酵母を用いた高効率ナイロン分解系の構築と微生物におけるナイロン代謝機構の解明
Project/Area Number |
23KJ1780
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 38020:Applied microbiology-related
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
飯笹 さやか 鹿児島大学, 理工学研究科, 特別研究員(RPD)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥3,900,000 (Direct Cost: ¥3,000,000、Indirect Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
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Keywords | 加水分解酵素 / ナイロン分解 / Arthrobacter / Leucobacter / 6-アミノヘキサン酸 / 6-ナイロン |
Outline of Research at the Start |
ナイロンの年間生産量は約400万トンに達する一方、使用済みナイロン製品は85%以上が焼却処分されている。ナイロンを再生利用可能な6-アミノカプロン酸(Ahx)モノマーに戻すリサイクル系は未だ構築されていない。ナイロン代謝細菌Arthrobacter sp. KI72株は、加水分解酵素NylによりナイロンをAhxモノマーへと分解する。本研究では、ナイロン分解で重要なNylBとNylCを出芽酵母で発現・培地中に分泌させることで、ワンステップで高効率なナイロン分解系の構築を目指す。更に、微生物におけるナイロン代謝機構の解明を目標に、新規Nylの探索と機能解析、ナイロン代謝関連遺伝子の同定を試みる。
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Outline of Annual Research Achievements |
現在、ナイロン加水分解酵素NylCは、これまでに数種類の菌からのみ同定されている。そこで、今年度はまず、新規NylCの探索と機能解明を試みた。最も研究が進んでいるArthrobacter sp. KI72株由来NylC(ArNylC)とアミノ酸配列相同性を示す他の微生物由来NylCを公開データベースから探索した。その結果、難培養放線菌Leucobacter triazinivoransのゲノム中に、ArNylCと92%のアミノ酸配列相同性を示すタンパク質LtNylCが存在することが分かった。 LtNylCをクローニングし、大腸菌による発現・精製を試みた(Lt-WT)。また、これまでの研究で、ArNylCの耐熱性向上に関わる4つのアミノ酸変異が特定されている(Ar-GYAQ、Tm = 85℃)。そこで、同じアミノ酸変異を導入したLt-GYAも作成した。6-ナイロンの構成ユニットである6-アミノヘキサン酸(Ahx)の環状オリゴマー混合物(nylon-oligomer mixture: NOM)を用いて、得られた組換えタンパク質のナイロン分解活性を確認した。その結果、Lt-WT(Tm = 52℃)のNOM分解活性はAr-GYAQに比べてかなり低いことが分かった。Lt-GYAは、耐熱温度が大きく上昇したが(Tm = 86℃)、NOM分解活性は低いままであった。 そこで、Ar-GYAQのアミノ酸配列を参考に、Lt-GYAのいくつかのアミノ酸を更に変異させた。その結果、3つのアミノ酸変異によりAr-GYAQと同程度のNOMと6ナイロンポリマーの分解活性の付与に成功した。これまで、NylCの基質認識に関わるアミノ酸は特定されていない。得られた成果は、より高活性・高効率なナイロン分解酵素の開発につながる重要な発見である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、微生物由来であるNyl酵素のより深い理解と、Nylによる高効率なナイロン分解系の構築を目標にしている。目標達成に向けて、NylBの耐熱化、新規Nylの探索、RNAシーケンスによるNyl以外のナイロン代謝関連遺伝子の同定という3つの異なった観点からの実験を計画している。 「NylB耐熱化」の予備実験として、現在保有しているArthrobacter sp. KI72株由来NylB(ArNylB)の耐熱温度や、37℃条件下での活性保持時間を確認した。その結果、ArNylCに比べて低い耐熱温度を示す一方、37℃条件下で予想外に長期間安定的に活性を保持できることが分かった。一方、同時進行で取り組んできた「新規Nylの探索」により、難培養放線菌L. triazinivoransからの新規NylC(LtNylC)の同定に成功した。また、LtNylCについて、既知ArNylCと高いアミノ酸配列相同性を示すがナイロン分解がかなり低い、という特徴を見出した。このLtNylCに対して、アミノ酸変異を導入していくというシンプルな手法により、ナイロン認識に関わるアミノ酸を短期間で特定した。既知ArNylCについては、その高いナイロン分解活性や耐熱化など研究が進展する一方、ナイロン認識に関わるアミノ酸はこれまで不明であった。 本年度に得られた研究成果は、より高活性・高効率なナイロン分解酵素の開発につながる重要な発見であり、目標とするNyl酵素のより深い理解とNylによる高効率なナイロン分解系の構築に向けた一助になると期待される。これらの点から、本年度の進捗状況を当該評価に値すると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、まず、初年度に得られたLtNylCによる研究成果を発展させることに重点を置く。アミノ酸変異によりナイロン分解を保持したLt-GYAを用いて、66-ナイロンポリマーやAhxダイマーなど、他の種類へのナイロンへの分解能を検討する。また、各アミノ酸変異が及ぼす耐熱温度への影響もより詳細に調べる。更に、ナイロン認識における変異アミノ酸の重要性を証明するため、Ar-GYAQにおける当該箇所をLtNylC様に変異させ、ナイロン分解活性が低下・消失するかどうかを確認する。また、各アミノ酸変異とナイロン分子の関係について、タンパク質の構造的視点から理解するために、LtNylCや各変異体の結晶化構造解析を予定している。系統樹を用いた進化的な観点からの議論も加え、これまでの研究成果を論文にまとめる予定である。 更に、ナイロン認識に関わるアミノ酸箇所に、全く別のアミノ酸を導入し、ナイロン分解活性が変化するかどうかを検討する。ArNylCは、直鎖または環状の3量体以上のAhxオリゴマーに対してエンド型の加水分解活性を示す酵素であり、ArNylC単一ではナイロン分子をモノマー化することができない(完全モノマー化にはArNylB処理が必要)。アミノ酸変異導入により、ArNylCのナイロン認識・分解機構を改良し、ArNylC単一でのナイロンモノマー化を検討する。 当初の研究計画では、2024年度は耐熱化ArNylBを用いた高効率ナイロン分解系の構築を予定していた。しかし、LtNylCから得られた一連の研究成果を最大限に活かすことが目標達成への最短ルートだと考え、上記の計画を優先し迅速に遂行し、論文を投稿する。また、もう一つの実験計画である「RNAシーケンスによるNyl以外のナイロン代謝関連遺伝子の同定」も、上記の研究と共に検討・実施していく。
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Report
(1 results)
Research Products
(2 results)