元素別光磁気ダイナミクス観測を行える小型実験室時間分解XMCD測定装置の開発
Project/Area Number |
23KJ1854
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 13020:Semiconductors, optical properties of condensed matter and atomic physics-related
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
高橋 龍之介 兵庫県立大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥1,800,000 (Direct Cost: ¥1,800,000)
Fiscal Year 2024: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2023: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
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Keywords | 高次高調波発生 / 紫外線 / 希ガス / 真空 / 磁性 |
Outline of Research at the Start |
現在、病院、学校、公共交通機関などありとあらゆる場所で情報データの活用が進んでいる。それに伴い、社会を支える情報データは増大の一途をたどり、これらの記録、管理は今後重要な社会問題となりうる。従来、このようなデジタルデータはPCに内蔵されているハードディスクのように、小さな磁石のN極とS極の向きを外部からの磁場によって制御し記録が行われていた。近年、磁石の向きが光によって制御可能であり、従来の数百倍速いことが実験によって示された。本研究は、光による磁石の制御のメカニズム解明を行うための装置開発である。大型放射光施設を使用しない汎用性の高い装置を開発し、高密度で高速な情報記録の基盤を構築したい。
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Outline of Annual Research Achievements |
現在、高次高調波発生(HHG) のビームラインは、HHG チャンバー、トロイダルミラーチャンバー、グレー ティングチャンバーの3つの真空チャンバーで構成されている。光源には、超短パルスレーザーとして PHAROS (波長: 1030 nm、パルス幅: 190 fs)を用いている。レーザーはアクロマティックレンズの焦点距離125 mmのものを購入し使用しており、このレンズによって気体で満たされたガスセルに集束され、HHGを生成する仕組みとなっている。現在気体は、空気の他に、アルゴンやネオンを購入しており、ターゲットガスとして使用できる状況にある。HHGは、金でコーティングされたトロイダルミラーチャンバーに送られ、そこでトロイダルミラーによって集束される。(4f = 2 m、NTT-AT 製) 回折格子と CCD 検出器に向かい、そこでスペクトルを観測する。赤外・可視成分をカットするための 厚さ 150 nm のAl フィルター2枚、(Lebow Company 社製)を用いている。回折格子 は 300 本/mm (島津 30-006)、X 線 CCD 検出器は (ANDOR Newton DO920P-BEN)、ペルチェ冷却されている。この回折格子により、15 - 60 eV をカバーすることができる。検出器の素子サイズは 26μm、素子数は 1024× 255、検出面積は 26.7 mm×6.7 mm となっている。このチャンバーの真空は、ターボ分子ポンプによって 10のマイナス5乗 パスカル 代以下に保たれている。この条件下において、アルゴンの場合はレーザーのパルスエネルギーを 1 mJ、繰り返し周波数 1 kHz で HHGに成功し、13 次以上の紫外線を継続的に観測された。また、波長 21.9 nm、56.5 eV に相当する 47 次程度の HHG も観測された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は予定していた希ガスを用いた高次高調波発生(HHG)のビームラインの建設及び光のパスアラインメントを行い、HHGに成功した。 特に、アルゴンに集光させると、13から39次までの高次高調波が発生した。また、空気によって13から47次の高次高調波の発生に成功した。これは遷移金属のM吸収端に近いエネルギーであり、遷移金属磁性元素を含む磁性体における観測を目指す上で十分な結果を得たと言える。 さらに、ガス管の調整及び、レンズの焦点距離の調整によって、安定したHHG光源を作る工夫を始めており、順調であると言える。励起光1030 nmを用いたHHGの実験例も少なく、新しい光源開発につながる結果が得られたと考えられる。これらの結果について日本物理学会や、放射光学会で口頭発表を行い、研究の妥当性に対してもフィードバックを得ている。しかし、安定した高エネルギーのHHGを発生させるにはガス管の改良や、レーザー条件を見直す必要がある。これらの改良を行い、 今後、高エネルギーで明るいHHG光源の開発を行い、円偏光の発生に着手したいと考えている。円偏光は、第二高調波発生を用いて行う。これらの技術を用いて、磁気円二色性の測定を行っていきたいと考えている。このように、我々は自作したHHG装置を完成させ、1年目でHHG観測に成功しており、順調に研究を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在下記の問題点が存在する。 1点目に高次高調波の強度減衰である。この問題は、高周波数、高エネルギーの超短パルスレーザーによって、希ガスがプラズマ化し、滞留してしまうことが原因と考えられる。現在用いているガス管は、貫通式を用いており、励起レーザー光が通る下に、ガスがたまる領域が存在している。 この問題を解決するために、我々は、下方噴射型のガス管の作製を行い、レーザーによって貫通させずに行う予定である。下方噴射型では、初めからガス管の下に穴が開いており、その部分にレーザー集光する。この方法ではプラズマの滞留が起こりにくいという利点があるが、真空悪化が早い可能性がある。この点について考慮しつつ、改良していきたい。 2点目に最大フォトンエネルギーであるカットオフエネルギーが不足していることである。これは、現在アルゴンを用いており理論的な限界が存在するためである。この問題を解決するために、我々はネオンを用いてHHGを試みたい。また、固体高次高調波を同時に進め、より高エネルギーかつ汎用性の高いHHGの実現を目指す。
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Report
(1 results)
Research Products
(2 results)