Project/Area Number |
23KJ1056
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 14030:Applied plasma science-related
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
井上 健一 名古屋大学, 低温プラズマ科学研究センター, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
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Keywords | プラズマ表面改質 / 六方晶窒化ホウ素 / ダングリングボンド / ナノハイブリッド材料 |
Outline of Research at the Start |
本研究課題では次世代ナノハイブリッド材料について、液相共存プラズマを用いた高効率な合成プロセス開発を目的としており、六方晶窒化ホウ素(h-BN)基板上への欠陥導入および有機化合物を前駆体とした自在な異種層合成を目指す。またその実現のため、プラズマプロセスのin situラジカル計測・表面分析技術も組み合わせて開発を行う。h-BNはグラフェン等の二次元材料に対する優れた絶縁基板として作用するだけでなく、近年はh-BN欠陥を利用した量子通信用の単一光子源や量子センサへの応用が注目されている。本研究によって高効率なナノハイブリッド材料・量子材料合成が実現すれば従来の転写法等に代わる革新的手法となる。
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Outline of Annual Research Achievements |
近年は異種物質を分子レベルで接合したナノハイブリッド材料が注目を集め、有機材料と無機材料の特性を両立した有機/無機複合材料や、異なる二次元物質に積層したヘテロ構造体の研究が盛んに進められている。本研究課題はプラズマによる非平衡反応場を活用することでナノ粒子表面での異種層形成を実現し、次世代ナノハイブリッド材料合成プロセスの開発を目的としている。 特に液相中で局所的にプラズマを生成する液中プラズマは、熱化を抑制しつつ液相中に溶解・分散させた有機化合物やナノ粒子表面の活性化が可能であり、任意の有機ラジカルを前駆体としたナノ粒子表面での高効率かつ選択的な異種層形成が期待できる。そのため本研究では、液中プラズマにおける①ナノ粒子表面活性化の過程と、②連鎖的な有機ラジカル生成過程を解明・制御することで、六方晶窒化ホウ素(h-BN)を初めとするナノ粒子表面での異種層形成を実現する。 これまでの研究から、液中プラズマによるh-BNの表面改質ではまず表面にダングリングボンドが形成し、そこが起点となって官能基やアモルファスカーボンの修飾が起こることが示されている。そこで本年度は表面活性化過程の解明のため、プラズマとh-BN表面の相互作用によるダングリングボンド形成過程、および形成したダングリングボンドに対する修飾反応過程を、電子スピン共鳴分析(ESR)を活用して調査した。具体的には大気圧プラズマ装置とESRを直結することで、h-BN表面でのダングリングボンド・欠陥形成過程をその場計測できるin situ ESRを開発し、反応メカニズム解明に取り組んだ。また液中プラズマ表面改質h-BNを大気環境下で長期間ESR分析を行うことで、空気酸化によるダングリングボンドへの修飾反応過程を明らかにし、さらに定量的な分析による速度論的解析を実現した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究では水溶液中プラズマを用いることで、六方晶窒化ホウ素(h-BN)粒子表面でのアモルファスカーボン層形成に成功しており、有機/無機複合材料の開発に応用してきた。その過程でプラズマ処理によってh-BN粒子表面で形成するダングリングボンドがカーボン層の接着に寄与していることが示唆されている。そのため本研究課題では、異種層合成および接着の起点となるダングリングボンドの形成メカニズムの解明も計画に含めている。 本年度は基板材料となる六方晶窒化ホウ素(h-BN)粒子を対象に大気圧プラズマ処理を行うことで、ダングリングボンドの形成を確認し、またその形成メカニズムの解明に重点的に取り組んだ。ダングリングボンドの検出は電子スピン共鳴(ESR)を用いて行い、当初の計画通りプラズマ処理下でのh-BN粒子表面でのダングリングボンド形成をその場計測するために大気圧プラズマリアクターとESR装置を直結したプラズマin situ ESRを開発した。プラズマin situ ESRを用いることで、プラズマ処理中のh-BNに含まれるダングリングボンド量の経時変化を観察でき、速度論的解析による反応メカニズムの分析が可能になった。 また本研究は最終的に液中プラズマを用いた異種層合成を目指しているため、本年度は液中プラズマ表面改質h-BNについても大気環境下での経時変化を長期的に追跡することで、ダングリングボンドに対する修飾反応過程解明にも取り組んだ。特に標準試料と比較することでダングリングボンド表面密度の定量化にも成功し、修飾反応過程について反応速度論と照らし合わせた解析が可能になったことも大きな成果である。 以上の通り、本年度は当初の研究計画の中から特にナノ粒子表面活性化過程の解明に重点的に取り組み、ダングリングボンドの形成・修飾過程の分析について着実な成果に繋げることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は目標となる六方晶窒化ホウ素(h-BN)粒子表面での異種層合成の起点となる、ダングリングボンドの形成を通じたプラズマによる表面活性化を解明し、十分な成果を得ることができた。次年度の研究計画では、これらのダングリングボンドと反応し異種層を形成するプラズマ活性種、特に液中プラズマによって生成する有機ラジカルについても解明に取り組む。液中プラズマにおける活性種の挙動は複雑であり、前駆体ラジカルの選択的生成と結合による異種層形成には、その解明と制御が課題となる。特にプラズマ相での電子衝突によるヒドロキシラジカル等の短寿命活性種の生成から、相を隔てて作用する準安定・長寿命な有機ラジカルに至るまでの連鎖的生成過程は計測に基づく理解が必要である。 研究計画では液中プラズマによって生成するラジカル種を、ダングリングボンドと同様に電子スピン共鳴(ESR)を用いて検出する。実際に本年度の間に液中プラズマプロセス装置を構築し、スピントラップ剤と反応させることで水素ラジカルやヒドロキシラジカル等の短寿命活性種をESRから検出することに成功している。さらに流路上の溶液のESR分析を可能にするフラットセルと、構築した液中プラズマプロセス装置を直結することで、液中プラズマin situ ESRの開発にも取り組んでいる。この液中プラズマin situ ESRを活用することで液中プラズマによって連鎖的に生成するラジカル種を直接その場観察でき、異種層合成の前駆体となる有機ラジカルの検出と生成メカニズムの解明に次年度は取り組む。これらの成果を経て、これまで取り組んできたh-BN表面上でのアモルファスカーボン層形成のメカニズムを解き明かすとともに、最終年度ではこれらの知見をもとに新たな構造のナノハイブリッド材料合成に取り組む計画である。
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