Project/Area Number |
23KJ1550
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 48030:Pharmacology-related
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
奥田 裕己 神戸大学, 医学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥1,800,000 (Direct Cost: ¥1,800,000)
Fiscal Year 2024: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2023: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
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Keywords | 慢性ストレス / 内側前頭前野 / 眼窩前頭皮質 / 神経回路 |
Outline of Research at the Start |
慢性ストレスは、うつ病の主要なリスク因子である。他個体から繰り返し攻撃される慢性社会ストレスをマウスに与えると、うつ様行動である社会性の減弱に、大きな個体差が生じる。また、社会性が減弱したマウスでは、内側前頭前野の錐体神経細胞にて樹状突起退縮が生じる。本研究では、慢性社会ストレスにより誘導される行動変容の個体差に関連する脳領域と神経回路変容を同定し、これらを人工的に操作することで、行動変容の個体差を担う神経回路基盤を解明する。これにより、神経生物学的基盤に基づくうつ病などのストレス関連疾患のリスク予測や予防、新規治療標的の同定に繋げる。
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Outline of Annual Research Achievements |
環境要因が持続的に作用することで生じる慢性ストレスは抑うつ、不安亢進、認知機能障害などの行動変容を促し、うつ病など精神疾患のリスクを高める。我々は、マウスの慢性社会ストレスを用い、慢性ストレスによる行動変容と共に、内側前頭前野の神経細胞の樹状突起退縮が誘導されることを示してきた。しかし、内側前頭前野の樹状突起形態変化が神経回路にどのような影響を及ぼすかについては明らかでない。 本研究では、慢性社会ストレスに供したマウスの内側前頭前野に G欠損型狂犬病ウイルスベクターを注入して内側前頭前野への神経入力を全脳で系統的に調べることで、ストレスによる解剖学的な神経回路の変化を解析した。その結果、慢性社会ストレスにより社会忌避行動が誘導されたストレス感受性群では、ストレスから一ヶ月後に海馬CA1領域および嗅皮質からの神経投射が減少する一方、眼窩前頭皮質から内側前頭前野への神経投射が増加することを見出した。これらの変化は慢性社会ストレスにより社会忌避行動が生じないストレス抵抗性群では誘導されず、ストレス感受性との関連が示唆された。さらに、眼窩前頭皮質から内側前頭前野への神経投射の増加の程度は社会忌避行動と強く相関していた。慢性ストレスに暴露されたマウスのストレス感受性群において、眼窩前頭皮質から内側前頭前野への神経投射を化学遺伝学により抑制したところ、社会忌避行動が消失した。以上のことから、この神経投射増加が慢性社会ストレスによる社会忌避行動の維持に関与することが示唆された。 今後は慢性社会ストレスによる神経回路再編の意義や分子機序を解明し、ストレス関連疾患の治療戦略の開発につなげたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の実験計画段階では、慢性社会ストレスに供したマウスの内側前頭前野に G欠損型狂犬病ウイルスベクターを注入して内側前頭前野への神経入力を全脳で系統的に調べることを目標の一つとしていた。「研究実績の概要」に示した通り、本実験は順調に進行している。計画段階では、内側前頭前野への神経投射は全体的に減少するはずであると予想していたものの、実際は眼窩前頭皮質からの投射が増加していることが分かった。これまでこの投射の増加は少なくともストレスから1ヶ月後に生じることは確認しているが、ストレス直後、またストレスから1週間後に同様の実験を行うことで、神経投射の増減の経時的変化を調べている。計画段階では、神経投射再編の経時変化まで調べる予定はなかったため、この点に関しては計画よりも進行していると考えられる。 また、全脳の神経回路を調べた結果から、特定の神経回路の活動操作を行うことで、行動に与える影響を調べる計画も立てていた。本研究の結果から、眼窩前頭皮質から内側前頭前野への神経投射増加が、うつ様行動の一つである社会忌避行動に関与していることを明らかにしつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究計画として、神経活動計測、遺伝子発現解析、神経投射の投射先の詳細、特定の神経回路の役割をより重点的に調べることを目標としている。神経活動計測では、眼窩前頭皮質や内側前頭前野を対象として、Neuropixelsを用いた電気生理学的な計測や、GCaMPを用いたカルシウムイメージングを行う予定である。遺伝子発現解析では、全脳イメージングから見出された複数の脳領域に対して、RNA-seqを行うことで、神経投射の増減に影響を与える遺伝子発現を調べる。神経投射の投射先の詳細では、慢性ストレスにより増加する眼窩前頭皮質からの神経投射が、内側前頭前野のどの神経細胞サブタイプに入力しているかについて、偽狂犬病ウイルスベクターや特定の神経細胞同士のシナプス結合を可視化する技術であるmGRASPにより調べる。特定の神経回路の役割については、特に眼窩前頭皮質-内側前頭前野の神経回路に着目し、オペラント実験やインビボ電気生理記録などを組み合わせることで、まだ当該神経回路の新たな役割を調べる予定である。
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