Project/Area Number |
23KJ1692
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 24010:Aerospace engineering-related
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
平岩 尚樹 九州大学, 工学府, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥1,800,000 (Direct Cost: ¥1,800,000)
Fiscal Year 2024: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2023: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
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Keywords | 軌道設計 / 低エネルギー軌道 / カオス / ポアンカレマップ / lobe dynamics |
Outline of Research at the Start |
本研究では、より少ない燃料で効率よく宇宙探査ミッションを行えるようにするため、宇宙機の力学系のカオス的な軌道を利用した軌道設計・制御手法を提案し、その有用性を示す。力学系理論にもとづいてカオス領域における力学的構造を明らかにし、その構造を用いた軌道設計手法を新たに提案する。さらに、提案手法を軌道制御へと応用して、提案した軌道設計手法が有用であることを明確にする。
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Outline of Annual Research Achievements |
複数天体の重力を考える多体問題においてその力学系の性質の理解が進んでおらず、燃料消費のよい効率的な軌道設計法が確立されていない。そこで、宇宙機の力学系のカオス領域における力学的構造を明らかにし、その構造を用いた軌道設計法を新たに構築した。このことにより、より少ない燃料で効率よく宇宙探査ミッションを行い、ミッションの成果を最大化することに繋がる。 本年度では、まず、応用数学の力学系理論にもとづいて、ポアンカレマップという手法により力学系の特徴を抽出した。そのマップ上では、周期軌道などの規則的な軌道が存在する領域と、将来的な挙動の予想が難しいカオス的な軌道が存在する領域を捉えることができる。このカオス的な領域における遷移構造をlobe dynamicsという理論にもとづき明らかにすることでうまくカオス的な軌道を利用できるようになるという着想から、本研究計画を進めた。このアイデアを形にするため、はじめは標準写像という単純な力学系を用いてlobe dynamicsを用いた軌道設計手法の構想をまとめた。その後、地球-月系の三体問題という宇宙機の力学系において、地球の低軌道から月の低軌道までを少ない燃料で遷移する方法を提案することができた。このようにして、lobe dynamicsを利用してカオス的な軌道を繋ぎ合わせる新たな軌道設計手法を構築できた。 さらに、次のステップとして、考案した手法を3次元空間での軌道設計手法へと拡張するため、現在研究を進めている。ポアンカレマップを用いた手法は2次元空間にしか対応できていないため、本研究で構築した手法も2次元空間における軌道設計手法に限られていた。そこで、3次元空間の準周期軌道という構造やダイナミクスについて詳しいコロラド大学のScheeres教授の協力のもと、3次元への拡張に取り組んでいる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
1年目では、地球-月系の三体問題における(2次元空間での)軌道設計手法を新たに構築し、その有用性を評価することを目標としていた。その結果、標準写像という単純なモデルから地球-月系の三体問題へと徐々に問題の複雑さを上げることで、うまくカオス領域の力学的構造を用いた軌道設計手法を構築することができた。カオス軌道を積極的に取り入れた軌道を数値的に探索することは一般に困難であるため、本研究手法を実際のミッション設計に応用できれば、ミッションにおける遷移軌道の選択肢を増やすことに繋がる。 このように1年目の目標を年度の途中で達成できたことから、さらに大きな研究成果を得るため、構築した軌道設計手法の3次元空間への拡張にも取り組んだ。3次元への拡張を行うことで、研究成果がさらに一般の宇宙機の軌道設計に応用できるようになり有用である。そこで、指導教官を通して3次元空間の準周期軌道という構造やダイナミクスについて詳しいコロラド大学のScheeres教授にコンタクトをとり、共同研究として3次元へ拡張するための方法を探っている。 以上より、当初予定していた研究項目に加え、当初計画には無かったが重要な問題である3次元空間における軌道設計への拡張にも取り組むことができているため、本研究は当初の計画以上に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、引き続き構築した軌道設計手法の3次元空間への拡張に取り組み、本研究計画の成果を最大化できるよう努める。本研究のような、2次元空間における軌道設計では、2次元のポアンカレマップを用いることになるが、3次元空間になると4次元のポアンカレマップの解析が必要となる。そこで、現在は中間的な問題として似た特徴のある力学系の3次元のポアンカレマップの解析に取り組んでいる。ここで得た解析手法や計算ツールを用いて4次元のポアンカレマップの解析に取り組むことで、無理なく3次元空間における軌道設計手法へと拡張できると考えている。 その後、当初の計画にあった、提案した軌道設計手法の軌道制御への応用に取り組む。この時点では、2次元と3次元空間の両方のカオス領域の力学的構造について解析し軌道設計手法を構築できている予定のため,この両方に対して軌道制御手法を適用し考察を行う。具体的には、2次元と3次元の両方の場合について凸最適化という効率の良い軌道制御手法を適用し、実際の燃料消費や遷移時間、収束性などの観点から有用な軌道が得られていることを示し、提案した軌道設計手法が有用であると実証する。
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