脂質代謝―血液―脳軸に着目した双極性障害の病態解明
Project/Area Number |
23KJ1560
|
Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 48030:Pharmacology-related
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
堀川 伊和 神戸大学, 医学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2025-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
|
Budget Amount *help |
¥1,800,000 (Direct Cost: ¥1,800,000)
Fiscal Year 2024: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2023: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
|
Keywords | 双極性障害 / 脂質代謝物 / 免疫細胞 / マルチプレックスシステム |
Outline of Research at the Start |
脂質代謝酵素Y及び脂質代謝物Xが末梢血球細胞動態変化を介して中枢神経系へ作用し、情動変容をひき起こす可能性が考えられる。本研究では、脂質代謝―血液―脳軸に着目した双極性障害の病態解明及び、脂質代謝物の新規創薬ターゲットやバイオマーカーとしての応用を目的とし、情動変容と関連する遺伝子発現変化を示す責任細胞種を同定し、その細胞種が情動に与える影響を解明するとともに、脂質代謝酵素Y遺伝子欠損による情動変容を担う神経回路基盤を解明する。さらに既存の双極性障害治療薬であるリチウムの作用機序に脂質代謝物Xが関与するかを検討し、脂質代謝物Xの双極性障害病態への治療効果を明らかにする。
|
Outline of Annual Research Achievements |
これまで我々は、脂質メディエーターの発現変動が情動変容や血球細胞の動態変化を引き起こすことを見出してきた。本研究では、脂質代謝―血液―脳軸に着目し、双極性障害の病態解明及び、脂質代謝物の新規創薬ターゲットやバイオマーカーとしての応用を目指した。 令和5年度は、脂質メディエーターの発現変動と関連し情動変容を担う責任細胞種を同定するため、特異的抗体による細胞欠損操作を行い、遺伝子欠損マウスの情動変容への影響を調べた。その結果、脂質代謝酵素欠損マウスはB細胞の欠損により行動異常の減弱を示した。これは、脂質代謝酵欠損マウスのB細胞が行動異常を亢進する可能性を示唆した。 さらに、脂質代謝物の血球細胞動態変化を介した情動変容の機序を調べるため、マルチプレックスシステムを用いて、脂質代謝酵素欠損マウスの末梢血液細胞の炎症性サイトカイン量を定量した。その結果、脂質代謝酵素欠損マウスの血中IgG2a量は増加傾向を示した。つまり、脂質代謝酵素欠損マウスはIgG2aを介した免疫応答により情動変容を示す可能性が示唆された。 上記の事から、脂質代謝酵素欠損マウスの行動変容には脂質代謝物による血球細胞動態変化を介した情動制御が関わる可能性が示唆された。 また、上記に加えてマウス慢性社会挫折ストレスにおける骨髄・脾臓での遺伝子発現・細胞組成・脂質メディエーターの変化について調べた。慢性社会挫折ストレスを受けたマウスの骨髄・脾臓では、リンパ球の減少と骨髄系細胞の増加が誘導され、抗炎症作用を持つ脂質メディエーターが減少することを示した。また、これらの血球細胞の変化や脂質代謝物の変化が相関することを明らかにした。この知見によりHorikawa I., et al., J Pharmacol. Sci., 2024での論文発表や第144回日本薬理学会近畿部会(大阪、2024年)での学会発表を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究は令和5年度において、脂質メディエーターの発現変動と関連し情動変容を担う責任細胞種を同定するため、RNA-seq解析やリピドミクス解析や、それらの特異的抗体による細胞欠損操作を行い、情動変容への影響を調べることを計画した。これについては、B細胞におけるリピドミクス解析を実施済みであり、さらに特異抗体を用いたB細胞欠損操作により脂質代謝酵素欠損マウスの一部の行動変容が減弱する可能性を明らかにした。 また、脂質代謝物の血球細胞動態変化を介した情動変容の機序を調べるため、マルチプレックスシステムを用いて、脂質代謝酵素欠損マウスの末梢血液細胞の炎症性サイトカイン量を定量し、脂質代謝酵素欠損マウスの血中IgG2aが増加傾向を示すことを見出した。 さらに、脂質代謝酵素欠損による情動変容を担う神経回路基盤と炎症細胞の関与を解明するため、神経活動マーカーc-fosの免疫染色法による全脳神経活動マッピングを行った。これについては、脂質代謝酵素欠損マウスの脳サンプルにおけるc-fosシグナルのラベリングまで完了しており、現在はc-fosシグナルの変化を脳領域ごとに解析中である。 上記に加えて、マウス慢性ストレスによる骨髄・脾臓での遺伝子発現・細胞組成・脂質メディエーターの変化を調べ、慢性ストレスにより骨髄・脾臓での血液細胞のプロファイルの変化し、抗炎症作用を持つ脂質メディエーターが減少することを示した。この知見によりHorikawa I., et al., J Pharmacol. Sci., 2024での論文発表や第144回日本薬理学会近畿部会(大阪、2024年)での学会発表を行った。
|
Strategy for Future Research Activity |
脂質代謝酵素欠損による情動変容を担う神経回路基盤と炎症細胞の関与を解明するため、神経活動マーカーc-fosの免疫染色法による全脳神経活動マッピングを行い、脂質代謝酵素欠損マウスに生じる不安様行動並びに社会性の低下と関連する脳領域を特定する。特定した領域において、神経細胞の形態変化やミクログリアの活性状態を調べる。脂質代謝物に着目したリチウムの作用機序の解明するため、リチウムを投与したマウスの骨髄や血漿中の脂質代謝物を包括的に調べ、さらにフローサイトメトリー法により血球細胞動態変化を明らかにする。特に情動変容に関わる血球細胞種のRNA-seq解析を行うことで、リチウム投与により影響を受けるシグナル伝達経路を絞り込む。これらの戦略により、リチウムの作用機序を脂質代謝の観点から明らかにする。同脂質代謝物や同脂質代謝経路を活性化する薬物を躁病モデルマウス並びに脂質代謝酵素欠損マウスに投与し、血球細胞動態や神経活動、情動変容に与える影響を調べる。これらの戦略により、リチウムに代わる双極性障害治療薬の創薬シーズ確立を試みる。 さらに、脂質代謝物の前駆体であるオメガ3脂肪酸の情動変容に対する影響を調べるため、オメガ3脂肪酸高含有餌を与えたマウスの情動変容や上記脳領域での神経活動及び神経形態の変化を調べる。これにより、オメガ 3 脂肪酸が炎症を制御し脳に作用する機序を解明する。
|
Report
(1 results)
Research Products
(2 results)