The Possibility of Simmel's Theory of Sociability as a Form of Knowledge: Renewing the History of Sociology in the German-Speaking World and Interpreting its Contemporary Significance.
Project/Area Number |
23KJ1558
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 08010:Sociology-related
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
田村 豪 神戸大学, 人文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥1,800,000 (Direct Cost: ¥1,800,000)
Fiscal Year 2024: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2023: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
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Keywords | ジンメル / 社交 / 社会学史・学説史 / ドイツ語圏 / 1920年代 / シュライアマハー / 個人主義 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、1900 年前後のドイツ語圏社会学史において記念碑的な意味をもつゲオルク・ジンメルの社交性論を取り上げ、社交性という知の形態の意義を解明する社会学説史研究である。そのためにジンメルの社交性論を、二つの視座から検討する。第一にカントやシュライアマハーという前世代の思想家による社交性思想の批判的継承である。第二に自然科学の隆盛とそれへの精神科学の応答といった同時代の社会状況を含む学問論と社交性論の応答関係である。本研究の意義は、社交性という知の形態を再検討し社会学史を刷新すること、現代社会における社交的コミュニケーションの「過剰ないし欠乏」状況を見定める視座を提供することにある。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題「ジンメル社交論という知の形態の可能性―ドイツ語圏社会学史の刷新とその現代的意義」の初年度である2023年度は、20世紀初頭になされたジンメルの社交論が取り上げられる歴史的および現代的コンテクストの把握と社交性思想史のなかでのジンメルの位置づけの解明に向けられた。 前者の研究は、ジンメルの社交論の1910年代から1920年代のドイツ語圏での受容を主題とし、『社会学の根本問題』への書評やフォン・ヴィーゼ、フィーアカントらの形式社会学、シュパンの普遍主義社会学を手掛かりとして探究した。ジンメルの社交論の評価が社会学の制度化・基礎づけの文脈で捉えられた場合、その議論の新規性とテーマの歴史性という二義性および「社交性」の解釈の幅が明らかになった。またその受容において十分に継承されなかった論点として、ジンメルが述べる「社交」はたんに社会の理念ではなく、そこに参加する人びとの具体性を要請しつつも個々人に還元できない匿名性をもって形成するという点が明らかになった。また現代的な受容のあり方として「ゾチオプルーデンツ(Sozioprudenz)」をめぐる議論として、社交論が欧州における礼儀作法や処世術の伝統的議論のなかに位置づけられるとともに、社交論一般が社会学の担う学習過程として制度化されていることが明らかになった。 後者の社交性思想史におけるジンメル社交論の位置づけの解明については、1799年のシュライアマハーの社交論とジンメルの社交論および個人主義論、演劇論を取り上げた。個性と共在という根本主題の変奏を捉えることで近代社会での社交的交流が個性を逆説的に可能にするさまを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の1年目は、ジンメルの社交論の受容史に焦点をあてることで、1920年代のドイツ語圏の社会学の制度化の運動と「社交」という用語との関連を深めることができた。そのために既存の社交論の研究を整理していくなかで、これまであまり問われることのなかったジンメルと社交という主題を一度切り離し、社交性の概念史上の文脈とジンメル研究史上の扱いというかたちで問いを分節することができた。この成果は一方で「「社交性」の振幅と基層性の「影の形象」――1920年代ドイツ語圏社会学界におけるジンメルの社交性論の受容」として既に発表された。他方で、社交の概念史上のジンメルの位置づけの作業はシュライアマハーの議論との比較というかたちをとった。近年のシュライアマハー研究における社会への関心の高まりもあるために、前者ほどには研究が進展していない。とはいえジンメルの個人主義論におけるシュライアマハーの位置づけを再考することで、社交性思想史の展開を描き出す準備は整いつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の第一の課題としては、シュライアマハーからジンメルへの社交性思想の展開を、研究成果として発表することである。2023年度に研究相談を行ったシュライアマハーとジンメルともに造詣の深い現地の研究者に助言をもらいながら、執筆作業を続けている。またこの研究の過程で「個と共在」が可能となる思考様式を解明するために、貨幣論および芸術論、歴史論の読解が不可欠となってきた。これらの作業は、ジンメルが自己と異なる他なる心・魂の理解の問題機制を解明することになる。引き続きテクストの丹念な読解作業を進めることになる。
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Report
(1 results)
Research Products
(4 results)