シアノバクテリアの細胞外小胞を介した新たな物質生産システムの開発
Project/Area Number |
23KJ1118
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 38020:Applied microbiology-related
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
臼井 健太朗 名古屋大学, 生命農学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,700,000 (Direct Cost: ¥2,700,000)
Fiscal Year 2025: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2024: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2023: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
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Keywords | シアノバクテリア / 細胞外小胞 / クロロフィル生合成 / 光合成 |
Outline of Research at the Start |
微生物が細胞外へ物質を分泌するメカニズムの一つに細胞外小胞 (Extracellular Vesicles : EVs) と呼ばれる分泌機構が存在する。このEVsには多様な生体物質が含まれており、今後EVsを用いた新しい生物工学的技術の開発が期待されている。特に光合成独立栄養条件的に生育できるシアノバクテリアは他の従属栄養性の微生物と異なり、より低コストで物質の生産を行うことが可能である。本研究ではシアノバクテリアLeptolyngbya boryanaにおけるEVsの生理学的特徴及びその機能を明らかにし、応用的な技術開発に向けて必要な基盤を確立させる。
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Outline of Annual Research Achievements |
全てのバクテリアは細胞外小胞(Extracellular Vesicles; EVs)を分泌していると考えられている。EVsには栄養獲得、毒素の運搬、バイオフィルム形成、細胞外情報伝達、遺伝子の水平伝播など様々な生理学的機能を有している。そのため、EVsには多様な生体物質が含まれており、今後この EVs をツールとした新しい生物工学的技術の開発が期待されている。特に光合成独立栄養条件的に生育できるシアノバクテリアは他の従属栄養性の微生物と異なり、より低コストで物質の生産を行うことができると考えられる。一方でシアノバクテリアにおけるEVsは、他のバクテリアと比較してその機能についてはまだ未解明なことが多く、その生理学的機能の解析を行うことは、基礎・応用両方の面において非常に重要である。我々は以前、シアノバクテリア Leptolyngbya boryana においてクロロフィル (Chl) 生合成中間体である、プロトクロロフィリド (Pchlide) を暗所で多量に蓄積する、暗所作動型 Pchlide 還元酵素(DPOR)の欠損株が、EVs を介し Pchlide を細胞外へと分泌していることを報告した。今年度は野生型(WT)におけるEVsの組成解析を行った結果、WTでも変異株と同様にEVsによってChl中間体を細胞外へと分泌していることが明らかになった。これらのことはシアノバクテリアのEVsには不要なChl中間体を分泌する能力を有しているという、他のバクテリアでは報告されていなかった新しいEVsの機能を示すものであり、またEVsとChlの生合成という今まで知られていなかった関係性を示すものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023年度の研究では、EVsによるChl生合成中間体の分泌が変異株におけるChl中間体の異常蓄積によって引き起こされた現象ではなく、普遍的に存在してる生理機構でことを明確にするため、明所・暗所という異なる生育条件における、WTのEVsの組成解析を行なった。その結果、WTは明所・暗所に関わらず、密度の異なるEVs(低密度EVs/高密度EVs)を分泌しており、その形態学的な特徴やタンパク質組成はそれぞれの密度で異なることを明らかにした。また、 EVsの色素組成解析の結果、明所・暗所で単離した低密度EVsはいずれもカロテノイドを主要色素としている一方でChlはほとんど含まれていなかった。また高密度EVsは低密度EVsと比較して色素含有量が著しく低いことも明らかになった。さらに、低密度EVsには、微量ながら Chl 生合成中間体やその由来物質(プロトポルフィリンIX、Mg 脱離型プロトポルフィリIXモノメチルエステル、フェオフォルビド a) を特異的に含んでいた。また、暗所生育においては、WTも細胞内にわずかにPchlideを蓄積し、この蓄積したPchlide及びプロトフェオフォルビド (Mg 脱離型 Pchlide) を低密度 EVs によって細胞外へと分泌していることも明らかになった。これらの結果から、我々はL. boryanaのWTにおいても、各々の生育条件で生成してしまう多様なChl生合成中間体を、低密度EVsを介して細胞外へと分泌するという新しい分子機構モデルの提唱をするに至った。2023年度末に上記の内容で論文を投稿した。2024年度初めに査読者からの修正箇所の指摘があったため、年度中に修正箇所を直した後、再度投稿予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究により、様々なChl中間体やその由来物質がEVsによって分泌されていることが明らかになったが、細胞内で合成された色素のうちの何割がEVsによって分泌されるかという定量的な観点はまだ明らかにはなっていない。さらに、細胞内からEVsへと色素を輸送するシステムが細胞内に存在しているはずだが、それもまだ未解明である。さらにEVsに含まれている色素が環境中においてどのような動態を示しているのかについても今後改名していきたいと考えている。以上の現状を踏まえて、今年度は以下のような項目で研究を進めていく予定である; I. 色素の定量:高速液体クロマトグラフ法等を用いてEVsと細胞内に含まれている色素量(Chl・Chl中間体・カロテノイド類)の比較を行うことで、Chl中間体分泌の能動性について明らかにする。 II. Chl中間体トランスポーターの探索:細胞内からEVsへとChl中間体へと積み込むために未知の輸送体が存在していると考えられる。シアノバクテリにおいては報告されていないが、哺乳類の細胞膜にはプロトポルフィリンIXを細胞外へと排出する輸送体が報告されている。そこで、L. boryana において相同性のある遺伝子を探索したのち、逆遺伝学的な解析によって新規輸送体の探索を試みる。 III. EVsによる色素運搬能力の解析:DPOR株が分泌する Pchlide を含む EVs を用いて、Pchlide が他の細胞に輸送されるかについて、細胞内及び培溶液中の色素組成の解析を行い、特定の物質が EVs を介して他の細胞へと輸送される可能性を検討する。
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Report
(1 results)
Research Products
(5 results)