Project/Area Number |
23KJ1333
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 03050:Archaeology-related
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
渡辺 幸奈 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥3,000,000 (Direct Cost: ¥3,000,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
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Keywords | 縄文土器 / 注口土器 / 地域間交流 |
Outline of Research at the Start |
縄文時代には多種多様な土器が製作された。中でも注ぎ口を持つ土器を指す注口土器は、①特異な消長を遂げる、②煮炊きに使用されるものもあれば、お墓に副葬されるものもあり、日常性と非日常性を兼備する、③他の土器に比べて類似品が広域に分布する、といった特徴を持つ。本研究は、縄文時代に製作された注口土器のこれらの特徴に着目することで、日本列島全地域における地域間交流や縄文時代の文化動態の解明に迫るものである。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、縄文時代の列島全域で出土する注口土器に着目し、形態と文様、製作方法、使用方法の共有関係から縄文時代の地域間交流を解明することを目的とする。 2023年度は主に資料の集成及び資料の実見調査を実施した。資料の集成は発掘調査報告書をもとに実施した。東日本日本地域の資料が想像以上に厖大であったため、集成作業は完了しなかったが、集成したものに関しては、深鉢を中心に構築されてきた既往の編年に基づいて、時間的な位置づけを行った。 本研究は製作方法からも地域的関係を議論するため、資料の実見調査を重視している。実見調査は、当初の予定では関東地方と東北地方南部を中心に実施する予定であったが、採用前(2022年度以前)までに取り組んできた地域である近畿地方、東海・北陸地方、山陰地方において、新資料が発見されたりしたため、それらの地域における調査も並行して行った。また、一部前倒しで福岡県、鹿児島県、北海道の資料調査も行った。具体的には、静岡県の半場遺跡・蜆塚遺跡、京都府の平遺跡、大阪府の縄手遺跡・更良岡山遺跡・馬場川遺跡、石川県の気屋遺跡・真脇遺跡・万行遺跡、鳥取県の太一垣遺跡などの資料の実見調査や図面作成を行った。 2023年度から本格的に着手した地域についても、新潟県の炭山遺跡・剣野沢遺跡・中ノ沢遺跡・城之腰遺跡・堂付遺跡・町上遺跡・川久保遺跡・北野遺跡、東京都の西ヶ原貝塚、千葉県の宮内井戸作遺跡・宮本台貝塚・古作貝塚・後田遺跡・貝の花遺跡、宮城県の伊古田遺跡・王ノ壇遺跡・下ノ内浦遺跡・六反田遺跡・下ノ内遺跡、福岡県の四箇遺跡・中村石丸遺跡、鹿児島県の山ノ中遺跡・干迫遺跡・芝原遺跡、北海道のキウス4遺跡等の資料調査を実施した。 これらの調査の結果、図面から読み取れる形態や文様が類似していても、施文方法や注口部装着方法などの製作技術が異なったものが同一遺跡で一定量併存していることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画では2023年度に、①関東地方、東北地方、北海道地方の資料集成、②関東地方と東北地方南部(新潟県・福島県・宮城県・山形県)の資料の実見調査、③集成した資料に基づいた関東地方と東北地方の注口土器編年の土台の作成を目標としていた。 ①について、従来の研究から注口土器は1遺跡で少量の出土にとどまる見込みであったが、実際は1遺跡で100点以上出土する遺跡が多数あり、文献の入手や複写に多くの時間を要した。そこで、2024年度に計画していた、出土量が少ない九州地方の集成作業を前倒しで行った。関東地方以東の東日本地域に関しては、完形品、一括性の高い資料群に含まれるもの、異なる地域の影響を受けたものに絞って集成していく方針に変更した。 ②について、採用前までに実施していた地域である近畿地方や東海・北陸地方、山陰地方においても新資料が発見されたり、新たに調査できる環境が整ったりしたため、それらの地域における調査も並行して行った。これらの地域の再調査は、2025年度に計画していたが、一部前倒しで行う形となった。また、所蔵機関のリニューアルや共同研究等の関係で、福岡県、鹿児島県、北海道の調査を一部前倒しで行った。そのため、実施予定であった関東地方と東北地方南部の地域については、関東地方南部、新潟県、宮城県は実施できたが、関東地方北部及び福島県、山形県は実施できなかった。 ③について、資料の集成は不十分ではあるが、形態と文様に基づいた時間的位置づけはおおむね完了した。資料的な制約により、注口土器のみでの編年が困難な時期・地域もあることが分かったため、その場合は深鉢を基準に構築されてきた既往の編年観に基づいて、編年を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度上半期は、引き続き発掘調査報告書に基づいた資料の集成を行い、全国的なデータベースを作成する。「現在までの進捗状況」で述べた通り、東日本地域については出土量が厖大であるため、土器の編年研究を対象とした先行研究を参照しながら、引き続き資料を絞って収集する。そのうえで、報告書の図面から読み取れる形態と文様を基軸に、全国的な注口土器編年網の土台を構築する。注口土器のみでの編年が困難な時期・地域については、深鉢を基準に構築されてきた既往の編年に基づいて、時空間的に位置づける。 製作方法の地域性を明らかにするために、2024年度も資料の実見調査を継続して行う。研究計画では、東北地方北部(岩手県・秋田県・青森県)及び北海道地方を行う予定であったが、北海道については一部前倒しで行った。そのため、2023年度に実施できなかった関東地方北部(群馬県・栃木県・茨城県・埼玉県)及び東北地方南部の一部(福島県・山形県)の出土資料を中心に実見調査を実施する。また、資料の集成が既に完了し、2022年度以前から取り組んできた中四国~中部地方との関係性が深い九州地方についても、前倒しで資料の実見調査を進めることとする。 注口土器の使用方法の解明に向けて、注口土器の出土状況の整理及び注ぎ口の付く容器を用いた民族事例や注口土器付着物の理化学分析事例の収集を行う。当初はさらに注口土器の使用実験を計画していたが、土器胎土に残存している有機物の脂質分析など、内容物の種類(トチ・クリなどのC3植物・海棲動物・陸棲反芻動物・陸棲非反芻動物など)に直接アプローチする手法がより有効的と考えられるため、理化学分析の事例研究を優先的に進めることとする。 最後に、報告書の図面に基づいて構築した編年網に、実見調査の成果をフィードバックするとともに、調査・分析した製作方法や使用方法の時期・地域的な共通点・相違点を抽出する。
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