Project/Area Number |
23KJ1084
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 24010:Aerospace engineering-related
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
澤田 悟 名古屋大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,000,000 (Direct Cost: ¥2,000,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
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Keywords | デトネーション / 回転デトネーションエンジン / トルク |
Outline of Research at the Start |
回転デトネーションエンジン(RDEs)の最大の特徴は,円環または円断面を有した燃焼室内を周方向に超音速で伝播する圧力波である.これにより内部の気体は急激に周方向に加速され,燃焼室壁面上に周方向の剪断応力が発生し,軸周りのトルクに至る.このトルクは推力性能の損失となる一方で,この周方向の運動を利用してエネルギーを取り出すことが可能である.まずは,RDEsの幾何条件によるトルクの影響を理解することで燃焼室内部の周方向運動の分布を実験的に理解する.それとともに,波面上に燃焼室壁面を加工することで,壁面に発生する圧力差によるトルクの生成&操作を実現する.そして,RDEsの応用するための理論構築を行う.
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Outline of Annual Research Achievements |
回転デトネーションエンジン(RDE)は,燃焼領域と衝撃波が連なって燃焼室内を周回するデトネーション波を利用している.短時間で燃焼完結に至ることが特徴であり,燃焼室の長さを最小限に抑えることが可能である.RDEでは,流体と壁面間の空力作用により機軸周りのトルクが発生し,小型のガスタービンエンジン等への応用が期待される.このトルクに関して2件の研究を進めた. 一つ目は,内壁のないRDEでの剪断応力によるトルクの研究である.RDEでは,内部の流体がデトネーション波により周方向に加速され,壁面に周方向の剪断応力が発生する.これを壁面にわたって積分したものが軸周りのトルクであり,この実験計測を通して,燃焼室の形状に固有な燃焼の特徴を捉えることができる.断面が円環となる形状(内壁あり)と比べて,断面が円となる形状(内壁なし)では渦流れとの接触面が小さい.一方で,これは冷却を要する面も小さく,長時間作動に適している.この2種のRDEの推力・トルク・内部の様子を実験的に比較し,内壁なしの場合では,その接触面の違いを補うほどの周方向の剪断応力が発生することを明らかにした. 二つ目は,周方向の燃焼圧によるトルクの研究である.その壁面として,周上に凸部が並ぶ断面にひねりを与えた形状が提案されている(J. Braun et al., 2022).凸部の上流側に圧縮波が発生し,前後で周方向の圧力差が生じることでトルクとなる.RDEでは渦流れが伴うため,流れが凸部に対してより垂直に向かい,より大きな差圧が発生する.ただし,これにはデトネーション波の伝播方向の制御が要求される.本研究では,点火の位置を調整することで,トルクを増大させる方向に伝播方向を制御可能であることを示した.トルクの方向についても,壁面のひねる方向により,制御できていることを確認し,本機構によるトルクの制御が可能であることを示した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
RDEでの燃焼圧によるトルクの研究では,計測可能な大きさのトルクを発生し得る燃焼室形状の探索から,その実験計測および伝播形態との関係を調べることを当初計画していた.そして,周上に正弦波状の凹凸を有し,その断面を軸方向へ進むにつれてひねるような側壁面を用いることで,そのひねる方向に従いトルクが明確に立ち上がる・立ち下がる様子を確認した.また,デトネーション波の伝播方向に関わらず,トルクの方向が側壁面のひねる方向に従っていることを確認した.そのため,当初の計画は達成したと考えている.それらに加えて,今回の幾何形状では,回転デトネーション波の伝播方向の制御に成功した.この伝播方向により,内部の流れの方向が反転し,凸部の前後で発生する圧力差の大きさが異なるため,確実にトルクを増大させる上で伝播方向の制御は極めて重要である.本研究では,点火時に生じる圧縮波をヘリカル状の凸部をつたい燃焼室の底部に与えてその方向に伝播するデトネーション波を支持することで,その後の安定作動時におけるデトネーション波の伝播方向を制御するという手法を提案した.そして,外筒の平均半径が10mmかつ内壁のない燃焼器にて点火(火薬)の軸方向の位置が30.3mm-45.7mmの範囲にある場合,合計25回の全試験にて上述のプロセスと矛盾しない方向にデトネーション波が伝播したことを確認した.仮に伝播方向が0.5のランダムな確率で決定すると仮定した場合,今回の試験結果となる確率は,一般的に用いられる有意水準0.05と比べて遥かに小さい確率となった.したがって,十分な試験回数のもと,デトネーション波の伝播方向の制御に成功したと結論づけた.ここまで確実かつ点火プロセスのみでこの伝播方向を制御した例は他にない.今回の結果は,RDEの物理解明に大きく貢献する極めて重要な知見であり,当初の計画以上に研究が進展したと考える根拠である.
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Strategy for Future Research Activity |
RDEでの燃焼圧に由来するトルクの研究では次の点について研究を進める. 一つ目はトルクを発生させている圧力差の計測である.本研究での燃焼器では,デトネーション波が存在する領域での強い渦流れにより,壁面に発生する圧力差が支配的にトルクを生成している.そして,下流へ向かうに従い,壁面付近の流れは整流されてしまうため,差圧は小さくなる.これはトルクを生成する上で,燃焼器の軸方向の長さを最小限に抑えることが可能であることを示している.これを検証するため,凸部の前後の面にそれぞれ1箇所ずつ圧力計測用の孔を設けて,絶対圧計を各1個ずつ配置することで側壁面での静圧および差圧を計測する.また,より精度の高い差圧計を2つの計測用孔に接続することで正確な差圧を計測する.さらに,軸方向の差圧の分布についても調べる予定である.計測用孔を備える燃焼器の一部をメタルで独立に作成し,3Dプリンターにて作成したものと組み合わせることで計測用孔の位置を軸方向に変化させる.そして,同様の推進剤供給条件・周囲条件にて,複数の軸方向の位置での静圧および差圧を計測することで上述した差圧の分布を実験的に示す. 二つ目はトルクの大きさを向上するための幾何形状の最適化である.差圧によるトルクをより顕著に発生させるためには,凸部における上流側の面が周方向を向くこと,その面積を大きくすること,下流側の面がより径方向に向くことなどが要求される.その一方で,こうした複雑な壁面形状がデトネーション波の伝播をどの程度阻害するのか推測することは極めて困難であり,実験による検証をもとに議論することが要求される.上述の幾何条件を実現するために,ベジエ曲線を導入する.そして,断面の頂点を変化させることで,上述の幾何条件を実現する.その中で,幾何形状とトルクとの関係を明らかにすることで形状の最適化を図る.
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