Project/Area Number |
23KJ1334
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 32010:Fundamental physical chemistry-related
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
樋野 健太郎 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,000,000 (Direct Cost: ¥2,000,000)
Fiscal Year 2025: ¥600,000 (Direct Cost: ¥600,000)
Fiscal Year 2024: ¥600,000 (Direct Cost: ¥600,000)
Fiscal Year 2023: ¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
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Keywords | テンソルネットワーク / 量子ダイナミクス / 分子振動 / 非平衡化学 / 原子核波束 / GPU加速 / 分光スペクトル |
Outline of Research at the Start |
光化学反応をはじめとする非平衡化学の現象を解明するためには電子に限らず原子核の運動も量子化したシミュレーションが求められる。本研究では、精確な波束シミュレーションが可能なシステムを従来の手法に比べて大幅に広げるための理論を構築する。具体的には、テンソルネットワークや機械学習手法を原子核の波動関数や運動自由度、ポテンシャルエネルギー曲面などに適用することで、原子核の運動自由度に対する「次元の呪い」を解決する。
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Outline of Annual Research Achievements |
化学反応や分子振動といった分子を構成する原子核の運動に起因する現象において、電子のみならず、原子核の運動も量子力学的な波として扱うことは、量子化学の究極の目標の一つであるものの、原子核を古典粒子として近似する手法に対して、原子核の運動自由度に対する指数関数的な計算量の爆発が障壁となっていた。 本研究では、高次元データを低次元データの掛け算と足し算で近似することで、高次元の情報に内在する低ランク構造を抽出するテンソルネットワークと呼ばれる技術を、原子核の量子波束と、それを駆動する電子のポテンシャルエネルギー曲面の両方に対して適用した。 まず、原子核波束については、各運動自由度のグリッド基底のテンソル積空間を行列積状態と呼ばれるテンソルネットワークで表現する手法を提案した。グリッド基底の導入により、解析的な積分が困難なハミルトニアンを選択肢に与えるとともに、振動運動を超えた、解離反応や、周期境界条件下の異性化反応などを高次元量子波束で記述できるようになった。 また、その原子核波束を駆動するポテンシャル演算子も、グリッド行列積演算子と呼ばれるネットワークで表現し、従来から汎用的に用いられてきた高次元ポテンシャルを低次元ポテンシャルの和で外挿する高次元モデル表現(HDMR)と呼ばれる方法で構築されたポテンシャルを、一つのグリッド行列積演算子に埋め込み情報圧縮する方法を考案した。 さらに、これらの工夫による計算量の削減に加えて、波動関数とハミルトニアンを一つの配列に埋め込むことGPU加速も実現した。 これらの結果は、水4量体カチオンの量子ダイナミクス計算から得られる分光スペクトルなどで実証し、従来の手法では数週間かかる結果を、数日で再現できることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度の目標は、テンソルネットワークを用いた原子核波束計算における、グリッド基底の導入と、実用的な応用計算に耐えうるプログラムの高速化であり、これらを全て達成できた。特に、グリッド基底を適用することでアルゴリズムの観点から計算量を削減できることを発見し、さらに次年度以降取り組む予定であった、ハミルトニアンのテンソルネットワークの情報圧縮や、当初予期していなかったGPU加速なども達成できた。これらの結果はJ. Chem. Theory Comput.誌に投稿した。 一方で、次年度以降取り組む予定であった、原子核波束の実時間発展とともに、ポテンシャルをon-the-flyでフィッティングしていく手法について、調査や実験をしていたところ、10自由度以上の量子波束に拡張しようとした場合の技術的困難性に直面した。そこで、代わりに事前に波束が到達しうる領域をモンテカルロ法によりサンプリングし、それらを学習点としたテンソルネットワーク表現に適用可能な機械学習ポテンシャルを構築する方が効果的であり現在、モデルを複数分子種で実証中である。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、原子核波束が到達しうる領域をモンテカルロ法により事前にランダムサンプリングし、それらを学習点とした機械学習ポテンシャルを構築している。この機械学習ポテンシャルは、テンソルネットワーク表現の波動関数(平均場近似もこれに含まれる)との積分が多項式時間で可能であることがわかっている。すでにモデル構築までは完了しているため、今年度は複数の分子種に対してこのモデルの有効性を検証していくとともに、学習アルゴリズムを洗練していく目標である。 また、多数の原子核自由度が複雑に絡み合う、低周波振動モードの扱いが直線座標系では、困難であることに直面しており、テンソルネットワーク表現波動関数における多球面座標系の導入などを検討せねばならない。 これまで行ってきた理論開発を通して、当初の想定以上に興味深い結果や新しい手法のアイディアが蓄積されてきたため、予定していた応用計算の代わりに、より、理論開発を深めていく可能性もある。
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