Project/Area Number |
23KJ1204
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 45040:Ecology and environment-related
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
樽澤 優芽子 京都大学, 農学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,000,000 (Direct Cost: ¥2,000,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
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Keywords | 種間交雑 / 遺伝子浸透 / 進化 / ゲノム / ハイマツ / 高山帯植生 / 気候変動 |
Outline of Research at the Start |
本研究では、温暖環境に生育する種から寒冷環境に生育する種への、過去の気候変動に対する適応的浸透交雑の実態を解明し、将来的な地球温暖化に対する植生の脆弱性や頑強性を評価することを目的とする。 マツ属のハイマツとキタゴヨウに着目して、 (1)複数の野生集団を対象としたエクソン領域全体の配列決定を行い、 (2)浸透交雑したゲノム領域を検出して、浸透交雑した遺伝子の機能を解析する。 (3)複数の地域の独立した交雑帯で比較を行い、共通して浸透交雑した適応的なゲノム領域を特定する。 (4)さらに、交雑の障壁となる植生の有無が適応的浸透交雑の量と質に与えた影響を明らかにする。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、温暖・寒冷環境に適応した異種間の浸透交雑実態解明と温暖化に対する適応可能性評価を目的として、青森県八甲田山のハイマツ―キタゴヨウ交雑帯における浸透交雑パターンを解明した。計80個体のエキソン領域のシーケンシングと解析の結果、両種のゲノムワイドな交雑が確認されただけではなく、中標高域においてハイマツと交雑個体間の戻し交配が顕著であること、キタゴヨウと交雑個体間の遺伝子流動が極めて限定的であることを明らかにした。周辺の環境や植生と合わせて考察を行ったところ、高木が優占する低標高域では純系のキタゴヨウよりも樹高の低い交雑個体は光獲得競争に関して不利である可能性が考えられ、風衝帯である高標高域では、純系ハイマツに比べて樹高の高い交雑個体は強風や積雪に対して不利である可能性が考えられた。これに対して、交雑個体が最も多く見られる中標高域では、純系のハイマツよりも樹高の高い交雑個体が光獲得競争に関して有利であることから、ハイマツ側の戻し交配に偏った交雑パターンを形成した可能性が考えられた。このように、浸透した形質の進化的有利さが周辺環境や植生などの生態的要因によって規定されている可能性を示すことができた。浸透領域の機能推定の結果、植物体の保持に関わる遺伝子座が高木であるキタゴヨウから交雑個体に浸透しており、交雑個体における樹高の保持に寄与した可能性が示唆された。解析を通して、集団遺伝学的解析に基づく浸透交雑の有無の検証のほか、浸透した遺伝子領域の同定や機能推定などの解析手法に習熟した。さらに、ポスター発表や口頭発表では、成果を発信するだけではなく、結果や今後の研究の進め方に関する議論を行ってその後の解析に組み込むことができた。上記解析、考察した内容と追加解析の内容をまとめた論文の執筆を進めており、来年度中の出版を予定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた複数交雑帯のうち、八甲田山のデータ解析、論文化に向けた原稿執筆を進めることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
八甲田山のデータを用いて、集団動態の再構築とモデルシミュレーションによる交雑時期の推定を行い、過去のハイマツおよびキタゴヨウの分布や古気候との関連を探求する。さらに、すでに収集済の飯豊山と立山の交雑帯由来のDNAを用いたライブラリ作成、エキソームキャプチャとシーケンシングを行い、八甲田山のデータとあわせて複数交雑帯データによる遺伝子―環境相関解析を実施する。執筆中の論文を投稿するとともに、国際学会においてポスターとフラッシュトークの発表を行う。
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