Project/Area Number |
23KJ1062
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 48040:Medical biochemistry-related
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
塚本 庸平 名古屋大学, 医学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥1,800,000 (Direct Cost: ¥1,800,000)
Fiscal Year 2024: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2023: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
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Keywords | O-グルコース糖鎖修飾 / 糖鎖構造解析 / 糖鎖機能解析 / Notch受容体 |
Outline of Research at the Start |
Notch受容体は細胞間情報伝達を担う分子の一つである。Notch 受容体は細胞表面に存在するI型膜タンパク質受容体であり、その細胞外ドメインに上皮増殖因子様 (EGF) リピートが存在する。主に生化学的、遺伝学的な解析から、生体内において、Notch機能の制御に、細胞外ドメインに付加するO-結合型糖鎖が重要であることが明らかとなってきている。研究代表者は独自にNotch受容体を修飾する新奇糖鎖修飾を見出している。Notch受容体の糖鎖修飾の全貌を明らかにし、新奇糖鎖を含めた糖鎖修飾による、Notch受容体機能の解明を目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
多細胞生物の発生、分化、さらにはがんなどの疾患においても重要な役割を果たすNotch受容体の糖鎖修飾による調節機能を解明することを目的として、研究代表者が新たに見出したNotch受容体上の新奇O-グルコース糖鎖の構造解析と機能解析を行った。 新奇糖鎖修飾の構造に関して、当初の予定通り、Notch受容体から切り離した新奇糖鎖を化学的に解析した。また結合様式特異的なグリコシダーゼを用いて、新奇糖鎖の結合様式を解析した。それにより新奇糖鎖の詳細な構造を決定した。さらに新奇糖鎖修飾の生合成を担う糖転移酵素を同定するため、コペンハーゲン大学の成松博士より供与いただいた、糖転移酵素遺伝子欠損細胞に発現させたNOTCHタンパク質を質量分析計を用い解析した。その結果新奇糖鎖の生合成を担う糖転移酵素を同定した。加えて新奇糖鎖修飾の生合成に関して重要なNotch受容体側のアミノ酸を発見した。 新奇糖鎖修飾の機能に関して、当初の予定通り、新奇および、従来型のO-グルコース糖鎖の生合成に関与する糖転移酵素遺伝子欠損細胞に発現させたNOTCHタンパク質とリガンドの結合を解析した。またNOTCHタンパク質発現ベクターに、上述の新奇糖鎖修飾の生合成に重要なアミノ酸に変異を導入した。これを用いて新奇糖鎖修飾を欠くNOTCHタンパク質を細胞に発現させ、同様にリガンド結合に対する影響を解析した。さらに同様の変異体を発現させた細胞のNotchシグナル伝達をNotchシグナルの下流の標的遺伝子を対象としたRT-qPCRを用いて解析した。その結果、新奇糖鎖修飾のシグナル伝達に対する影響について示唆的なデータを得た。 内在性NOTCHの質量分析による糖鎖解析について、当初の予定通り抗NOTCH1抗体を用いた内在性NOTCH回収の検討を行った。その結果内在性NOTCHの回収に成功したが、期待したほどの効率ではなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2023年度はNotch受容体上の新奇O-グルコース糖鎖修飾について三つの課題を設定し、その中から以下の事柄を実施する予定であった。培養細胞に発現させた新奇糖鎖の構造解析。新奇糖鎖のNotch-リガンド結合に与える影響の解析。内在性Notchの糖鎖修飾の解析。 一つ目については構造解析を問題なく終えることができたほか、2024年度に実施する予定であった生合成責任酵素の決定も完了した。さらに新奇糖鎖の生合成に重要なアミノ酸を発見した。これにより二つ目の課題である機能解析の際に、糖転移酵素遺伝子の破壊や過剰発現を用いずに新奇糖鎖修飾を欠損させることができるようになった。このことから当初の予定よりも進展していると考えている。 二つ目については新奇糖鎖のNotch-リガンド結合に与える影響について示唆的なデータを得られたほか、2024年度に実施する予定であった新奇糖鎖のNotchシグナル伝達に関する影響の解析を行い示唆的なデータを得ることができた。この新奇糖鎖の機能に関する解析は完了したわけではないが、当初の予定よりも進展していると考えている。 三つ目については培養細胞由来の内在性のNotchを回収することには成功したが、想定よりも効率が悪かった。そのため当初予定していた質量分析による糖鎖の構造解析にまで進むことができなかった。そのため当初の計画よりもやや遅れていると考えている。 これら三項目について総合的に自己評価を行うと、構造解析と機能解析は当初の予定よりも大幅に進んでおり、内在性Notchの解析も全く進展がないわけではないことから進捗状況の区分として「(1)当初の計画以上に進展している。」であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題において設定した三つの課題について、今後の推進方策はそれぞれ以下のように計画している。 一つ目の課題である、新奇糖鎖の構造解析と生合成責任酵素の同定は完了している。新奇糖鎖の生合成に重要なアミノ酸を同定することができたが、それだけでは新奇糖鎖修飾の生合成の制御について説明できないことがあるため、Notch受容体と糖転移酵素、糖鎖のモデリングや、可能であれば三次元構造解析を行うことでより詳細な新奇糖鎖修飾生合成の制御機構を明らかにする。 二つ目の課題である、新奇糖鎖修飾の機能解析については、現在までにフローサイトメトリーを用いたNotch-リガンド結合の解析と、RT-qPCRを用いたNotchシグナル伝達に対する影響についての解析により示唆的なデータを得られた。しかし、それぞれ一つの実験系でしか解析していないため、バイオレイヤー干渉法を用いたNotch-リガンド結合の解析やNotchレポーターアッセイを用いたNotchシグナル伝達の解析を行う。 三つ目の課題である、内在性Notchの質量分析による糖鎖解析については、免疫沈降による培養細胞由来の内在性Notchの回収効率が良くなかったため、質量分析を行えなかった。そのため、免疫沈降に用いる抗体の検討、免疫沈降手法の最適化を行い、効率的な内在性Notchの回収を試みる。加えて培養細胞由来の内在性Notchの回収と並行して、マウス組織由来の内在性Notchの回収を試みる。使用するマウスの組織としてはNotchの発現が高いことが報告されており、組織体積の大きい脳や肝臓などを考えている。さらに質量分析をする際のサンプル調製法、質量分析条件を最適化し、より少ないタンパク質量での糖鎖解析を試みる。
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