Project/Area Number |
23KJ1578
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 45020:Evolutionary biology-related
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
富永 貴哉 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 研究員
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥3,900,000 (Direct Cost: ¥3,000,000、Indirect Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
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Keywords | 寄生植物 / 進化 / 免疫応答 |
Outline of Research at the Start |
自然界には、生存に必要な養分を他の植物や菌類から奪う植物が存在する。こうした従属栄養植物の生態や進化過程は多くの研究者を魅了してきたが、その全貌は謎に包まれている。興味深いことに、従属栄養植物は宿主への依存度が高まるにつれ、非自己を認識・排除する免疫機能に関わる遺伝子の数が減少する進化を経る。このことから、従属栄養植物は非自己である宿主に効率的に寄生するために自身の免疫機能を縮小させたと推測される。しかし、従属栄養植物における寄生能力と免疫機能の関連性は未知である。本研究は従属栄養植物における免疫機能に注目することで、従属栄養植物の進化過程の解明に取り組むものである。
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Outline of Annual Research Achievements |
一般的に、植物は光合成を行う独立栄養生物として知られる。一方で、自然界には生存競争を勝ち抜く術として、光合成に頼らず、自身の維管束を他の植物と連結して水や養分を略奪する従属栄養性を獲得した系統が独立に10回以上出現している。こうした寄生植物は、光合成能を保持したまま寄生を行う半寄生性から、宿主依存度がより高く、光合成能が退化した全寄生性に至ると考えられている。近年、複数の寄生植物種のゲノムが解読されており、光合成能の欠損や、従属栄養性の獲得に伴う根や葉の退化がゲノムレベルでも認められる。 興味深いことに、寄生形質を獲得したと同時に、寄生植物では免疫遺伝子の数が顕著に減少することが報告されている。固着生活を営み、常に病原体からの攻撃にさらされる植物にとって、免疫は生存に必要不可欠な機能であることから、寄生形質の獲得と免疫機能はトレードオフの関係にあると推測できる。しかしながら、免疫機能が寄生の制御に与える影響はこれまで注目されてこなかった。加えて、寄生植物系統で縮小した具体的な免疫機能や、系統間における相違点など、未解明な部分が多く残されている。 そこで本研究は比較ゲノム解析とモデル半寄生植物コシオガマを用いて、寄生形質と免疫機能がトレードオフの関係にあるのか明らかにすることを目的とした。なお、これまでの寄生植物のゲノム解析は特定の系統に絞って行われていたため、本研究では被子植物に属する3系統(ラフレシア科、ヒルガオ科、ハマウツボ科)の間で比較解析を実施した。また、ゲノムレベルでの解析だけでなく、宿主植物に寄生したコシオガマにおけるトランスクリプトーム解析も実施し、寄生における免疫遺伝子の制御を発現レベルでも解析した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
寄生形質を獲得した3つの被子植物系統(ラフレシア科、ヒルガオ科、ハマウツボ科)と、それらと同じ科、または目に属する独立栄養植物を含む15種類の植物間で比較解析を行った。また、ハマウツボ科に関しては、独立栄養、半寄生、全寄生の全ての進化段階を示す種を解析に加えた。その結果、免疫機能に関わる遺伝子のコピー数が寄生植物間で有意に減少する共通点を見出せた。さらに、縮小した免疫機能を具体的に明らかにするため、系統樹上でコピー数が増減した遺伝子ファミリーを特定するCAFEを用いた。この解析から、病原体の感染を認識し、細胞死を伴う強力な防御反応を誘導する免疫受容体NLR(nucleotide-binding domain and leucine-rich repeat-containing)のコピー数が寄生植物系統間で目立って減少していることがわかった。なお、半寄生植物であるコシオガマは近縁な独立栄養植物種と同程度のNLRコピー数を示したが、トランスクリプトーム解析の結果から、NLRの一部は寄生特異的に発現量が顕著に減少することを確認できた。つまり、寄生形質の発現において、NLRの機能はゲノムレベルだけでなく発現レベルでも抑制されていると示唆される。以上の成果から、本研究課題の進捗状況はおおむね順調であると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
現時点において、免疫受容体NLRのコピー数が寄生形質の獲得に伴い減少していることを明らかにできた。しかし、NLRはN末端側のアミノ酸配列をはじめ、生理的な機能やコピー数が近縁種間でも多様性に富む。さらに、NLRは病原体因子を直接認識するセンサーNLRと、免疫応答を活性化するヘルパーNLRに大別される。そこで、寄生植物で喪失したNLRの機能を詳細に特定するため、アミノ酸配列をもとにNLRの機能を推定する解析ツールを利用し、寄生植物で保存されたNLRの分類を行う。なお、この解析は外部の研究者との共同研究を計画中である。また、NLRを介した免疫応答が寄生に与える影響を明らかにするため、モデル半寄生植物コシオガマの毛状根形質転換系を利用し、NLRを過剰発現させたコシオガマが正常に宿主植物に寄生できるのか観察する。
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