Project/Area Number |
23KJ1660
|
Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 42020:Veterinary medical science-related
|
Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
稲永 咲耶 山口大学, 共同獣医学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2026-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
|
Budget Amount *help |
¥2,600,000 (Direct Cost: ¥2,600,000)
Fiscal Year 2025: ¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
Fiscal Year 2024: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2023: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
|
Keywords | c-kit遺伝子変異 / KITタンパク / 細胞内局在 |
Outline of Research at the Start |
犬の皮膚肥満細胞腫(MCT)は、皮膚腫瘍の2割を占める悪性腫瘍であり、受容体型チロシンキナーゼであるKITタンパクの変異がその病態に関与している。本研究では、犬のMCTにおいてKITタンパクの細胞内局在の違いが腫瘍細胞の増殖・生存に関与しているという仮説を立て、遺伝子変異などKIT自体の異常が局在変化を起こすのか、あるいは細胞内環境によってKIT局在が変化するのかを明らかにし、KITの細胞内局在メカニズムと腫瘍細胞の増殖・生存との関係を明らかにする。また、その結果をもとに、KITの局在を制御する方法を探索し、新規治療法としての可能性を探る。
|
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではイヌの皮膚肥満細胞腫(MCT)におけるKITタンパクの細胞内局在異常に関して、それを決定する因子を特定し新規治療法の提案へとつなげることを目的としている。局在に影響を及ぼす因子の検討に際し、本年度ではKITタンパクをコードするc-kit遺伝子の変異に関して研究を進めた。 MCT症例における免疫組織化学染色により、本研究では各KIT局在パターン(細胞膜、細胞質内の一部、細胞質全体の3パターン)を示す症例サンプルを確保し、これらの病理組織より抽出した腫瘍組織由来DNAを用いてc-kit遺伝子変異との関連性を調べた。アガロースゲル電気泳動で遺伝子増幅を確認したところ、症例サンプル27例のうち、16例でうまくPCRが動いていない結果となった。今回用いた病理組織はホルマリン固定を経ているものであるため、ホルマリンによるDNA断片化の影響を受けていると考えられた。そのため研究計画の通りにホルマリン固定組織で変異とKIT局在の関連を調べることは難しいと考えられ、MCT症例を前向きに収集し、新鮮腫瘍組織由来のDNAを用いて変異との関連性を調べる方針に転換している。 症例データの解析と同時並行で既に報告されているc-kit遺伝子変異とKIT局在の関係を調べた。IL-3依存性増殖を示すBa/F3細胞株に対しc-kit遺伝子の野生型、S479I変異、N508I変異、エクソン8のITD変異、556-558の挿入変異の5パターンのレトロウイルス発現ベクターを用いて導入し、フローサイトメトリーにてKITの膜発現量の変化を調べた。その結果、N508I変異では膜発現量が増加し、S479I変異では膜発現量が低下する結果が得られた。この結果はIL-3依存性DA-1細胞株を用いた実験でも同様に得られたことから、S479I変異がKITの細胞内局在異常と関係している可能性が考えられた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画では症例のホルマリン固定病理組織より腫瘍組織由来DNAを抽出し、c-kit遺伝子変異を次世代シークエンスによって全エクソンにわたり網羅的に調べることを予定していた。しかし、ホルマリン固定組織の特性上DNA断片化の影響が排除できず、27症例中16症例でc-kit遺伝子全エクソンの増幅が不完全であった。アガロースゲル電気泳動で増幅を確認できた9例のうち2例で凍結腫瘍組織を保有していたことから、ホルマリン固定組織由来DNAと凍結組織由来DNAの両方を用いて次世代シークエンスを実施したところ、同じ症例でありながら異なる結果が得られた。このことから、アガロースゲル電気泳動で一見増幅できていてもホルマリンによるDNA傷害の影響を否定できないと考えられた。よって当初の計画を変更し、時間はかかるものの肥満細胞腫の症例サンプルを前向きに収集し、変異をより正確に検出できるようホルマリンの影響を排除した遺伝子解析を再計画している。 細胞株を用いた変異遺伝子の導入実験では、実績の概要で述べた通りKIT局在と遺伝子変異の関連性を示唆する結果が得られたが、本来は症例データから得られた結果をもとに進める予定であったため、現時点ではこの変異(S479I)が実際の症例においてKITの細胞内局在と関係している裏付けをとれていない状況である。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究計画の遅れの根本的な原因となっているのは、症例データの変異解析である。先にも述べたように、症例サンプルの前向きな収集へ計画を変更しているが、時間がかかってしまうデメリットがある。この問題を少しでも解決するため、症例収集を行う施設を増やすことを考えている。これまでは山口大学附属動物医療センターに来院した症例のみでサンプル数を確保しようとしていたが、それに加えて埼玉県の日本小動物医療センター附属小動物がんセンターに協力をしていただく予定である。これにより関東圏の肥満細胞腫症例を確保できることから、サンプル数の収集ペースの大きな増加が見込めると予想される。 また、細胞株の実験に関しては、症例データを踏まえた上で研究成果の発表に進めればと考えているが、今後のサンプル確保のペース次第では、マウスを用いた代替案を検討している。マウスに特定のc-kit遺伝子変異を導入した細胞株を移植し、マウス生体内で定着・増殖したのちに病理組織として採材しKITタンパクの局在を判断できないかと考えている。
|