Project/Area Number |
23KJ1727
|
Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 51030:Pathophysiologic neuroscience-related
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
末藤 大智 九州大学, 薬学府, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2026-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
|
Budget Amount *help |
¥3,000,000 (Direct Cost: ¥3,000,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
|
Keywords | 神経障害性アロディニア / 脊髄後角神経 / アストロサイト / Aβ線維 |
Outline of Research at the Start |
神経障害性疼痛は、糖尿病やがんなどに伴う神経の損傷や変性により発症する慢性疼痛であり、肌に触れるような軽い刺激で痛みが誘発されるアロディニアを主症状とする。既存の鎮痛薬に抵抗性を示す場合が多く、多くの患者が有効な治療法もないまま耐え難い痛みに苦しんでいる。 本研究では、脊髄における神経―グリア細胞の相互作用に着目し、アロディニアに直結する神経回路の特定およびその動作異常メカニズムの解明を行う。これによりアロディニア病態の理解および画期的な治療薬の開発に繋がることが期待される。
|
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では神経障害性アロディニアに重要な脊髄後角抑制性サブセットとグリア細胞との相互作用に着目し,触覚から痛覚への変換メカニズムを明らかにする。過去に同定した脊髄後角抑制性神経サブセット(NpyP神経)が神経損傷後に活動低下していたことから,そのメカニズム解明のためアストロサイトに着目し解析した。 AAVを用いて脊髄後角アストロサイト選択的に不活性型変異体のSTAT3を発現させたラットでは,神経損傷後のNpyP神経の活動低下(静止膜電位の低下および活動電位数の減少)が抑制され,アロディニア様行動が減弱した。また,正常ラットに恒常活性化型STAT3を脊髄後角アストロサイトに発現させると,NpyP神経の活動低下およびアロディニア様行動を誘発した。さらに,この変化に関わるアストロサイト由来因子としてマトリックスメタロプロテアーゼ2(MMP2)に注目し,AAVを用いたCRISPR-Cas9システムでMMP2を欠損させたところ,NpyP神経の機能が正常化し,アロディニア様行動が抑制されることを見いだした。加えて,触覚から痛覚への誤変換に重要なアストロサイトのサブセットとしてHes5Pアストロサイトを同定した(Sueto et al., J Pharmacol Sci., 2024)。 また,過去の結果(Tashima et al., PNAS, 2021; Ishibashi et al., Front Mol Neurosci, 2022)を踏まえ,NpyP神経とPdynP神経の関係性について解析した。NpyP神経を除去することにより生じるAβ線維由来アロディニアが,PdynP神経の同時除去により抑制されることを明らかにした。さらに,電気生理学的および免疫組織学的な解析にて,NpyP神経はPdynP神経へのAβ線維からの興奮性入力を抑制していることを明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の実施項目として計画した内容を予定通り遂行し,その中で複数の成果を得ることができた。 神経損傷後のNpyP神経における活動低下およびアロディニア様行動にアストロサイトが関与することを明らかにした。さらに,その変化に重要なアストロサイト由来因子としてMMP2を特定した。加えて,触から痛への誤変換に重要な脊髄後角アストロサイトのサブセットとしてHes5Pアストロサイトを同定した。また,Aβ線維由来アロディニアに重要な脊髄後角神経サブセット(NpyP神経とPdynP神経)が形成する神経回路を明らかにした。 これらの成果は,Aβ線維由来アロディニアに重要な脊髄後角神経回路異常メカニズムの解明や新規治療薬開発に繋がることが期待される。
|
Strategy for Future Research Activity |
交付申請書記載の通り順次研究を進め,神経障害性アロディニアの発症メカニズム解明を目指す。 アストロサイト由来のMMP2がどのようなメカニズムでNpyP神経の活動変化をもたらすのか,詳細な分子機構を明らかにする。神経損傷後には,ミクログリアとNpyP神経の接触数が増加することから,ミクログリアとNpyP神経の相互作用とアロディニアへの関与についても検討する。 また,Aβ線維からの信号を痛覚伝達神経へと伝達する脊髄後角興奮性神経の探索を行う。
|