Project/Area Number |
23KJ1796
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 15010:Theoretical studies related to particle-, nuclear-, cosmic ray and astro-physics
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
衣川 友那 東京都立大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥1,800,000 (Direct Cost: ¥1,800,000)
Fiscal Year 2024: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2023: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
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Keywords | エキゾチックハドロン / 複合性 / 弱束縛関係式 |
Outline of Research at the Start |
陽子や中性子のように、観測されるハドロンのほとんどは、クォーク3つまたはクォーク反クォーク対の状態である。それ以外の内部構造を持つものはエキゾチックハドロンと呼ばれ、発見数が極端に少ないことが知られているが、その理由や詳細な性質は未解明である。 我々は、エキゾチックハドロンの内部構造を定量的に調べる手法のひとつである弱束縛関係式に着目する。弱束縛関係式は、弱束縛状態の内部構造を模型非依存に解析できる利点がある一方、適用可能なエキゾチックハドロンが限定されているという問題がある。本研究では、弱束縛関係式を拡張し、先行研究では解析不可能であったエキゾチックハドロンの内部構造を解明することを目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
近年の実験において、TccやX(3872)などに代表されるエキゾチックハドロンが多数観測されている。エキゾチックハドロンの内部構造は通常のハドロンとは異なり、例えばマルチクォーク状態やハドロン分子状態などであると考えられている。状態の内部構造は、波動関数におけるハドロン分子成分の重みから定義される複合性を用いることで定量化することができる。複合性は主にハドロン物理の分野において用いられており、近年の研究の発展により、エキゾチックハドロンにも適用されるようになってきている。本研究の最終目標は、複合性を用いてエキゾチックハドロンの内部構造をハドロン分子の観点から解明することである。 2023年度は、エキゾチックハドロンが崩壊幅とチャンネル結合を持つことに注目し、それらの影響が閾値近傍の束縛状態のハドロン分子的性質にどのような影響を与えるかを主に研究した。複合性を計算することで、閾値近傍の束縛状態は極端な例外を除いてハドロン分子的であることを示した。一方、閾値近傍の状態であっても崩壊幅とチャンネル結合を考慮すると複合性が小さくなり、ハドロン分子的な性質が抑制されることを定量的に示した。その結果を応用し、TccとX(3872)の複合性が崩壊幅とチャンネル結合により50 %ほど小さくなることを示し、エキゾチックハドロンの内部構造の解明には、崩壊幅とチャンネル結合の影響を考慮した計算が必要であることを主張した。また、モデル計算から得られた複合性と弱束縛関係式から見積もられた複合性を比較することで、申請者が昨年度発表済みの論文とは別の観点からの弱束縛関係式の妥当性の検証も行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023年度は、複合性を用いたエキゾチックハドロンTccとX(3872)の内部構造の研究を完了した。その成果は査読あり論文1篇、国際・国内会議での研究発表やセミナー発表によって報告された。また、研究計画における重要な課題であった「不安定状態の複合性の確率的解釈の提案」にも取り組み、現在論文を投稿中である。この成果は論文の完成に先駆けて、国際・国内会議での研究発表によって報告された。
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Strategy for Future Research Activity |
複合性や弱束縛関係式がハドロン以外にも適用可能であることに注目し、原子核や冷却原子分野の研究者との共同研究を通して、ハドロン物理の複合性・弱束縛関係式と他分野(例えば冷却原子のフェッシュバッハ共鳴など)とのつながりを研究する予定である。 また、エキゾチックハドロンのなかには、電荷を持つハドロン散乱の閾値近傍に位置するものも多く、長距離力であるクーロン力と短距離力の両方を考慮した系に適用可能な弱束縛関係式の開発が必要である。そのため、クーロン力と短距離力が共存する系の閾値近傍の状態の研究に着手したい。
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