免疫細胞のグルタミン代謝を制御するガレート型プロシアニジンの疾患予防効果の解明
Project/Area Number |
23KJ1039
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 38050:Food sciences-related
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
遠藤 勝紀 信州大学, 総合医理工学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,000,000 (Direct Cost: ¥2,000,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
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Keywords | ポリフェノール / 免疫 / 標的分子 |
Outline of Research at the Start |
本研究では、ポリフェノールの一種であるガレート型プロシアニジンについて、免疫調節作用の観点から機能性を明らかにすることが目的である。先行研究では、ガレート型プロシアニジンによるT細胞サイトカインの選択的な抑制作用が、細胞代謝の制御を介したメカニズムであることが示された。そこで本研究では、ガレート型プロシアニジンの細胞代謝抑制作用をさらに詳細に明らかにし、T細胞における標的分子の同定を試みる。また、ガレート型プロシアニジンが免疫関連疾患を改善させることを証明するため、疾患モデルマウスに経口投与した際の病態改善を検証する。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ポリフェノールの一種であるガレート型プロシアニジン(PCB2DG)について、免疫調節作用の観点から機能性に関する研究を行った。先行研究において、PCB2DGはT細胞が産生するサイトカインを選択的に抑制することが確認されている。しかしながら、その作用メカニズムおよびPCB2DGの疾患改善効果は明らかになっていない。そこで本研究では、T細胞の活性化において重要な役割を果たすグルタミントランスポーターに着目し、PCB2DGの作用メカニズムの解明および標的分子の同定を試みた。また、PCB2DGによる疾患改善効果を明らかにするために、多発性硬化症のモデルである実験的自己免疫脳脊髄炎(EAE)マウスを作出し、PCB2DGを経口投与した際の病態改善効果を検証した。その結果、PCB2DGがT細胞のグルタミン取り込みを阻害することを見出した。さらに、in vitroおよびin silicoの手法を用いた解析により、PCB2DGがグルタミントランスポーターであるASCT2に直接結合することを明らかにした。続いて、作出したEAEマウスに対してPCB2DGを経口投与した際の病態を解析した結果、PCB2DGはEAEマウスにおける脊髄の炎症を改善させ、病態スコアを著しく低下させることを見出した。また、PCB2DGを投与したEAEマウスでは、脾臓における抗原特異的なT細胞サイトカインの産生抑制がみられ、さらにT細胞の活性化を制御する解糖系が顕著に抑制されることを確認した。これらの結果は、薬理学系の国際学術誌であるInternational ImmunopharmacologyおよびEuropean Journal of Pharmacologyに投稿し、受理された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画では、ガレート型プロシアニジン(PCB2DG)の標的分子を明らかにするため、in vitroの手法を用いて解析を行う予定であった。本研究では、化合物との結合によりプロテアーゼに対する分解耐性を示すタンパク質を標的分子として同定するDARTS assayを実施し、グルタミントランスポーターであるASCT2がPCB2DGの標的分子であることを見出した。その後、当初計画していた分子間相互作用解析を用いた標的分子とPCB2DGの結合強度解析は実施せず、計算化学を用いたドッキングシミュレーションを行い、PCB2DGが標的分子に結合する際の結合部位を特定した。結合強度の解析は行わなかったものの、in vitroおよびin silicoで標的分子が明らかになったことから、これらの成果を論文にまとめ受理されたため、以上の研究課題はおおむね順調に進展していると判断した。 また、研究計画で示したPCB2DGの疾患改善効果については、検討実験が順調に進み、疾患モデルマウスである実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)が作出できたため、当モデルマウスにPCB2DGの経口投与実験を実施した。再現性を得るために複数回の実験を行い、PCB2DGによる病態改善効果を明らかにした。また、PCB2DGによるEAE症状改善効果のメカニズムを明らかにするため、既に先行研究で報告しているPCB2DGによる解糖系制御について、PCB2DGを経口投与したEAEマウスの脾臓細胞を用いて検証した。その結果、PCB2DGは免疫細胞の解糖系を制御することで過剰なサイトカイン産生を制御することが確認された。以上の結果から、PCB2DGの疾患改善効果およびそのメカニズムが明らかになったため、当初予定していた腸管吸収解析は実施せず、論文にまとめ受理されたことから、研究課題はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題では、ガレート型プロシアニジン(PCB2DG)による標的分子の同定および疾患改善効果を明らかにした。今後の研究では、本研究で用いた化合物であるプロアントシアニジン類を多量に含むブドウ抽出物を用いて、より発展的な研究を実施する。 プロアントシアニジン類は、ブドウの果皮、種皮、果柄において豊富に含まれることが報告されていることから、ブドウ加工残渣においては非常に多くのプロアントシアニジンが含まれる。また、本研究課題においても示されたように、プロアントシアニジン類は顕著な免疫調節作用を有しており、免疫関連疾患の改善に寄与することが予想される。 近年、世界的なパンデミックを引き起こした新型コロナウイルス感染症においては、その重症化に免疫細胞の異常な活性化が関与することが示されている。特に、ウイルス感染時に肺組織で引き起こされるサイトカインストームは、免疫細胞の過剰なサイトカイン産生が原因であることから、炎症に関わる免疫細胞の機能を適切に制御することが重症化リスクの低減に寄与すると予想される。そこで本研究では、ウイルス感染時のサイトカインストームを模倣した肺炎症モデルマウスを用いて、プロアントシアニジンを含むブドウ抽出物を投与した際の炎症抑制効果を検証する。現在、得られたブドウ抽出物の免疫調節作用をin vitroの細胞培養実験にて検証しており、過剰なサイトカイン産生を制御することが示唆されている。特に、サイトカインストームに寄与する免疫細胞であるマクロファージやT細胞に対して、ブドウ抽出物が効果を示す可能性が示唆されていることから、今後はこれら免疫細胞に対する作用メカニズムの検証と、in vivoにおける経口投与実験を行い、ブドウ抽出物由来プロアントシアニジン類の肺炎症抑制効果を検証する予定である。
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Report
(1 results)
Research Products
(7 results)