Project/Area Number |
23KJ1371
|
Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 17040:Solid earth sciences-related
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
野末 陽平 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2026-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
|
Budget Amount *help |
¥3,000,000 (Direct Cost: ¥3,000,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
|
Keywords | 地殻変動 / 歪み速度場 / GNSS / スパースモデリング / 局在性と平滑性 |
Outline of Research at the Start |
日本列島などの変動帯では地震活動や地殻の変形が活発である。歪み速度(地殻の変形速度)の集中は地震の発生と深く関係する。従って、空間的に離散的に分布する測地データから連続的な歪み速度場を高精度で推定することは重要である。歪み速度場は、通常は空間的に滑らかである一方、活断層の周辺などで局在する。しかし、平滑性を先験情報とした従来のインバージョン解析では、歪み速度の局在性を表現することは難しい。そこで本研究では、平滑性に加えてスパース性を先験情報として新たに導入した目的関数Elastic netを用いることで、歪み速度場の平滑性と局在性を同時に表現可能な推定手法を開発する。
|
Outline of Annual Research Achievements |
歪みの蓄積は地震の発生や地形の形成と関係する。従って、空間的に離散的な測地データから連続的な歪み速度場を高精度で推定することは重要である。本研究では、スパース条件に基づくL1正則化を新たに導入することで、GNSSデータの逆解析により歪み速度場の局在性と平滑性の双方を反映可能な手法を開発する。具体的には、最小化すべき目的関数に歪み速度の空間変化率のL1ノルムとL2ノルムを課す。L1ノルムは歪み速度場の局在性、L2ノルムは歪み速度場の平滑性を先験情報として用いることに対応しており、両者の比重は2つの超パラメータにより規定する。 定式化が比較的容易な1次元で歪み速度場を推定した。まずは、提案手法の妥当性と限界を検証するために、横ずれ断層での定常滑りに伴う地表の変形の推定を例に数値実験を行った。断層の固着深さ・観測点間隔・観測誤差の大きさを変更しながら、提案手法を用いて歪み速度場を推定した。その結果、固着深さや観測点間隔によらず提案手法は従来法(L2正則化)と同等以上の精度で歪み速度場を推定可能であること、提案手法は誤差の小さいデータに対して適用可能であることが分かった。 次に、有馬高槻断層帯と直交する測線上における歪み速度場の推定を行った。GNSS データには、測線近傍の国土地理院GEONET観測局におけるF5解の日々の座標値を使用した。2001年1月1日から10年間について、断層走向に平行な方向の平均変位速度を抽出し提案手法を適用した。その結果、歪み速度のピーク値はL2正則化と比べて2-3割程度大きく推定された。横ずれ断層の定常滑りに伴う歪み速度の解析解を推定結果にフィッティングさせると、L2正則化より地震発生帯の下限深さに近い固着深さの値が得られた。 以上の成果を投稿論文にまとめ、国内外の学会にて発表を行った。 その他、提案手法を2次元に拡張するための定式化にも着手したところである。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は、1次元の問題における歪み速度場推定について論文にまとめることと、提案手法を2次元に拡張することに取り組む予定であった。提案手法においては、超パラメータによって歪み速度場の局在性と平滑性の先験情報の重みが規定されるため、その値は推定の精度に関わる重要な要素である。年度当初の段階では超パラメータを決定する部分について十分に検証できていなかったため、今年度はその方法を探るべく試行錯誤を行った。そのため、1次元の研究成果を論文にまとめるまでに時間を要した。現状では提案手法の2次元への拡張が予定よりやや遅れていると考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
1次元での推定では、断層走向に直交する方向への観測点の変位を考慮していないため、歪み速度場推定としてはやや不十分である。従って、今後は提案手法を2次元に拡張し、面的な歪み速度場の推定を試みる。2次元では歪み速度3成分が存在するため、定式化は1次元の場合と比べて複雑になる。現在は2次元の目的関数の定式化までを行った段階である。しかし、モデルパラメータの数が1次元と比べて格段に増加するため、特に超パラメータを決定する際に計算コストが膨大になるという課題がある。1次元の場合と同様に、断層の定常滑りに伴う地表変位の解析解を用いた数値実験を通じて、提案手法の妥当性や限界の検証を行う。その後、実際の測地データへの適用を行う。推定された歪み速度場は、局在性と平滑性の双方が反映されたものになると期待される。すなわち、L2正則化の場合と比べて、活断層などの近傍で歪み速度の値が大きく変化すると予想する。得られた歪み速度場から、活断層の運動や分布との関係を考察する。 2次元での推定では、日本列島に加えて海外の変動帯においても歪み速度場の推定を行う予定である。海外では砂漠地帯など植生が少なく、干渉SARによる観測が容易な地域も多く存在する。GNSSは時間分解能が高いが、観測点の空間分布は離散的である。一方で干渉SARは時間分解能が比較的低いが、地殻の変動を面的に観測できる。1次元での数値実験の結果を踏まえると、両者を組み合わせたデータに提案手法を適用して同時逆解析を行えば、GNSS観測点がまばらな地域でも、非地震時の面的な歪み速度場をL2正則化と同等以上の精度で推定できると期待できる。従って、海外の変動帯に適用する際にはGNSSデータに加えて干渉SARデータも用いることで、提案手法による歪み速度場の高精度推定を試みることを考えている。 研究成果は国内外の学会にて発表し、投稿論文にまとめる予定である。
|