Project/Area Number |
23KJ1387
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 21050:Electric and electronic materials-related
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
三上 杏太 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥3,000,000 (Direct Cost: ¥3,000,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
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Keywords | 炭化ケイ素 / 相補型MOS / 集積回路 / pチャネルMOSトランジスタ |
Outline of Research at the Start |
相補型MOS集積回路(CMOS IC)は現代社会において必要不可欠である。近年では、極低損失車載用パワーIC、金星探査・燃焼炉制御用の高温動作ICへの応用も期待されている。しかし、現在主流の珪素を用いたCMOSは、高温動作が困難であり、前述の応用では冷却設備が必要不可欠である。そこで、高温環境かつ冷却設備フリーで動作可能な炭化珪素(SiC) CMOSが注目されている。本研究では、CMOSのベースとなるMOSトランジスタに関して、その動作特性を半導体物理に根差してモデリングする。そして、モデルに基づいたSiC CMOSの設計・作製・高温動作実証を行い、高温動作CMOS ICの設計指針を提示する。
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Outline of Annual Research Achievements |
炭化ケイ素(SiC)相補型MOS(CMOS)を用いた高温動作集積回路の実証に向けて、SiC CMOSを構成するSiC pチャネルMOSトランジスタ(MOSFET)の移動度向上に取り組んだ。CMOSデバイスはnチャネルおよびpチャネルMOSFETから構成され、CMOSの性能は移動度が低い方のMOSFETによって制限される。SiC MOSFETにおける典型的な移動度は、nチャネルMOSFETでは40 cm^2/Vs、pチャネルMOSFETでは10 cm^2/Vsである。したがって、SiC pチャネルMOSFETの移動度向上は高温動作CMOSの高性能化の観点で極めて重要である。 報告者はSiCで一般的な結晶面である(0001)面ではなく、これに垂直な(11-20)面および(1-100)面といった結晶面にpチャネルMOSFETを作製し、移動度を評価した。その結果、(11-20)面では25 cm^2/Vs、(1-100)面では28 cm^2/Vsという従来値の2倍以上の移動度が得られた。特に(1-100)面で得られた移動度は、これまで報告されたSiC pチャネルMOSFETの移動度として最高値である。 また、移動度が電流方向に依存すること(移動度の異方性)を確認した。具体的には、c軸垂直方向の移動度の方がc軸平行方向の移動度より20%から50%程度高いことがわかった。SiCの特異なバンド構造と量子閉じ込め効果を考慮した理論計算より、正孔有効質量の異方性を起源としていることを明らかにした。 上述の結果より、pチャネルMOSFETを(1-100)面上に作製し、その電流方向をc軸垂直とすることで、高い移動度が得られることがわかった。これはSiC CMOSデバイスを設計する際に極めて重要となる指針である。このように従来値を大幅に上回る高い移動度が得られるデバイス設計指針の提示に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までの報告者の研究により、SiC CMOSに欠かせないSiC pチャネルMOSFETの基礎的特性である、移動度のボディ層ドーピング密度依存性・結晶面依存性・電流方向依存性が明らかになった。それぞれの基礎的特性に関して、キャリア散乱機構・MOSFET反転層におけるキャリア有効質量といった半導体物理の観点より考察し、その起源の推定を行うことに成功している。また、これまで広く研究が行われてきたSiC nチャネルMOSFETとの比較やSiCバルクにおける移動度を考慮した考察により、(11-20)面および(1-100)面上に作製したpチャネルMOSFETの移動度がSiC MOSFETとして例外的に高いなど予想外の結果も得られている。したがって、当初の計画通り順調に進展している。加えて、(1-100)面を用いることで従来値の2倍以上の移動度が得られることを実証し、SiC CMOS高性能化のためのデバイス設計指針を早期に提示できたことは期待以上の進展である。
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Strategy for Future Research Activity |
先行研究によりSiC nチャネルMOSFETの移動度に関して、報告者の研究によりSiC pチャネルMOSFETの移動度に関して深い知見が得られつつある。ここでSiC CMOSの実現のためには、移動度だけでなく、しきい値電圧に関する知見も必要不可欠である。MOSFETのしきい値電圧はCMOS特性を大きく左右するため、ボディ層ドーピング密度により精密に制御する必要がある。しかし、SiC MOSFETにおいてはしきい値電圧の精密制御に関する報告が存在しない。そこで、今後はしきい値電圧の精密制御に注力して研究を実施する。 予備検討として、これまでに作製したpチャネルMOSFETの実験しきい値電圧と理論しきい値電圧の比較を既に実施済みである。その結果、ボディ層ドーピング密度が高くなるほど実験値と理論値が乖離するという、当初予想されなかった現象を確認している。現状その原因は未解明であるが、MOSFET作製プロセス中に生成される固定電荷・捕獲電荷に起因していると推測される。そこで、MOSFET作製プロセス(ゲート絶縁膜の形成方法、ゲート絶縁膜形成後熱処理など)をさまざまに変えることで、その起源を明らかにし、しきい値電圧精密制御のための指針を確立する。
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