Project/Area Number |
23KJ1409
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 01010:Philosophy and ethics-related
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
櫻井 真文 大阪大学, 大学院人文学研究科(人文学専攻、芸術学専攻、日本学専攻), 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
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Keywords | カント / 自然法 / 人間の尊厳 / 意志の自由 / Achenwall / 戦争 / 自然状態 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、批判期カントの『自然法講義』における「人間の尊厳」概念の解明に注力する。2023年度は、『自然法講義』の前半と『道徳講義』を取り上げ、「自然法」、「尊厳」、「拘束性」を中心とする鍵概念について、その生成史を確認する。2024年度は、『自然法講義』の後半と『基礎づけ』を取り上げ、自然法論と道徳論の異同に着目したうえで、その自然法論の独自性を明らかにする。2025年度は、後期カントの自然法論との比較検討を行う。かくして、批判期から後期へ至るカントの思索の発展を追跡することを通じて、超越論的次元と経験的次元を架橋する、カントの「人間の尊厳」概念の体系的解釈モデルの構築を試みる。
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Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は、『ファイヤーアーベント自然法講義』(1784年、以下『自然法講義』と略記)の成立史と、批判期カント哲学の「人間」理解の二重性について、解明を行った。具体的な研究の進め方としては、カントが自身の講義のための教科書として採用したG. AchenwallのIus Naturae(第五版、1763年)の構成並びに叙述内容と、カント自身の講義内容を比較検討するという手法が採用された。その比較検討に際しては、カント学術Akademie版(2010-2014年)の文献学的校閲、ならびにケンブリッジ版の英訳(2016年)の成果を適宜参照した。また「自然法」、「尊厳」、「拘束性」、「意志の自由」といった『自然法講義』における重要概念については、同時期の通俗的著作の『啓蒙とは何か』(1783年)や歴史哲学的著作の『普遍史の理念』(1784年)における叙述内容との連関も解明した。 本研究成果に関しては、2024年1月に「カントの『ファイヤーアーベント自然法講義』(1784年)における戦争観 ;自然状態の克服過程に着目して; 」という表題の研究発表を行い、カントがAchenwallの「自然法」概念には今だ神学的伝統の痕跡が残っていることを喝破するとともに、自身は純粋実践理性に基づく新時代の「自然法論」を打ち立てていること、さらにカントは批判期時点ですでに法哲学的観点からあらゆる戦争を認めていないことを解明した。またカントの「人間の尊厳」概念については、2024年3月に独語論文を大阪大学の紀要において発表し、カントは「人間の尊厳」の根拠を(理論的)理性の有無に指摘するのではなく、むしろ純粋実践理性の統制の下にある「意志」を各人がいかに使用するか、の内に指摘していることを究明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023年度の個別課題として掲げた「批判期カント哲学の「人間」理解の二重性の解明」に関しては、当該テキストの分析が滞りなく進展しており、大阪大学での研究発表時の質疑応答においても「カントの平和構想に関しては後期カントの共和国論にも注意を向けてはどうか」という今後の研究に関する有意義な助言も受けているため、順調な進捗状況であると言える。また3月以降は海外研究員として、ドイツのテュービンゲン大学に拠点を移しており、受け入れ研究先のBrachtendorf教授と共に、ドイツ古典哲学全般における「自然法」概念の生成史について研究を進めている。なかでも受け入れ先は、カトリック神学部における哲学科ということもあり、「自然法」概念のキリスト教的背景については様々な角度からのフィードバックを受けることができた。また研究成果に関しては、日本カント協会に論文投稿を行っている段階であり、査読の可否に依るところもあるが、その成果を社会に問うための準備はできている。また舟場教授主催の大阪哲学ゼミナールや、関西哲学会やフィヒテ学会への参加を通じて、自身の研究の長所ならびに短所を直接確認することができたことは、大きな収穫であった。以上の通り、文献研究は順調に進んでおり、国内外の研究者との意見交換も活発に行われていることから、本研究課題はおおむね順調に進展していると言えるであろう。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策としては、交付申請書記載の当初の計画に従い、批判期カント哲学における『自然法講義』の体系的位置の解明に着手する。具体的には、同時期の代表的な道徳哲学的著作である『道徳形而上学の基礎づけ』(1785年)との関連を踏まえた上で、単なる道徳哲学には還元されえないカントの自然法論の射程と独自性を考究する。主要テキストとしては、批判期カントの実践哲学の体系構想が明確に描き出されている『自然法講義』の「序論」に着目する。さらにカント実践哲学の体系構想については、近年の重要な研究成果であるM. Baum(2020)、M. Forschner(2022)、M. Willaschek(2023)を適宜参照し、外的行為を主題とする自然法論、内的行為を主題とする道徳論、人間と超越的なものとの関係規定を問う宗教論が、カントの哲学体系においていかなる星位を形成しているかを規定する。 申請者は2024年度も研究員としてテュービンゲン大学神学部において研究活動に従事することになる。そのため「日本カント協会」での研究発表は、発表条件次第で困難になる恐れもあるが、その際にはテュービンゲン大学のBrachtendorf教授と相談したうえで、EU圏の学会での研究発表に切り替え、ドイツ語で研究発表と論文投稿を行うことにする。
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