水素スピルオーバー効果の最適化を志向した新規ハイエントロピー酸化物材料の創成
Project/Area Number |
23KJ1506
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 26040:Structural materials and functional materials-related
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
俊 和希 大阪大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,200,000 (Direct Cost: ¥4,200,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,400,000 (Direct Cost: ¥1,400,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,400,000 (Direct Cost: ¥1,400,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,400,000 (Direct Cost: ¥1,400,000)
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Keywords | 水素スピルオーバー / グラフェン材料 / 非平衡固溶体合金 |
Outline of Research at the Start |
水素スピルオーバーは、貴金属ナノ粒子を起点に原子状水素が触媒担体上を拡散する現象である。本機構で生み出された原子状水素は、動的活性水素種として振る舞い、強力な還元駆動場および特異反応場を触媒担体上に誘発する。しかし、これらスピルオーバー効果の制御因子はブラックボックスであるため、水素スピルオーバーの応用技術は未だに確立されていない。 本研究では、「金属酸化物のエントロピー」を基軸に材料設計を行い、スピルオーバー効果を最大限に発現する触媒担体材料の創成および触媒応用を目指す。水素スピルオーバーは水素関連分野全体に寄与する現象であるため、本研究で得られた成果は水素基盤社会の構築を促すものとなる。
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Outline of Annual Research Achievements |
水素スピルオーバーは、水素分子が金属粒子を介し固体上に活性水素種として流れ出す現象である。近年、触媒分野、水素燃料電池、水素貯蔵材料分野などの機能性材料において、水素スピルオーバーによる性能向上が数多報告されている。にも関わらず、本現象は観測自体が非常に困難であるため、応用技術の確立はおろか原子状水素のダイナミクスの解明すら未だ十分になされていない。逆に言えば、これらが達成された暁には、グリーン水素を基軸とした革新的技術の創出が期待できる。水素スピルオーバーの学理構築に向けて申請者は、「ダイナミクス解明」と「新規応用法の開発」の2つに重点を置き、研究を進めている。前者では、拡散する原子状水素の移動経路や電荷状態の解明に注力している。また、後者では水素スピルオーバーを非平衡材料の創成や触媒性能の向上に応用しようと努めている。 本年度、申請者はグラフェンの特定位置に酸素を導入することで、特異水素スピルオーバー経路が形成することを報告した。通常のグラフェンや酸化グラフェン上では、基底面内における水素移動の活性化エネルギーが非常に大きいため、水素スピルオーバーの発現が困難な一方で、空気焼成を施したグラフェン(air-GO)では水素スピルオーバーが低温で発現することを見出した。これは、空気焼成によって基底面に導入された含酸素欠陥が活性化エネルギーの低い水素スピルオーバー経路を提供するためである。さらに、申請者はair-GO上で特異的に発現する水素スピルオーバーを利用してRuNi固溶体合金ナノ粒子の合成に成功した。この、RuとNiは還元電位が大きく異なり、なおかつ正の混合エンタルピーを有する組み合わせであるため、通常固溶体の形成は困難である。さらに、このRuNi固溶体合金ナノ粒子はアンモニアボランからの水素生成反応において、単一のRu粒子と比べて優れた触媒活性を示すことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
これまで水素スピルオーバーに関する研究はその特異機能に重点を置いたものが多く、その発現機構や応用可能性に関する知見が欠落していた。今年度の結果より、グラフェン材料上での特異水素スピルオーバー経路が示された。さらに、その水素スピルオーバーを活用して非平衡ナノ材料を簡便に合成可能であるという新規応用活用法が提案された。これは水素スピルオーバーの学理構築だけでなく先進的なマテリアルサイエンス分野へも多大な波及効果をもたらすものであり、1年間での成果として当初の計画を上回る進展である。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は、ハイエントロピー非還元性金属酸化物材料における水素スピルオーバー性能に重点を置き研究を遂行する。これまで水素スピルオーバーの発現は主に還元性金属酸化物上でのみ報告されてきた。これら還元性酸化物は地球上で1%未満しか存在しない希少元素から成る。一方で、非還元性酸化物であるMgOやAl2O3は地球上に豊富に存在するが水素スピルオーバーの発現が困難である。つまり、MgやAlから成る酸化物材料で水素スピルオーバーが発現すれば、持続可能かつ高性能な革新的機能性材料の開発が見込める。 そこで申請者は本年度、非還元性酸化物中における元素配置、元素種を制御してエントロピーを緻密に制御し、水素スピルオーバーを駆動するハイエントロピー非還元性の開発を行う。
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Report
(1 results)
Research Products
(9 results)