Project/Area Number |
23KJ1212
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 15010:Theoretical studies related to particle-, nuclear-, cosmic ray and astro-physics
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
鵜沢 浩太朗 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,000,000 (Direct Cost: ¥2,000,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
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Keywords | 核分裂 / 複合核 / 生成座標法 |
Outline of Research at the Start |
本研究では生成座標法という手法に基づき核分裂過程の理論的な定式化を行う。生成座標法では異なる形状の波動関数の重ね合わせを行うが、誘起核分裂では原子核が高温に励起しているため、基底状態だけでなく粒子空孔励起状態の波動関数を含めて重ね合わせを行う。続いて分子エレクトロニクス分野で使われる非平衡グリーン関数法を応用し、核分裂透過係数の評価を行う。 2023年度にはこれらの理論的枠組みを簡易的な理論模型に適用し、理論の正当性と適用範囲を明らかにする。2024年度には密度汎関数理論に基づく現実的な系に理論を適用し実験との比較を行う。それにより核分裂の微視的なメカニズムが明らかになると期待される。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではその複雑さから微視的な記述が困難とされてきた核分裂過程の微視的定式化に取り組んでいる。生成座標法を用いたハミルトニアン行列の評価+非平衡グリーン関数法に依る核分裂確率の見積もりという理論の大枠は前年度までに整っていた。一方で、235ウランなどの現実の核の核分裂に適用する場合は数値計算コスト上の困難が存在した。 非平衡グリーン関数法におけるグリーン関数の計算ではハミルトニアン行列の逆行列計算が必要になる。235ウランの場合行列の次元はO(10^4)からO(1O^5)となり、スパコンを用いても非常に計算コストがかかる。そのため、行列のブロック構造を利用した効率的な計算アルゴリズムの適用と、GPUを利用した計算の高速化により、現実的な時間内での計算を実現した。それにより、235ウランを含む現実的な系の核分裂確率と核分裂断面積の微視的な計算が初めて可能になった。これらの結果はarXiv:2403.04255に公開されており、現在査読中である。 続いて、上記の模型を用いて核分裂確率分布についての解析を行った。複合核の崩壊幅はカイ二乗分布に従うことが知られており、分布の自由度パラメータnuは崩壊チャネルのチャネル数を表す。核分裂の場合nu=2程度となっているが、その微視的な起源については明らかになっていなかった。本模型を用いて235ウランの核分裂幅の分布を見積もったところ、nu=1程度のカイ二乗分布でよくフィットできることが明らかになった。加えてグリーン関数のスペクトル分解を行うことで、nuの値を微視的に解釈することが可能となった。現在これらの結果を論文にまとめている最中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
我々の生成座標法+非平衡グリーン関数法に基づく核分裂模型の一番のネックであった計算コストの問題を本年度は解決することができた。また、それにより現実的な系の核分裂の計算を行い、論文にまとめることもできた。
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Strategy for Future Research Activity |
本模型は開発段階にあるため、いくつかの簡易化がなされている。特に重要な点は、模型空間をセニョリティ数ゼロの配位に制限していることである。誘起核分裂においては陽子中性子間の粒子空孔型相互作用の効果が重要であることが知られているが、そのためには有限セニョリティの配位を含めることが必要になるため、そのため模型空間の拡張が第一に達成すべき目標である。 同時に、令和6年度は大阪大学サイバーメディアセンターの公募型利用制度に採択されたため、スーパーコンピューターシステムSQUIDの持つ高性能GPUを使用することができる。そのためのコード開発も並行して進める予定である。
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