Project/Area Number |
23KJ1226
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 02070:Japanese linguistics-related
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
渡辺 悠里子 京都大学, 人間・環境学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,800,000 (Direct Cost: ¥2,800,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,400,000 (Direct Cost: ¥1,400,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,400,000 (Direct Cost: ¥1,400,000)
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Keywords | 日本語学 / 表記 / 平仮名 |
Outline of Research at the Start |
中古・中世初期の平仮名表記がどのような決まりを持つのかを明らかにし、万葉仮名をはじめとする上代の表記や、変体仮名の用法の差異が指摘される中世以降の表記とどのような接点を持つかを示す。そのために、中古・中世初期の平仮名表記の特徴を、当時書写された資料を対象に、①各音節にどの字母の平仮名がどの程度使用されるか、②それぞれの字母の平仮名がどのような用法上の差異を持つか、あるいは持たないか、という観点から包括的に記述していく。それを前後する時代の仮名表記の特徴と比較し、中古・中世初期の平仮名の特徴を日本語表記史上に位置づける。
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Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は研究計画のうち、藤原定家に関する表記の問題を中心に調査・研究を行った。現在定家筆と見られている資料を広く調査し、定家の表記が年代により変遷するであろうことを把握した。それらの資料のうち、奥書により書写年が知られる嘉禄二年本『古今和歌集』、天福元年本『拾遺和歌集』、天福二年本『後撰和歌集』について、平仮名字体の悉皆調査を行い、査読雑誌である『国語国文』に発表した。 藤原定家は、嘉禄年間と天福年間とで使用する平仮名字体の用法に異なる部分のあることが先行研究により指摘されているが、その理由については未だ明らかでない。発表論文では嘉禄年間の表記と天福年間の表記との相違点をより詳細に示すことと、相違の理由について明らかにすることを目的とした。 発表論文では以下のことを述べた。調査資料より、嘉禄年間と天福年間の資料では、音節内での字体の使用頻度に相違が認められる。ついで、使用頻度が変化する字体に着目すると、必ず語中に用いるなど語において使用位置が決まっている字体や、付属語には用いないなど使用する語に制限のある字体、つまり表語的な字体が減少していた。その反面、減少した字体のある音節内では、音節に対応していれば位置や語にかかわらず使える表音的な字体が増加している。増減するすべての字体に何らかの表語性が見られるわけではないが、表語性の認められる字体が増加することはない。発表論文では、定家の文字遣は天福年間に至ってより表音的になっており、そのために字体の使用に変化が起こったと考えられると結論づけた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
取り組みの順序にやや変更はあったが、当初の研究計画どおり藤原定家の用字について検討を進め、成果を査読論文として発表できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、昨年度に引き続き藤原定家およびその周辺の用字法について調査・研究を進める。昨年度は定家の表記について、年代の経過に伴い使用する字体が変容すること、減少する字体は用法に何らかの制限を持つ字体であることを示した。その際に、①定家の使用字体や字体の用法が定家独自のものであるのか、または時代性を反映したものなのか、②定家がどのような目的や理由で各字体を用いたのか、の二点が当面の課題として残された。 今年度はこれらの課題の解決に取り組んでいく。まず①の課題を解決するため、定家の周辺の平仮名の用法について検討する。定家の用字に影響を与えた人物として、父藤原俊成がまず想定できる。本研究では、俊成やその他の周辺の人物の用字法について調査を行いつつ、定家の用字と比較し、連続性の有無を検討する。また、②の課題を解決するため、定家の用字法がどのような意図で行われているのかを検討する。検討の観点として、資料の性格の相違による用字の差異があるか否かがまず手がかりとなる。ついで、定家の用字が読み手にとってどのような効果をもたらすものであるのかも検討していく。
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