Project/Area Number |
23KJ1362
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 13030:Magnetism, superconductivity and strongly correlated systems-related
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山根 聡一郎 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥3,000,000 (Direct Cost: ¥3,000,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
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Keywords | 時間反転対称性 / カイラル / カイラルドメイン / 磁気光学カー効果 / カイラル物質 |
Outline of Research at the Start |
本研究「カイラルドメイン顕微鏡の創製」の目的は、時間反転対称性を破るカイラル超伝導体上に存在が期待されているカイラルドメイン構造を世界で初めて直接観測し、カイラル超伝導 の秩序機構の解明に取り組むことである。このカイラル超伝導体の基礎的でありながら未知の性質を解明するために、S字に曲がるピエゾ素子(Sベンダー)を用いた走査プローブを製作する。申請者らが開発を進めている超高感度Kerr効果測定装置に製作した走査プローブを組み合わせ、空間分解能を付加した「カイラルドメイン顕微鏡」を創製する。カイラル超伝導体候補物質に対して網羅的に走査測定を行い、次世代のカイラル超伝導体研究を先導する。
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Outline of Annual Research Achievements |
時間反転対称性を破るカイラル超伝導体上に存在が期待されているカイラルドメイン構造を可視化できるカイラルドメイン顕微鏡は4本のS字に曲がるピエゾ素子「Sベンダー」を用いて製作する。本年度では、特注にてデザインしたSベンダーを用いてカイラルドメイン顕微鏡の走査プローブの試作品を完成し、我々が開発を進めている高感度カー効果測定装置と組み合わせることによって、カイラルドメイン顕微鏡の創製の第一段階となるプロトタイプの製作を達成できた。このプロトタイプを用いて、いくつかのテストを行った。数マイクロメートル間隔のグリッドパターンを持つテストターゲットに対してスキャニングを行った結果、Sベンダーの変位と同等の変位量がグリッドパターンから導かれ、定量的に質の良いスキャニングができていることが確かめられた。次に、純良な鉄を用いると、ゼロ磁場では鉄の磁区に起因するドメイン構造を可視化することができた。他方、磁場を加えてその磁区構造を制御すると、対応するような単調なスキャニング結果が得られた。以上のことから、本年度においてカイラルドメイン顕微鏡の基盤技術を実証することができた。 本実験と平行として、近年の物性物理学において特に注目を集めているカゴメ金属CsV3Sb5について高感度カー効果測定を行った。この物質の興味深い事は、バナジウムイオン面内でループ電流と呼ばれる永久電流が創発することで自発的に時間反転対称性を破ることが理論的に予測されている。しかし、このような時間反転対称性破れの証拠を捉えることは難しく、現在報告されている実験結果の中でコンセンサスが得られていない。このような結果のちぐはぐに対して、我々は結晶性の良し悪しがその時間反転対称性の有無に対して大きく関わってある可能性を見つけた。このことについて、走査プローブなどを駆使し、時間反転対称性の有無の起源を探っていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
■本年度の第一目標であるカイラルドメイン顕微鏡実現のための軸である走査プローブの作製および基盤技術の実証ができた。理由として以下以下である。 <1>.特注のS字に曲がるピエゾの評価、その特殊なピエゾを用いカー効果干渉計と組み合わせれる自作の走査プローブの設計および試作。<2>.グリッドパターンを持つテストターゲットによる評価の実施、および純良鉄における磁区ドメインの観測。 またさらに、従来型の高感度カー効果測定によるカゴメ金属CsV3Sb5における時間反転対称性と結晶性について関係性についても着実に理解が深まってきている。 ◆現在進行中の課題は以下である。 <1>.特殊なセラミック素材と組み合わせることによって、低温(~2 K)・強磁場(~10 T)の環境下で100 um範囲のスキャニングを可能にする走査プローブを完成させることである。本年度試作した走査プローブの室温での結果からも十分に達成可能と断言できる。低温で強磁性転移する物質などを用い、テストを行った後に実際にカイラルドメイン観測へ挑戦する。<2>.カゴメ金属CsV3Sb5の時間反転対称性と結晶性との関係性について調べることである。現在この物質の時間反転対称性に関する 実験結果は全くコンセンサスが得られてないといって良い。走査プローブと組み合わせることで、この物質の時間反転対称性の起源に迫る。
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Strategy for Future Research Activity |
<カイラルドメイン顕微鏡の完成>低温・高磁場下で安定に動作する走査プローブと高感度カー効果干渉計を組み合わせカイラルドメイン顕微鏡を完成する。カイラルドメインの可視化に向ける。 <カゴメ金属CsV3Sb5における時間反転対称性>カゴメ金属の時間反転対称性についての磁気光学カー効果測定をより進め、その秩序の機構に迫る。測定データーに関する精査を行い、論文を執筆する。 <磁気光学カー効果顕微鏡のさらなる高感度化>世界初のカイラルドメインを観測するためには、現在の干渉計の感度が十分である保証はない。高感度化は必須である。 <カイラルドメインにおける初の可視化>この研究の最終段階として、カイラル超伝導体などが発現するカイラルドメイン構造の可視化に挑む。
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