戦前日本の性風俗産業の思想史的展開-家制度と自由恋愛論の視点から-
Project/Area Number |
23KJ1655
|
Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 03020:Japanese history-related
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
寺澤 優 広島大学, 人間社会科学研究科, 特別研究員(RPD)
|
Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2026-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
|
Budget Amount *help |
¥3,900,000 (Direct Cost: ¥3,000,000、Indirect Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
|
Keywords | 公娼制度 / 風俗規制 / 丸山鶴吉 / 山根正次 / 松井茂 / 性売買 / 売春 |
Outline of Research at the Start |
本研究は近代の売春史研究において、私娼を含めた売買春管理の思想的方向性を家制度との関連で検討する。近代の売買春に関する諸研究は公娼制度と国民の衛生管理を主軸として議論してきた。一方で、天皇制と並んで戦前日本の私的世界を規定していたといわれる家制度の影響を看過し、過小評価してきた。本研究では売買春取締政策において実務を担った風俗警察・官僚らが衛生よりも風紀を主軸とした取締を実施していたことを重要視し、その内実を検討するものである。具体的には戦前期の売春産業で実態としてどのような行動が行われ、これらを直接取締に関わった警察官吏がどのようにみていたのかを、家制度とその思想的影響から分析していく。
|
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、戦前日本における国家と性風俗・売買春管理の実態と特質を明らかにし、自由恋愛思想や風俗警察、家制度の影響を論じることで、性風俗産業の展開と管理の思想的意義を探求する。課題Aでは自由恋愛と擬似恋愛の関係、課題Bでは国家の家制度と性風俗産業の関係、課題Cでは警察高等官僚の性風俗取締りの思想と実態について検討した。今年度は当初の計画を前後させ、課題Cの警察官僚史料の収集と分析検討を主たる課題とした。また課題AやCに大きく関わる私娼街のあり方や実態について、有用かつ貴重な史料群を入手し得たため、この史料の解読を進めることで、公娼制度の運営と同時に私娼街がどのように管理されていたのかを解明することに努めた。
主な対象は丸山鶴吉、松井茂、山根正次である。内務省警察医長の山根は軍隊衛生や国民体育の観点から、公娼制度の存置を主導し、1910年以降私娼も含めた売買春管理体制を模索。警視庁第2部長の松井は法学博士として公娼制度に懐疑的でありながら一時的に容認し、近代公娼制度の根幹である1900年の内務省令制定に携わる。警視総監の丸山は風俗警察の観点から私娼黙認体制からの脱却を図り、公娼ー私娼禁圧体制への回帰を目指した。この結果、1910年代中葉から20年代前半にかけて東京では私娼弾圧が実施される。つまり、丸山の目的は結果的に中座したが、その施策や思想の背景には、風俗統制論が近代家族制度と密接に結びつき、人々の自由な性を禁忌とする考えがあった。しかし、1930年代中葉には丸山の失脚等も影響し、私娼弾圧は緩和され、昭和恐慌で困窮した農家からの身売りを背景に私娼が急増していく。こうして1910年までに構築された公娼ー私娼黙認体制に回帰していくこととなった。 以上の内容については、成果の一部を学術誌の論文・史料紹介として執筆・入稿済みで、2024年度中には公開される予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画順序の変更はあるものの、大きな変更はなく、史料の収集・解読が順調に進んでいる。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の研究計画は、主に課題Aに取り組む。特に今年度科学研究費を使って入手した私娼街に関する史料群を活用し、私娼街や遊廓(公娼)で展開されていた「擬似恋愛」や性売買の実態、経営のあり方とそれに対する、統制のあり方を明らかにすることに努める。また研究計画書で示した通り、私娼街に通う遊客の背景にある思想や需要のあり方をジェンダーの視点を踏まえて考察する。
|
Report
(1 results)
Research Products
(2 results)