Project/Area Number |
23KJ1855
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 16010:Astronomy-related
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
山下 真依 兵庫県立大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥1,800,000 (Direct Cost: ¥1,800,000)
Fiscal Year 2024: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2023: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
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Keywords | 前主系列星 / 彩層 / 活動度 / 分光 / 黒点 |
Outline of Research at the Start |
本研究の目的は100万-1000万歳の若い天体”前主系列星”の内部構造の進化を調査することである。太陽(46億歳)のような星は電気を帯びたガスで構成される。その運動は強い磁場を生成する。しかし天体の内部も磁場も直接観測できない。そこで磁場と関連の深い大気層である”彩層”から出たカルシウムやマグネシウムの輝線を観測する。前主系列星は太陽より自転が速いため、より活発な彩層を持つ。2023年度では第一段階として前主系列星のMg I彩層輝線を観測し、直接観測できない対流の周期について解明することを目標とする。2024年度からは長期的な計画として,前主系列星に対して彩層の温度構造モデルの構築を開始する.
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Outline of Annual Research Achievements |
恒星の中心核で生じたエネルギーは,放射や対流によって恒星表面に輸送される.対流の大きさやその速度は,解像度の高い数値計算によって明らかになりつつある.一方で対流を直接観測することは難しく,彩層が観測されてきた.ただし彩層の詳細な観測は太陽と晩期主系列星でしかなされていない.本研究では太陽よりも約10倍速く自転し, 活発な彩層活動が予測される前主系列星を対象とする. Yamashita et al. (2022a, PASJ)では,先行研究で3例しか観測例がなかったMg I彩層輝線(λ8807 Å)が,高速自転星でも活動度を差別化できることを示した. 2023年度では第一段階としてMg Iの自転活動関係を調べた. 特に前主系列星の彩層活動が活発である原因が, ダイナモ活動なのか質量降着なのかを明らかにした. Very Large Telescope/UVESとX-Shooterで取得された前主系列星70天体の可視光高分散スペクトルを用いた. 光球モデルスペクトルを用いて, 前主系列星の有効温度, 表面重力, 自転速度, ベーリング値(前主系列星周辺の原始惑星系円盤からの連続光成分の量)を推定した. そして適切な光球モデルスペクトルを, 前主系列星スペクトルから引いた. 結果として, 強いCa II輝線のほか, Mg IやFe Iなどの多くの微弱な彩層輝線を前主系列星と零歳主系列星から検出した. ベーリングがない前主系列星は, 同じロスビー数の零歳主系列星と同等程度の輝線強度を示した. ダイナモ活動により彩層が活発になったと考えられる. ベーリングがある前主系列星は, 同じロスビー数(≡ 自転周期/対流の周期)の零歳主系列星よりも明るい輝線を示した. 原始惑星系円盤を持ち, 質量降着により彩層がより活発になったと考えられる. 質量降着は彩層を直接的に活発にすることを明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前主系列星で微弱な彩層輝線を検出することは困難であるが, 申請者は天体の有効温度と表面重力を正確に見積もることで克服した. 前主系列星に関する先行研究ではMg I輝線とFe I輝線はどちらも検出率が24%だったが, 結果として本研究では検出率をそれぞれ82%, 80%へと向上させた. 2024年度では以上の内容の論文化を目指す. またTESS衛星の測光データを解析することで前主系列星の自転周期を得たが, 二次的に黒点サイズ・爆発現象フレアのエネルギー規模・円盤からの質量降着量も推定できた. これらの内容の論文化も構想中である.
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Strategy for Future Research Activity |
長期的な計画の序盤として,零歳主系列星,前主系列星に対して彩層の温度構造モデルを構築する.彩層の温度勾配モデルは, 大まかに (a) 彩層の温度勾配を複数パターン算出する, (b) (a) の温度勾配で発生するスペクトルを理論的に求める, (c) 理論と観測されたスペクトルがよく整合するように, 温度勾配を変更する という手順で構築される. 理論スペクトルの合成には, 輻射輸送数値計算コード“CLOUDY”を用いることを考えている. 現在の所属機関にはCLOUDYの扱いに長けているチームが所在するため, 日々の議論でノウハウを教わることを計画している. Yamashita et al. (2022a, PASJ)では,先行研究で3例しか観測例がなかったMg I 彩層輝線(λ8807 A)が,磁気活動が活発な天体でも活動度を差別化できることを示した.Mg I輝線以外にも,零歳主系列星からFe I輝線など22本の弱い彩層輝線が検出された.採用期間中にスペクトルの探査範囲を現在の10倍に拡張し, 解析する輝線の本数を従来の10倍以上に増やし, 前主系列星でも正確な温度構造を求める. さらに前主系列星より弱い彩層輝線を示す零歳主系列星で初めて彩層の温度構造を求めることが期待される.これにより,彩層の温度構造について初めて普遍的な議論が可能になる. 以上の内容に加えて, 博士論文の内容を順次 査読論文としてまとめる.
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