Project/Area Number |
23KJ1809
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 54010:Hematology and medical oncology-related
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
上村 泰成 横浜市立大学, 医学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
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Keywords | 骨髄異形成症候群 / ミトコンドリア断片化 / ミトコンドリアDNA / cGAS-STING経路 / 慢性炎症 |
Outline of Research at the Start |
骨髄異形成症候群(MDS)は、造血幹細胞の異常に起因して発症する難治性血液がんである。60歳以上の血液がんの中では最も頻度が高く、社会の高齢化に伴い患者は増加し続けている。研究代表者は、これまでに過剰なミトコンドリア断片化が炎症性シグナル経路の活性化を誘導することでMDS病態発症の引き金になることを見出した。本研究では、ミトコンドリア断片化が炎症生シグナル経路を活性化する詳細な機序およびミトコンドリア断片化が代謝・エピジェネティック制御に与える影響を明らかにする。こうして得られる成果は、MDSの病態理解を加速させ、新規治療戦略構築の礎となることが期待される。
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Outline of Annual Research Achievements |
今年度はミトコンドリア断片化に伴う炎症性シグナル経路活性化の分子基盤の解明を中心に進めた。断片化を含め、ミトコンドリアに生じる異常に伴ってミトコンドリア内の成分が細胞内に放出されることが知られている。電子伝達系で産生されるROSの他に、ミトコンドリアDNA(mtDNA)、ATPなどはいずれもDAMPsとして自然免疫系シグナル経路の活性化に寄与する。そこで、ミトコンドリアの過剰な断片化に伴う炎症性シグナル経路活性化の機序を明らかにするため、MDSクローンの細胞質中で増加しているミトコンドリア由来成分の同定を試みた。MDSマウスの造血幹細胞・前駆細胞の細胞質中におけるミトコンドリア由来成分を解析した結果、MDSクローンでは正常細胞に比べてmtDNA量が有意に増加していることが明らかになった。また、ミトコンドリア分裂阻害剤を投与したMDSマウスの造血幹細胞・前駆細胞では、細胞質中のミトコンドリアDNA量が著しく減少することから、MDSクローンではミトコンドリアの断片化に伴い細胞質中にmtDNAが放出されている可能性が示唆された。そこで、mtDNAが病態形成に与える役割を評価するため、遊離mtDNAによって活性化されるcGAS-STING経路の活性を評価した。cGAS-STING経路の活性化マーカーであるTBK1リン酸化レベルを解析したところ、MDSクローン中ではcGAS-STING経路が亢進していることが明らかになった。以上の結果から、ミトコンドリア断片化の結果細胞質中にmtDNAが放出され、その結果cGAS-STING経路を活性化することでインターフェロン産生が誘導されている可能性が示唆された。また、今年度はMDS患者由来の細胞においても遊離mtDNAの存在量を評価することができた。プレリミナリーなデータではあるものの、現時点では仮説を支持するような結果を得ることができている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度終了時点において、MDSクローンの細胞質中に蓄積するミトコンドリア由来成分の探索はおおよそ終了しており、MDSクローンの細胞質中にはROSおよびミトコンドリアDNAが蓄積していることが明らかになった。加えて、ミトコンドリア分裂阻害剤を投与したマウスのMDSクローン中ではこれらのミトコンドリア内成分の存在量が有意に減少していたことから、ミトコンドリアの断片化に伴って放出されていることも明らかになった。以上の結果はミトコンドリアの断片化と炎症性シグナル経路の活性化という現象をつなぎ合わせる重要な所見であり、ROSについては特異的阻害剤を用いた実験により病態発症との関連が低いことまで明らかにしている。ミトコンドリアDNAについても特異的阻害実験を計画したものの、技術的に難しいことからまずはミトコンドリアDNAを起点とした下流シグナルの活性化が生じているかについて探索を行なった。TBK1のリン酸化レベルの亢進によって示されたように、MDSクローン中ではcGAS-STING経路が活性化していることが明らかになった。以上の結果から、モデルマウスを用いた実験においては、見込み通り一定の成果が挙げられており、実験計画は概ね順調に進行していると考えている。これらに加え、今年度は患者検体を用いた解析も遂行し、良好なプレリミナリーデータを得ることができたことから、次年度の研究計画に対する準備も着実に進めることができたと考える。これらを総合し、上記評価に至った。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降は、まずMDSマウスに対してミトコンドリアDNAをin vivoで阻害し、MDSにおける慢性炎症へ与える影響ならびに汎血球減少や異形成といった各種MDS病態が改善するかどうかを評価する。また、cGAS-STINGシグナル経路の活性化所見が得られたため、cGAS-STING経路に関連する分子に対する薬物阻害実験を通じて、同定したシグナル経路がMDS病態に与える影響について詳細に検証していく予定である。これらの結果に基づき、MDSにおける最適な治療標的の探索を行う。また、MDS患者検体にアクセスし、MDS患者の骨髄細胞中でミトコンドリアDNAの存在量か増加しているかどうかについても検証を行っていく。この実験に並行して、MDS以外の血液疾患患者の細胞においても同様の解析を行うことで、今回我々が同定した現象がMDS特異的かどうかについてもアセスメントを行う。 また、ミトコンドリア断片化が代謝・エピジェネティック制御に及ぼす影響の解明に向けた実験も開始していく。コントロールマウス、MDSマウスおよびM-divi投与MDSマウスの造血幹細胞・前駆細胞から抽出したDNAを用いてミトコンドリア動態とDNAメチル化レベルの関連性を5-メチルシトシン(5-mC)および5-ヒドロメチルシトシン(5-hmC)dot blot法により調べる。また、ウエスタンブロッティング法により転写活性に関わるヒストンメチル化修飾、転写抑制に関わるヒストンメチル化修飾のレベルを定量する。
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