日本国内のアオサンゴ種系統群における環境適応性進化と将来的な応答予測研究
Project/Area Number |
23KJ1782
|
Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 45040:Ecology and environment-related
|
Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
谷中 絢貴 琉球大学, 海洋自然科学科 生物系(理学部), 特別研究員(PD)
|
Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2026-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
|
Budget Amount *help |
¥4,420,000 (Direct Cost: ¥3,400,000、Indirect Cost: ¥1,020,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
|
Keywords | サンゴ礁生態系 / 気候変動 / 生理応答 / 適応進化 / 種分化 |
Outline of Research at the Start |
日本国内にみられるアオサンゴ属の特徴的な種系統分化体系やその高い環境適応能力を有する可能性に着目し、まず、異なる環境に適応分化した種系統群間の水温やpHなどの環境変動に対する生理学的応答やその分子生物学的機構の解明に迫る。さらに、過去に温暖化や酸性化を経験した可能性のある化石現存種を用いた高水温・高CO2環境に対する直接的な実験証拠から、現在よりもずっと温暖且つ酸性化した海洋環境が広がっていた約2億年前のジュラ紀に誕生して以降“生きる化石”として知られるアオサンゴ属種系統群について、海洋温暖化・酸性化に対して過去どのように適応し多様化したのか、また将来的な新たな適応進化の可能性を推察する。
|
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、過去から現在そして将来予測される環境変動に対して、サンゴ礁生物がどのような応答を示すのか、またこれら環境変動に対してどのように適応進化してきたのかを解明しようとする極めて野心的な内容となっている。特に本研究で着目しているアオサンゴは一属一種の“生きた化石種”として知られ、八放サンゴ属でありながら唯一炭酸カルシウム骨格を形成することから進化生態学的にも極めてユニークなサンゴであるが、その生物学的な特性はこれまでほとんど研究されておらず基礎的な知見が不足しているサンゴ種である。このような中、新たな集団遺伝学的解析手法を用いることで本種にはいくつかの隠蔽種が存在する可能性を明らかにしてきた。さらにこれら隠蔽種は生理的な応答に違いがある可能性も分かってきた。これら成果について、初年度はシンガポールで開催された国際サンゴ礁学会(5th Asia-Pacific Coral Reef Symposium)にて口頭発表をおこなった。また生理的応答に加えて遺伝子発現による応答を評価するため本種のサンゴからのRNA抽出の手法開発などにも取り組んだ。さらにアオサンゴに加え、新たにアオサンゴと同様に気候変動に対する耐性能が高い可能性が指摘されているユビエダハマサンゴについての研究にも着手し、本種を用いてパラオにおいて高CO2高水温環境を示す特殊な湾における野外移植実験を実施するとともに、本種におけるRNA抽出の手法開発にも取り組み見事成功した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
沖縄本島および八重山海域に生息するアオサンゴ種系統群集団の地理空間分布調査およびRNA抽出・解析手法の確立までは当初の計画通りに進められ、本研究課題に関連する成果発表も行うことができた。しかしながら初年度に予定していた海洋温暖化・酸性化を想定した飼育実験は実施できていないため、次年度以降に実施する。
|
Strategy for Future Research Activity |
沖縄本島周辺および八重山海域からアオサンゴ種系統群を採集し、夏季と冬季にそれぞれ光・水温・pH環境が段階的に変化する環境制御飼育実験により種系統群ごとの最適適応環境とその生理応答と分子制御機構の差異を調べる。これらの環境に強く影響を受けるサンゴの生理代謝の指標として、光合成速度・呼吸速度・光合成活性・骨格の石灰化速度の4項目を経時的に測定し種系統群間で比較する。飼育実験前後でRNAサンプルを採取し、メタトランスクリプトーム解析により環境応答に関連する発現遺伝子群の特定とその差異を種系統群間で網羅的に比較する。また、進化的に中立なゲノム領域を用いて推定した系統進化関係と環境応答に関わる遺伝子群に基づく系統進化関係とを推定比較することで、アオサンゴ種系統群間で環境変動により適応分化が生じたとされる時期 とその系統進化解明を試みる。 さらに海洋温暖化・酸性化を想定した環境制御飼育実験によって、種系統群間の生理応答の差異と環境応答遺伝子群の発現量の変化を比較することで、高水温・高CO2環境下ではアオサンゴ種系統群の生理応答およびその分子制御機構はどのように変動するのかを検証する。
|
Report
(1 results)
Research Products
(4 results)
-
[Journal Article] Genetic Divergence of Pocillopora damicornis Between Temperate and Subtropical Regions: The Need to Monitor Hidden Genetic Lineage Distribution With Regard to Migration-Load Risks Under Climate Change2024
Author(s)
Masumi Kamata, Yuko F Kitano, Akira Iguchi, Yoko Nozawa, Satoshi Nagai, Chaolun Allen Chen, Naohisa Wada, Sen-Lin Tang, Takehisa Yamakita, Hiroki Taninaka, Nina Yasuda
-
Journal Title
Bulletin of Marine Science
Volume: -
Related Report
Peer Reviewed
-
-
-