Project/Area Number |
23KJ1045
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 43030:Functional biochemistry-related
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
磯貝 樹 岐阜大学, 連合農学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,000,000 (Direct Cost: ¥2,000,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
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Keywords | 細胞外小胞 / インテグリン / 細胞外基質 / ラミニン / N型糖鎖 / 蛍光顕微鏡観察 / 超解像観察 |
Outline of Research at the Start |
がん細胞が分泌したsEV、または、エクソソームと呼ばれる粒子が選択的に細胞に取り込まれ、臓器特異的ながんの転移に関わると報告されているが、そのメカニズムは明らかではない。さらに、sEVはごく微小であるため、生きた細胞への結合や取り込みを観察することが難しいという課題がある。そこで、1粒子のsEVと細胞上の分子の超解像動画を同時に観察するライブイメージング法を新たに開発し、生きている細胞上でsEVが結合する分子を高精度の観察により調べることを可能にした。本研究では、sEVの動態を直接観察することで、がん細胞のsEVが臓器選択的に結合するメカニズムの解明を試みる。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、超解像・蛍光1粒子観察技術を用いて、がん細胞の分泌するsEVが標的細胞へ選択的に結合するメカニズムを解明することを目的としている。予備的研究として、sEVと細胞や細胞外基質との結合を観察することで、がん細胞のsEVがインテグリンを介して細胞上の細胞外基質に結合することを明らかにした。さらに、様々なインテグリンがsEVに含まれているにも関わらず、細胞外基質の一つであるラミニンにのみ多く結合するため、sEV上のインテグリンは種類に応じて異なる機能制御を受けていることが考えられた。昨年度は、(1)タリン1やCD151と(2)N型糖鎖の構造がこのインテグリンの機能制御に関わるかを検証した。 初めに、細胞中でインテグリンを制御する (1)タリン1やCD151がsEV中でも結合能を制御しているかを検証した。蛍光1粒子観察によりsEVの結合能を評価した結果、様々なインテグリンを活性化するタリン1は、結合能に関わらないことが分かった。一方で、ラミニンに結合するインテグリンのみを活性化するCD151が、sEVのラミニンへの結合能を向上させていることが分かった。これらの結果から、CD151がラミニン受容体のみを活性化しているため、sEVがラミニンによく結合することが示唆された。 加えて、(2)N型糖鎖の構造がインテグリンの機能を制御するかを検証した。がん細胞由来sEV上のインテグリンβ1のN型糖鎖は、元の細胞と比べて高分岐型糖鎖やシアル酸を多く持つことが共同研究により明らかになった。そのため、高分岐化やシアル酸付加を行う酵素を欠損させた細胞由来のsEVと細胞外基質との結合を観察により評価した。その結果、酵素欠損によりこれらの糖鎖構造を持たないsEVは細胞上のラミニンへの結合能が低下したため、N型糖鎖への高分岐化とシアル酸付加がインテグリンの活性を向上させていることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度は、(1)タリン1やCD151と(2)N型糖鎖の構造ががん細胞sEVのインテグリンの機能制御に関わるかの検証を行った。(1)の実験として、生化学的にタリン1やCD151の量を制御したsEVを作成し、このsEVの細胞外基質への結合能を観察により定量することで、これらが結合に関わるかを調べた。その結果、sEV上ではタリン1がインテグリンの機能を制御しておらず、ラミニンに結合するインテグリンのみをCD151が活性化していることが明らかとなった。そのため、CD151が働くことで、がん細胞のsEVが標的細胞上のラミニンに選択的に結合することが示唆された。加えて、(2)の実験として、高分岐型糖鎖やシアル酸付加した糖鎖を生成する酵素を欠損させたがん細胞由来のsEVの細胞外基質への結合能を評価した。その結果、これらの糖鎖がなくなるとsEVの細胞上のラミニンへの結合が減少したため、N型糖鎖の高分岐化とシアル酸付加がこの結合に関わることが明らかとなった。 したがって、当初の計画の通り、(1)と(2)に関する検証を完了することができた。特に、予備実験の結果から、なぜ様々なインテグリンがsEVに含まれているにも関わらず、sEVがラミニンにのみに多く結合するのかという疑問点があったが、(1)の検証結果から、sEV上でCD151がラミニン受容体のみを活性化するためであることを発見した。これにより、がん細胞のsEVがラミニンに結合する分子メカニズムをおおむね明らかにできた。そのため、本研究は順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度の研究結果から、N型糖鎖の構造ががん細胞のsEVと標的細胞上の細胞外基質との結合に関わることが明らかとなった。そのため、本年度は、インテグリンを修飾するN型糖鎖が結合に関わるかを調べる予定である。sEVのラミニンへの結合に関わるインテグリンβ1について、複数修飾されている中のどのN型糖鎖が結合能を制御するかを検証する。特に、細胞外基質との結合領域付近のI-like domain 中の3つのN 型糖鎖が、細胞膜上で活性を制御するという報告があるため、重点的に調べる。具体的には、生化学的に糖鎖修飾を制御したsEVを単離し、これまでと同様に、1粒子・超解像同時観察により結合を定量することで、それぞれのN型糖鎖がインテグリンβ1の機能を制御するかを明らかにする。
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