Re-evaluation of Heresy in Medieval Judaism: The Judaeo-Arabic Commentary on Tehillim by Salmon ben Yeroham, the Karaite
Project/Area Number |
23KJ1236
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 01030:Religious studies-related
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
菅野 和也ソロモン 京都大学, 人間・環境学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,000,000 (Direct Cost: ¥2,000,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
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Keywords | カライ派ユダヤ教 / 中世ユダヤ教 / ユダヤ・アラビア語 / 聖書註解 / 聖書 / 写本解読 |
Outline of Research at the Start |
本研究は中世ユダヤ教の全体像を、ユダヤ教の分派であるカライ派の視点から解き明かすを目指すものである。これまで多くの研究者たちが注目してきた多数派ラビ・ユダヤ教と対照的に、〈異端〉のレッテルを貼られ、等閑視されてきたカライ派に光を当てることで、均整のとれた中世ユダヤ教の姿を映し出す。とくに、慣習に従い聖書を解釈したラビ派と、伝統に固執せず自律的に解釈したカライ派の、聖書を巡る議論に着目する。具体的には、10世紀のエルサレムで活動したカライ派聖書註解の先駆者、サルモン・ベン・イェロハムが残した詩篇への註解書を手がかりに、カライ派の実態に迫る。
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Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は年間を通じて、カライ派ユダヤ教の聖書註解者サルモン・ベン・イェルハムによる『詩篇註解』の校訂、英訳を作成した。写本解読によって、サルモンの註解スタイル、言語(ユダヤ・アラビア語)スタイルが明らかになっただけでなく、註解書が書かれた時代(10世紀頃)の影響も色濃く残っていることが明らかになった。註解書の背景にはアラブ・イスラーム帝国およびユダヤ教の主流派ラビ・ユダヤ教との相互関係も明らかになった。 2023年度は写本解読に多くの時間を費やしたため、ほかのユダヤ教文献との比較研究は十分に遂行できていない。ただしこれまでの調査から、サルモンと同時代を生きたラビ派のサアディア・ガオンや、カライ派のイェフェット・ベン・エリーとの比較考察が、ユダヤ教内部の聖書解釈の多様性を明らかにすることが期待されている。 2023年5月20日には、同志社大学一神教学研究科主催の「CISMOR一神教学際研究会2023-1」にて『ラビ・ユダヤ教とカライ派ユダヤ教の聖典を巡る論争―カライ派の聖書註解書を手がかりに―』と題して口頭発表を行った。 また7月30日から8月3日まではミュンヘン大学(ドイツ)にて、Society for Judaeo Arabic Studies主催のユダヤ・アラビア語研究学会に参加し、情報収集を行い、ほかの研究者とのネットワーク構築も進めた。同学会で得たネットワークを通じて、12月3日から2024年12月31日までエルサレム・ヘブライ大学(イスラエル)のロスバーグ・インターナショナル・スクールにて客員研究員として調査研究する機会を得た。 長期滞在に先行して8月7日から11月2日までは、イスラエル国立図書館(イスラエル)にて情報収集および資料調査を行った。日本ではアクセス困難な文献を閲覧、複写、入手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
写本解読は人文学における基礎研究にあたり、時間と労力を要するものである。扱う史料はユダヤ・アラビア語による聖書註解書であり、ヘブライ語とアラビア語の知識に加えて、ユダヤ・アラビア語独特の表現などについても考察する必要がある。これまで写本を正確かつ忠実に読解することに多大な時間を費やしてきたため、他のユダヤ文献との比較研究は当初の計画通りには進んでいない。 また2023年度に予定していたロシア国立図書館での写本調査は、当地域の情勢(危険レベル3、渡航中止勧告、外務省)を鑑みて延期することとした。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度はカライ派の聖書註解者サルモン・ベン・イェルハムの『詩篇註解』の残されている写本史料(EVR. I. 556,ロシア国立図書館蔵)の校訂と英訳に取り組んだ。実際には、マイクロフィルムヘブライ写本研究所(IMHM)の画像データに基づき解読を進めた。具体的には、ヘブライ語聖書のなかの『詩篇(全150篇)』に属する『都上りの歌(120ー134篇)』として知られる14の詩篇群に関するサルモンの註解の校訂と英訳を完成させた。 2024年度は、解読した内容に基づき、サルモンと同時代を生きたラビ派のサアディア・ガオンや、カライ派のイェフェット・ベン・エリーの詩篇註解書との比較考察を進める。これによりユダヤ教内部の聖書解釈の多様性を明らかにすることが期待される。 また10世紀のカライ派ユダヤ教が置かれていた歴史的・社会的実態が、サルモンの詩篇理解に及ぼした影響について考察を進める。つまりユダヤ教内部の比較考察に留まらず、イスラーム帝国の支配という大局のなかで、カライ派が聖書をいかに受け止めていたのかを明らかにする。 これらの研究成果を、各種学会や学術誌誌で発表しつつ、博士論文の完成を目指す。
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Report
(1 results)
Research Products
(1 results)