Project/Area Number |
23KJ1667
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 45020:Evolutionary biology-related
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
山田 寛之 愛媛大学, 理工学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥3,900,000 (Direct Cost: ¥3,000,000、Indirect Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
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Keywords | 空間的選別 / 流下 / コイ科魚類 / 遺伝子流動 / 分散 / 増水 |
Outline of Research at the Start |
河川生物の移動傾向は個体の性質に基づいて変化することがある。例えば流れに脆弱な個体は、より頻繁に下流へ流され移動(流下)するだろう。また遊泳力の高い個体は、より頻繁に流れに逆らい上流へ移動(遡上)できるかもしれない。このような非ランダムな移動分散は、上流域から流れに脆弱な個体を選択的に除去したり、遡上力の高い個体を選択的に導入する進化圧となる可能性がある。近年、移動分散に基づく進化圧は「空間的選別」と新たに分類され、注目を集めている。本計画では「流下による空間的選別」を棚田系で研究し、その普遍性を解明すること、及び新しいメカニズム「遡上による空間的選別」を渓流系で検証することを試みる。
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Outline of Annual Research Achievements |
2023年の4月までに、高知県本山町周辺および愛媛県松山市周辺で、魚類の生息する棚田細流を探索した。その結果、高知では吉野川水系の4支流、愛媛では立岩川と蒼社川で研究に適した細流を見つけた。そしてそれらの全地点にタカハヤ(コイ科魚類)が生息しており、本種を研究対象種にすることに決めた。本年度はタカハヤを対象に大きく分けて以下の3つの調査・実験を実施した。 高知県の多雨な棚田細流に生息するタカハヤの形態比較(5~11月):調査地選定の際、尾の形態が特徴的な集団を発見した。魚類の尾部は遊泳力に直結する部分なので、流下による空間的選別の進化産物であると予想された。そこで、吉野川水系の4支流で棚田集団と本流集団の間で形態比較を実施した。その結果、棚田集団は本流集団よりも遊泳に適した尾部形態を持つことが示唆された(複数の学会で発表)。 流下の空間的選別を検証する野外実験(6~7月):棚田集団の特徴と流下による空間的選別の関連を調べるために、増水前に堰堤の上流にタカハヤを放流し、4日後に回収する野外実験を実施した。この実験は愛媛県の立岩川の棚田細流で実施した。その結果、高知県の棚田集団の特徴が流下回避に役立つことを示唆する結果が得られた(複数の学会で発表)。 タカハヤ稚魚の行動比較(12~1月):少雨な愛媛県の蒼社川に生息するタカハヤを対象に、稚魚の流下傾向を比較する水槽実験を実施した。その結果、堰堤などによって狭い空間に隔離された集団の稚魚は、広い空間に生息する稚魚よりも水槽内の段差を流下しにくいこと、流下までの時間が長いことが示唆された。現在は更なる行動データの定量化と統計解析手法の検討中である(この成果は未発表)。 また本年度は、上記の調査・実験と同時並行で、「河川生物の流下によっても空間的選別の進化圧が生じる可能性」を複数の国内・国際学会および国際誌の論文で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究は全く土地勘のない四国での調査地選定、対象種選定から始まった。幸運にも、複数の調査に適した棚田の細流とそこに生息するタカハヤの集団を早い段階で見つけることができた。また、予備調査の段階で特徴的な尾部形態を持つタカハヤ集団を見つけることができ、調査前の段階で、流下による空間的選別の作用対象をある程度絞り込むことができた。さらに、受入研究室は野外調査を主力としており、私の調査・実験に適した河川に関する情報提供を受けることができた。そのため、流下による空間的選別を調べるための野外実験の実施地を、比較的早い段階(2023年5月)で定めることができた。その結果、2023年度の梅雨のシーズンに野外実験を間に合わせることができ、数回の試行錯誤を経て、増水時の流下による空間的選別を定量化することができた。
また、2023年11月に愛媛県蒼社川水系で、多数の調査適地を見つけることができた。そして、12月~1月にタカハヤの稚魚を対象とした水槽内での流下行動の個体群間比較を実施することができた。私は従来サケ科魚類の稚魚を対象としてきたが、タカハヤはそれらよりも格段にサンプリングしやすく、扱いが容易であったため、予想以上に短期間で多数の集団を行動観察することができた。以上の背景から、当初の予定よりも順調に研究計画を進めることができていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
高知県の棚田に生息するタカハヤの形態データと、愛媛県蒼社川のタカハヤの稚魚の行動データが予想以上のペースでそろいつつある。2024年度はこれらの成果の学会発表・論文化を優先的に取り組もうと考えている。また、2023年度の調査過程で、久万高原町などの棚田にはタカハヤではなくカワムツ(コイ科魚類)が生息していることが分かった。昨年度タカハヤで確立した研究手法はカワムツの成魚・稚魚にも適用できると見込んでいる。さらに、タカハヤとは異なり、カワムツはオスで臀ビレが肥大化する性的二型があり、これが増水時の流下回避パフォーマンスに影響する可能性が想定される。性的形質に空間的選別が作用する事例はほとんど知られておらず、興味深いと考えている。この背景から、2024年度は、カワムツを対象とした類似の研究にも取り組み始めようと考えている。
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