった.このテーマでは,ファントムを用いた基礎実験から患者を対象とする臨床データ取得までを網羅的に研究し,医療系の国際学会にてアワードを取得することができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
スポンジ型の弾性のあるX線遮蔽体の開発に世界で初めて成功し,遮蔽体の性能としてX線遮蔽性能,均一性及び柔軟性を評価することが大切であることを科学的に導いた.特に均一性については,医療用装置を用いて遮蔽体のレントゲン撮影を行い,取得したX線画像を解析することで汎用的な評価手法を開発した.当初博士後期課程の3年計画で行うことを予定していた一連の研究を,D2までの期間で完了することができた.この研究は,英語原著論文として一本の論文にまとめ,医学物理学分野で最も権威があるMedical Physics誌(IF=3.8)に掲載された(2023年12月). 開発した遮蔽体の応用先として,医療用X線CT検査の甲状腺被ばく線量低減(線量測定)が有望であった.そこで,CT検査における被ばく線量測定手法の開発にもチャレンジし,世界に類を見ない新しい線量測定手法の開発に成功した.このテーマは,研究グループの新しい柱となり得る画期的な手法であり,金沢大学・岡山大学・山口大学・神戸常盤大学の4大学で構成される新しい研究チームを結成し,実証実験によって関連特許を取得し,さらに臨床データを取得し,国際学会でアワードに選出されるなど,目覚ましく進展した. また,国内企業との共同研究に関わる遮蔽体の種々の計測や試作品の性能検査,さらに発展テーマの創出などに貢献していると考えている.2023年度は,投稿論文3本(主著1本),著書1本,国際会議アワード2件(主発表1件)および特許出願2件に貢献し,当初計画以上の成果を挙げている.
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Strategy for Future Research Activity |
X線遮蔽体の開発に関連して,被ばく線量測定手法や遮蔽性能の評価手法の開発にも取り組んでいく.遮蔽体開発においては,国内企業との共同研究を継続し,理論検討や遮蔽性能評価等を行うことで開発したX線遮蔽体の臨床応用や実臨床を想定した性能評価に着手していく.現在,スポンジ型の弾性のあるX線遮蔽体の臨床応用として検討している胸部CT検査での甲状腺被ばく防護においては既存の評価手法が使用できなかったため,新しい被ばく線量測定手法とX線遮蔽体の遮蔽性能評価手法を開発した.このテーマは,今後CT開発メーカー(Siemensヘルスケア社)の協力の下で,理論検討や実証実験を進めることでより研究テーマが発展し成果が生まれると考えている.
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