Project/Area Number |
23KJ1701
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 29010:Applied physical properties-related
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
飯森 陸 九州大学, 理学府, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,800,000 (Direct Cost: ¥2,800,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,400,000 (Direct Cost: ¥1,400,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,400,000 (Direct Cost: ¥1,400,000)
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Keywords | 圧力効果 / スピントロニクス / スピン流 / 界面ラシュバ効果 / スピンホール効果 / 界面磁気相互作用 / 原子層物質 |
Outline of Research at the Start |
異種物質界面におけるスピン軌道相互作用に起因した電流とスピン流の相互変換現象は高効率な磁化反転などへの応用が期待されている一方で、界面の原子間距離に極めて敏感であり、圧力印加により大きな変化を誘引できる可能性がある。そこで、申請者が確立した高圧力下におけるスピン流物性の評価手法を界面ラシュバ効果によるスピン流-電流変換現象に適用することで、変換効率の飛躍的向上のための設計指針の確立を目指す。更にその知見をもとに、界面圧力による巨大スピン流の生成や、磁気スキルミオンの生成・消滅などの革新的な界面スピン物性の圧力制御の実現を目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
本年度は以下の2つの項目の研究を実施した。 (1)強磁性体/重金属界面におけるスピン流物性の圧力効果。 Pt/NiFe二層膜系において電流-スピン流変換現象に起因する非相反伝導の圧力依存性の評価を試みた。ブリッジ構造のデバイスを作製することで、直流電流で非相反的なスピン信号を効果的に検出することに成功した。結果として、約2 GPaまでの圧力印可により10 %程度の信号強度の増加を確認した。このような特性は、以前行ったPt/CoFeB二層膜系における動的スピン流注入実験においても観測されているが、本構造を用いることで電流-スピン流変換効率を定量的に導出することができた。更に、電子状態計算にもとづきスピン伝導率の評価を行い実験結果と比較することで、界面交換相互作用の増強を定量的に示した。本年度、当該項目に関連して、学術論文を出版することができた。また、巨大なラシュバ効果が報告されているBi/Ag界面と強磁性金属を直接接触させた系において、動的スピン注入実験も行った。その結果、圧力印可に伴い、スピン流-電流変換スペクトルの強度が変調されたが、現在、強磁性層の電流磁気効果や磁気熱電効果などの物性変化との切り分けを進めている。 (2)ファンデルワールス強磁性体デバイスに対する圧力効果。 本年度は、ファンデルワールス(vdW)強磁性体の圧力効果に関する研究も行った。前年度までに確立した、高圧力下におけるスピン流物性評価手法を用いて、ナノスケールのデバイスに加工したvdW強磁性体Fe3GaTe2の磁気特性・スピン輸送特性を評価した。その結果、vdW力で弱く結合した層間の磁気相互作用が高圧力で著しく変調されることがわかった。さらに、加圧による層間距離の変化に起因して、電子状態も大きく変調され、異常ホール効果やスピンホール効果の特性も大きく向上した。現在、当該成果をもとに学術論文を投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、本年度予定していた「ラシュバ系におけるスピン流-電流変換現象の圧力依存性の評価」に関して、Ag/Biラシュバ界面を有するデバイスの作製および高圧力下における動的スピン注入実験を行うことができた。しかし、本年度当初に計画していた、磁気抵抗測定による界面ラシュバ型スピン軌道相互作用の圧力依存性をいまだ評価できていない。理由としては、超伝導マグネットの新規立ち上げに伴い、電源制御系にトラブルが生じ、本年度中に測定システムの立ち上げが完了しなかったためである。しかし、本年度中に専用インサートの作製および温調機能のテストまでは実施したので、残る電源系の構成部品が届き次第、速やかに測定を行う予定である。 一方で、当初研究計画にはなかった、ファンデルワールス強磁性体を用いた研究を新たに推進することができ、学術論文を投稿することができた。本成果は、最終年度に予定していた、界面磁気相互作用の変調による磁気スキルミオンの圧力制御に関して重要な役割を果たすと考えられる。 以上のように、本年度予定した項目に関して一定の成果を得たことに加えて、当初予定になかった成果も得られているため、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
圧力下において界面ラシュバ効果の起源となるスピン軌道相互作用の強度及び異方性を詳細に評価することを目指す。次年度前半に低温・高圧環境下における磁気抵抗測定システムの構築を早急に完了させ、磁気抵抗効果によるスピン軌道相互作用の定量評価を進める。前年度ブッリジ構造デバイスを用いてスピンホール効果に起因する信号の検出を行ったが、この知見を活かして、非磁性金属/重金属ラシュバ界面のみで構成される二層膜をブッリジ構造デバイスに加工し、低温環境にて縦方向の電気伝導度および非相反電気伝導を同時に評価したいと考えている。このブリッジ構造を用いて、界面ラシュバ効果に起因したスピン緩和による弱反局在信号と、界面スピン偏極方向を反映した非相反伝導を同時に評価することができないか検討する。更に、本年度の研究において、隣接する強磁性層に起因する磁気熱電効果や電流磁気効果も問題になったため、次年度前半に、非磁性金属/重金属ラシュバ界面と強磁性体を切り分けた非局所スピンバルブ構造にて、ラシュバ界面の圧力依存性を評価する。 一方で、非磁性重金属/ファンデルワールス強磁性体接合に関しても、これまでの研究で得られた知見を活かし、動的スピン注入効果の圧力依存性を評価しスピン注入効率等の各種パラメータの向上を目指していく。すでに常圧下ではあるが非磁性重金属(Pt, W)/Fe5GeTe2二層膜において動的スピン注入に起因したスピンホール信号を検出している。加えて、当該構造における圧力効果の観測に先立ち、本年度、測定系を改良し77~400 Kおよび0~1.5 GPaの複合環境下においてナノ構造の強磁性共鳴を評価することが可能となった。今後は、Pt/Fe5GeTe2二層膜における動的スピン注入効果の圧力依存性に関して系統的な実験を行って、圧力印可による界面スピン物性の制御手法を探求する。
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