Project/Area Number |
23KJ1831
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 50010:Tumor biology-related
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Research Institution | Osaka Metropolitan University |
Principal Investigator |
野中 允幾 大阪公立大学, 大学院医学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥1,800,000 (Direct Cost: ¥1,800,000)
Fiscal Year 2024: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2023: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
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Keywords | MASLD/MASH関連肝がん / シングルセル解析 / 空間トランスクリプトーム解析 / デコンボリューション / 擬似時間解析 |
Outline of Research at the Start |
肝がん進展は、その過程においてがん微小環境を構成する細胞がそれぞれ同時に機能を変化させることで生じている。本研究では、最初に肝星細胞が放出するSASP因子を網羅的に明らかにし、がん微小環境構成細胞に対するシングルセルRNA-Seq解析データを組み合わせることで細胞老化を起こした肝星細胞を起点とするネットワークを見出す。その後T細胞の疲弊や腫瘍血管増生といったがん進展の特徴を指標にすることでがん進展ネットワークの全体像を明らかにし、肝がん進展の鍵となる候補分子を見出す。その後、同定した鍵分子の阻害剤や阻害抗体等をモデルマウス用いることで腫瘍抑制作用を評価し、実用化に適した鍵分子を決定する。
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Outline of Annual Research Achievements |
ここ数年のRNAシーケンス解析とバイオインフォマティクス解析技術の発達に伴い、以下の(1)、(2)について計画を変更した。 (1)シングルセルRNA-シーケンス解析:生細胞が必要なシングルセルRNA-シーケンス解析(以下、シングルセル解析)を脂肪性肝炎関連肝がん患者検体に対して実施することが困難だったことから、当研究室で確立された脂肪性肝炎関連肝がんモデルマウスから単離された腫瘍部・非腫瘍部から単離された細胞に対してシングルセル解析を行い、肝がん進展の鍵となる候補分子を探索することを計画していた。しかし、凍結組織に対してもシングルセル解析可能なFlex解析が開発されたため、2023年に大阪大学医学部附属病院消化器内科学所属の研究協力者にFlex解析を実施していただき、肥満誘導性肝がん患者のシングルセル解析データを提供していただいた。 (2) 肝星細胞が放出するsenescence-associated secretory phenotype(SASP)因子の同定:肝星細胞のSASP因子の探索について、ヒト組織において分泌因子をタンパクレベルで検出したデータベースが存在しなかったため、リポタイコ酸を添加した初代培養肝星細胞の培養上清に対して質量分析を用いることを計画していた。しかし、The Human Protein Atlasから3つのプロテオーム解析をヒト血漿に対して実施することで作成されたセクレトームデータベースが公開された(Uhlen et al. Sci. Signal.2019)。そこで、肥満誘導性肝がん患者シングルセルデータに含まれる老化肝星細胞で発現が高い遺伝子とセクレトームデータベースに登録されている遺伝子を照合することで118個のSASP因子を同定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヒト検体・データベースから得られた情報を基にすることで、マウスで計画していた当初の研究計画に比べ、より治療応用可能な治療標的分子を同定するための基盤を固め、治療標的として有望なバイオマーカーを見出すことができた。また今後の研究の推進方策で後述するとおり、申請書に記載した「微小環境により連続的に変化する生命現象のメカニズムを解明する新規パイプラインの開発」にも着手できていることから、概ね順調であると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
擬似時間解析とインタラクトーム解析の複合バイオインフォマティクス解析について、擬似時間解析から得られた腫瘍形成へと向かう経路のうち末端に存在する細胞のみを用いて腫瘍形成につながるネットワークを形成することを計画していた。しかし、シングルセル解析データを用いることで空間トランスクリプトームをシングルセルレベルで解析することができるデコンボリューション解析法が開発されたことにより、空間情報をもとに、どのような細胞種が相互作用しているかを検出することが可能となった。現在、この細胞間相互作用のネットワーク情報を擬似時間解析から得られた時系列の順に並び替えることで肝がん促進的な微小環境の経時的な変化を解析できる新規パイプラインを作成している。 今後、このパイプラインで得られた肝がん進展過程で現れる各微小環境に対してインタラクトーム解析を行うことで、それぞれの微小環境の分子ネットワークを見出す。その後、研究実績の概要(2)で得られたSASP因子とT細胞の疲弊や血管新生といった癌進展の特徴を示す現象を指標にがん進展につながるネットワークを検出することで鍵因子を同定する。最後に肝がんモデルマウスに、ヒトサンプルの情報から同定した鍵分子のsiRNAや阻害剤、阻害抗体等を投与し、腫瘍形成数の評価やフローサイトメトリーによる活性変化を確認することで分子標的になり得るかを検証する。
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