Project/Area Number |
23KJ1243
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 01050:Aesthetics and art studies-related
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
飯沼 洋子 京都大学, 人間・環境学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,000,000 (Direct Cost: ¥2,000,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
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Keywords | リジア・クラーク / ブラジル / 現代アート / アーカイブ / 参加型作品 / 芸術実践 / 物故作家 / キュレーション |
Outline of Research at the Start |
本研究はリジア・クラーク(Lygia Clark, 1920-1988)の参加型作品を考察し、社会における他者受容のための芸術的手法の例を提示することを目標とする。これまでクラーク作品における芸術経験について、ブラジルの文化思想や精神分析の諸理論が参照され、新たな知覚感覚の獲得と主客の融合を中心に論じられてきた。そこで本研究は、クラークが目指した主体と客体間における身体や精神の共有がどのようにして発現されたのかという作品構造を解明するため、芸術の脱物質化の流れの中で看過されてきた紐などの物理的な素材に着眼し、作品上の個人の身体における性の未分化状態との関係性について検討する。
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Outline of Annual Research Achievements |
研究課題の実施状況について、今年度は主にアーティスト没後の参加型作品の生について考察し、アーティスト不在のもと、未来の展示においてどのように他者受容が行われるべきかを検討した。具体的には、まず、リジア・クラークの作品の特徴である脱物質性、つまりパフォーマンスや参加といった芸術実践を通じて参加者が獲得する「経験」が、アーティスト没後の展覧会においては、芸術実践が行われないために経験の共有がなされないといった問題に着眼した。このような作品がたどる運命を、1970年代に制作された前衛的な現代アート作品全般に共通する課題点と捉え、その突破口として、クラーク没後に開催されたアーカイブによる展覧会「リジア・クラーク:私たちは型である、息を吹き込むのはあなた…」におけるキュレーターの意図を具さに考察し、解決の糸口を見出すことを試みた。 この考察を通じて展示に際するオリジナル・レプリカ問題や、現代アート作品の作品保存とアーカイブについて触れながら、さらに、これらを「静的・動的な」資料としてアート・スペースでどのように見せるかというキュレーションの視点をとりいれ、物故作家の作品の未来について論を展開した。今年度の研究により、現代社会におけるリジア・クラークの作品受容の可能性にまで裾野を広げることができたが、この点に関しては来年度より詳しく取り組みたい。 またクラークの芸術経験についてはこれまで幾度となく研究が積み重ねられてきたが、クラークの経験を可能とする芸術実践の作品構造に秘められた「建築」的要素の発見は、今年度末に行ったブラジルでの現地調査の成果である。具体的には、作品における幾何学的構造が「生きている構造物」としての建築であり、同時に参加者の身体そのものであるというリジア・クラークの新たな芸術論が見いだされた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまではリジア・クラークの芸術実践で参加者に共有される経験の内実について検討してきたが、今年度は現代における経験共有の方法論を検討し、論文として国内、国外に発表した。また今年度の研究を通じ、クラークにおける「建築的視点」という新たな論点を見出すことができた。この論点は当初の研究計画にはなかったが有益な成果であるため、来年度の芸術実践の構造を読み解くための手がかりとする。よって研究はおおむね進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
リジア・クラークの作品における芸術経験の共有と他者受容の方法をさらに解読するため、これまでの研究で扱ってきた芸術経験の内実や作品活用のための方法論ではなく、物質的な作品構造に着眼し、今年度見出した「建築的視点」を交えながら考察を深める。作品における建築的要素に関して検討する際に、クラークと関わりのあった同時代のアーティストら――ホベルト・ブルレ・マルクス、フェレイラ・グラール、エリオ・オイチシカら――との影響関係もおさえながら作品分析を行い、クラーク独自の芸術観を読み解きつつ、その現代的意義を見出したい。
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