Project/Area Number |
23KJ1381
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 21050:Electric and electronic materials-related
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
朝田 秀一 京都大学, エネルギー科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥3,000,000 (Direct Cost: ¥3,000,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
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Keywords | シフト電流 / 磁性注入電流 / 二次元半導体 / 人工ヘテロ構造 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、次世代光起電力デバイスへの利活用が期待されているシフト電流現象の物理の理解とその工学応用に関するものである。シフト電流はその特異な非線形応答性から高効率光電変換が期待されるものの、1)大きな自発電流の発生、2)赤外光における応答性、など 乗り越えなければならない課題が存在する。 そこで本研究では、原子層半導体ヘテロ構造における基礎物理的な研究から出発し、それらの課題解決を通して、次世代高効率光起電力デバイスに向けた研究に挑戦する。
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Outline of Annual Research Achievements |
研究計画に記載のように、人工ヘテロ構造におけるシフト電流と磁性の相関を対象として研究を行った。 反強磁性物質として知られる四硫化クロムリン(CrPS4)と次世代半導体として注目される遷移金属ダイカルコゲナイドとの人工ヘテロ構造デバイスを実際に作製し、その光起電力特性を測定した。まず室温において、自発的な光電流の発生を確認するだけでなく、その非線形な励起光強度依存性や励起位置依存性から、ヘテロ界面における空間反転対称性の破れに由来したシフト電流であることを確認した。 更に、このデバイスの光起電力特性を、CrPS4の磁性相転移温度(ネール温度)以下となる低温領域で測定したところ、ネール温度を境に急激な自発電流の変化が観測された。この変化を解明するために、デバイスに面直方向に外部磁場を印加し、CrPS4の磁性状態を操作することによる光起電力特性の変化の観測を行った。その結果として、外部磁場を印加していくと一定の磁場を境に明確な自発電流の変化が観測され、またその外部磁場は先行研究で報告されているCrPS4の磁場誘起磁性相転移とおおよそ合致した。 このように今年度は、磁性物質を用いたシフト電流光起電力デバイスを作製・測定し、構成物質の磁性状態に強く依存して自発電流が変化することを示した。さらにその変化の原因として、シフト電流そのものは時間反転対称性に依存した変化をせず、磁性注入電流と呼ばれる非線形バルク光起電力発生が複合的に起こり、観測されたと考えられる。さらに、表面スピン方向が異なると考えらえる複数のデバイスで測定を行い、理論的に矛盾のない結果を示すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画では、試料作製で大きく時間を要することから、初年度は人工ヘテロ構造デバイスの安定した作製手法の確立と室温特性の測定をおおよその目標として掲げていた。 しかし実際には、当該分野の周辺研究の発展とともにデバイス作製の難度、品質が大きく改善され、複数のデバイス作製に成功し、早急な段階で低温特性測定、加えて低温で観測された自発電流変化の原因解明へ向けた外部磁場依存性測定へと踏み出すことができた。 加えてこれらの測定系の確立において、完全新規の系ではなく所属研究室で過去使用されていた光学測定系を流用・改造したこと、更には昨年度に研究者間交流でノイズ抑制に関して学ぶ機会があり、測定系の精度が大きく改善されたことで、当初の計画よりも短期間で低温磁場測定系の確立に成功、外部磁場を印加した際の自発電流変化の観測に成功した。 以上から、当初に申請した計画以上にデバイス作製と測定が進展し、計画以上の進捗が達成されたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度の研究成果として、人工ヘテロ構造デバイスにおいて、シフト電流と磁性注入電流が複合的に発生した状態の観測に成功した。 この状態は、非常に複雑な状態の結果としての自発電流変化を観測していることから、常磁性物質と強磁性物質でのヘテロ界面における磁性注入電流についてや、バルクの層状反強磁性物質における表面の効果など、磁性注入電流についていくつかの興味深い結果とともに、不明な点が残った。 そこで今後はまず、薄層の層状反強磁性物質を主な対象とし、その光起電力特性を測定することで、磁性注入電流の基本的な特性について更なる研究を進めることを主な方策としている。 ここで課題として、磁性層状反強磁性物質は空気中安定性や層間結合力などの問題から薄層化が非常に難しいという課題がある。このような物質群の薄層試料作製には金剥離と呼ばれる手法などもあるが、金剥離では酸による金の溶融過程で薄層試料に欠陥など大きなダメージが入り、試料特性が変化することが知られており、結晶構造や対称性が重要となる本研究には向かない手法である。 この問題の解決法として、現在グローブボックス内で完結するロボットアームを用いた自動試料作製・探索システムの構築を所属研究室で進めており、まもなく完成の見込みである。実際に、窒素置換グローブボックス内での機械剥離では四硫化クロムリンの単層試料の作製に成功しており、これらのロボットシステムの活用によって試料作製の課題を解決、研究を推進していく方策である。
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