Project/Area Number |
23KJ1507
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 29020:Thin film/surface and interfacial physical properties-related
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
仲嶋 一真 大阪大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,700,000 (Direct Cost: ¥2,700,000)
Fiscal Year 2025: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2024: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2023: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
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Keywords | 液晶 / ブルー相 / 相転移 |
Outline of Research at the Start |
三次元螺旋構造を自己組織するコレステリックブルー相(BP)液晶は,次世代の液晶光デバイス材料として近年注目を集めている.BP液晶のデバイス応用において,その配向制御は重要であるが,BP液晶が自己組織する複雑な分子配列に起因して,その配向メカニズムは十分に明らかになっておらず,また適切な配向手法は確立されていない.そこで,申請者は,BP液晶が外力を受けた際の配向状態を実験・理論の両面から解析することで配向メカニズムを調査する.また,それらの外力による配向において重要となる液晶材料および配向材料の物理的性質を明らかにし,これらの知見を基に,新たな配向手法を開発し,BP液晶のデバイス応用を模索する.
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Outline of Annual Research Achievements |
ブルー相(BP)液晶の配向には,基板表面の配向処理や電界等の外力,BPへの相転移挙動が影響することが知られている.本年度は,配向処理された基板上でのBPIIの配向機構を明らかにすることを目的として,一様配向基板やパターン配向基板上でのBPIIの配向を調査した.また,コレステリック相(Ch)からBPIへの相転移を調査するとともに,BPIの発現領域の制御を試みた. BPは数百nmの三次元周期構造を自己組織するために,その分子配列は巨視的に等方である.しかし,一様配向基板上で配列されたBPIIは(110)面が基板に平行になり,その結晶方位が配向容易軸から10度ほど変位した.その変位方向は液晶材料のキラリティに依存するとともに,変位の大きさは液晶材料の弾性に依存することを見出した. 一方で,一次元の正弦状の容易軸パターンを印加した基板では,BPII格子は傾斜して配列することを見出した.この傾斜角の光学的解析や透過型電子顕微鏡観察により,BPIIは配向パターンの周期性とBPII格子の周期性とを整合するように配列することを明らかにした.これにより,三次元周期構造であるBPの配列が一次元パターンで制御できることが実証された. 結晶や液晶の相転移が欠陥から生じることは良く知られている事実である.我々はCh-BPI相転移において,Chのグランジャン欠陥から開始することを見出した.グランジャン欠陥は楔形セルで観察される欠陥であるが,それを基板が平行に張り合われたセルで作製する技術を開発することで,欠陥のある領域とない領域での相転移温度を調査した.その実験結果とLandau-de Gennes理論に基づくシミュレーションにより,欠陥によって増大した自由エネルギーが相転移を誘起することが示唆された.また,欠陥を高密度に印加したセルで相転移させることで,BPIの発現領域を制御できることを実証した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画である一様配向基板上でのブルー相(BP)II液晶の配向方位の配向容易軸からの変位の調査について,液晶材料のキラリティに加え,液晶材料の弾性定数や基板表面のアンカリングエネルギーが影響することを見出した.また,この現象を解析するためのLandau-de Gennes理論に基づくシミュレーションを自作し,理論面からも調査を行い,液晶の弾性定数や基板表面のアンカリングエネルギーがBPIIの配向方位に影響を及ぼすことが示された.理論計算の結果については,その妥当性も含めて議論中である. また,計画していた電界除去によるBPI再配向時の配向制御メカニズムの解明について,基板面内方向の電界によってコレステリック相(Ch)やBPXを経由するが,特にBPXの入凹状態が電界除去時のBPIの配向に影響を及ぼすことを見出した.これは,先行研究で提案されていた再配向機構とは必ずしも合致していないため,新たなモデルが必要であり,現在議論中である. 以上が当該年度までの研究計画であったが,それ以外にも一次元周期パターンに配向されたBPIIが傾斜配列を形成することを実験/理論両面から実証した.また,Ch-BPI相転移においてChのグランジャン欠陥が相転移を誘起することを見出し,その性質を実験的に調査した. 以上が本年度に行った研究であり.当初の研究計画は8割ほどの進捗を生むともに,計画以外でも本研究目的に準ずる複数の発見や物性調査を行った点から.概ね順調に計画が進捗していると評価した.
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Strategy for Future Research Activity |
一様配向基板上でのブルー相(BP)IIの配向について,理論計算の妥当性を評価するとともに,実験により界面の液晶分子配列を直接的に評価する.具体的には,高屈折基板上でBPIIを配向させ,基板-BPII界面で全反射させる.その際のエバネッセント波が感じる複屈折を評価することで,基板界面付近でのBPII格子のひずみを評価する. 電界除去によるBPI再配向時の配向制御メカニズムの解明については,先行研究で提案されたモデルが正しくないことが明らかになったことから,次年度では新たなBPI再配向のモデルを提案する.それにあたり,本年度に引き続き基板面内方向の電界を印加した際の最配向挙動を調査するが,このときに基板表面の配向処理によるBPXの配向状態の違いと,そのBPXがBPIの配向に及ぼす影響に重点をおいて調査する. 本年度に新たに発見したChの欠陥からのCh-BPI相転移はBPIの配向を制御する技術の開発に重要な知見を提供した.次年度は,本発見をBPI-Ch相転移へと拡大するとともに,BPI発現領域の制御技術の向上を目指し,ChとBPIが共存した素子を作成する.ChとBPIは屈折率や電界応答などの様々な物理的特性が異なることを利用し,新たな駆動方式の液晶素子を開発する.
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