Project/Area Number |
23KJ1856
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 26040:Structural materials and functional materials-related
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
内海 伶那 兵庫県立大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥1,600,000 (Direct Cost: ¥1,600,000)
Fiscal Year 2024: ¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
Fiscal Year 2023: ¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
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Keywords | 金属水素化物 / Al-Mn合金 / 高温高圧合成 / 放射光 |
Outline of Research at the Start |
研究代表者の所属研究室では従来の水素科学の知見からは水素吸蔵しないと考えられていた「アルミニウム(Al)に遷移金属(TM)を組み合わせた合金(Al-TM合金)」が水素吸蔵することを発見した。本研究は水素吸蔵したAl-Mn合金が水素吸蔵したその他のAl-TM合金とは異なる性質をもつ要因を解明することを目的として、水素吸蔵したAl-TM合金中のTMの電子状態測定を実施するものである。
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Outline of Annual Research Achievements |
所属研究室では従来の水素科学の知見からは水素吸蔵しないと考えられていた「アルミニウム(Al)に遷移金属(TM)を組み合わせた合金(Al-TM合金)」が水素吸蔵することを発見した。本研究はAl-Mn合金がその他のAl-TM合金とは異なり、結晶構造の異なる複数種の水素化物を低い合成圧力で形成できる要因の解明を目的とし、Al-TM合金水素化物のTMの電子状態測定を実施するものである。申請書を提出直後に複数種のAl-Mn合金水素化物の1つである六方最密充填構造(hcp)の水素化物が特定の組成だけでなく、幅広い組成範囲で水素化物が形成することが分かった。そこで本年度はhcp構造のAl-Mn合金水素化物の熱力学的安定性の組成依存性の評価を目的とし、2種類の水素放出測定を行った。これは申請書の計画には無かったものであるが、水素化物生成におけるMnの振る舞いを解明しようとする本研究課題と密接に関係していることから受入研究者と相談の上、実施した。またAl-Mn合金水素化物中のMnが多様な電子状態を取れるのかを調べることを目的とし、申請書の計画「Al-Mn合金水素化物のMnの電子状態測定」を行った。 2種類の水素放出測定を行った;(1)水素化物の熱力学的安定性の組成依存性を放射光その場観察により定量的に評価(2)常圧での加熱による水素化物の水素放出温度の違いを定量的に評価。Alは酸化し易い金属のためAl系水素化物の水素放出は酸化膜により妨げられ、高温側にシフトする傾向があるが、上記の測定結果からAl0.1Mn0.9Hxの水素放出温度がMnHよりも低くなっているというAlの新たな性質を示唆する結果が得られた。 Al-Mn合金水素化物のMnの電子状態をX線吸収微細構造(XAFS)法により評価した。測定結果と理論計算の結果からMnの電子状態は組成に応じて金属的、および非金属状態をとることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画は順調に進んでいる。加えて、上記の【研究実績の概要】に記載したように当初の計画にはなかったアプローチからも研究を進め、当初の計画以上の進展が見られたため、「当初の計画以上に進展している。」と評価した。 当初の計画のAl-Mn合金水素化物中のMn が多様な電子状態を取れるのかを調べることを目的とした「結晶構造の異なる複数種のAl-Mn合金水素化物中のMnの電子状態測定」と「複数種のAl-Mn合金水素化物の内の1つであるAl3MnH4と類似の結晶構造をもつAl3FeH4中のFeの電子状態測定」を行った。測定結果からAl-Mn合金水素化物中のMnの電子状態は組成に応じて金属的、および非金属状態をとることが分かった。また、Al3FeH4中のFeの電子状態はAl3MnH4中のMnと類似の電子状態である可能性が高いことが分かった。予期していた結果が得られており、詳しい解析を専門家の協力の下、今後行う。 当初の計画には無かったhcp構造のAl-Mn合金水素化物の熱力学的安定性の組成依存性を評価することを目的とした「hcp構造のAl-Mn合金水素化物について2種類の水素放出測定」を行った。2種類の水素放出測定の結果から微量なAlによる水素放出促進の効果がある可能性が見いだされた。Alは酸化し易い金属のため、Al系水素化物の水素放出は酸化膜により妨げられ、高温側にシフトする傾向があるが、本研究の結果からAl0.1Mn0.9Hxの水素放出温度がMnHよりも低くなっているというAlの新たな性質を示唆する結果が得られた。このAlの効果については類似の報告例がなく、報告者の所属研究室で進めている安価な水素吸蔵合金の開発を目指したAl系合金水素化物の探索研究において重要な発見である。 以上の点から当初の計画通りに順調に進んでおり、当初の計画では予期していなかった成果を創出することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、①前年度得られた成果についての論文投稿と得られた実験結果の詳細な解析、②当初の計画を進め、とりまとめを行う。 ①前年度得られた成果「hcp構造のAl-Mn合金水素化物の熱力学的安定性の組成依存性」について現在執筆している論文を投稿する予定である。また、前年度行った「結晶構造の異なる複数種のAl-Mn合金水素化物中のMnの電子状態測定」と「複数種のAl-Mn合金水素化物の内の1つであるAl3MnH4と類似の結晶構造をもつAl3FeH4中のFeの電子状態測定」の測定結果について専門家の協力の下、令和6年度に解析を進める。 ②今後行う予定①と平行して、令和6年度の前期に次に示す当初の計画を進める。Al-Ir合金はMn以外で唯一2種類の水素化物を形成することを所属研究室で既に発見しており(申請書作成時)、今後は2種類のAl-Ir合金水素化物中のIrの電子状態の測定を行う。また、申請書提出後にAl-Ru合金も2種類の水素化物を形成することを所属研究室で発見したため、令和6年度は2種類のAl-Ru合金水素化物のRuの電子状態の測定を行う。以上の2つの実験からIrおよびRuにもAl-Mn合金水素化物中のMnのような多様な電子状態をとれるのかを調べる。また、当初の計画時点でまだ調べられていなかったFeに富むAl-Fe合金とIrに富むAl-Ir合金も水素化物を形成するのかを実験的に明らかにし、新規水素化物が形成した場合には上記と同様にそれぞれの水素化物中の遷移金属の電子状態を測定する。 令和6年度の後期には得られた成果をとりまとめ、本研究課題「Al-Mn合金がその他のAl-TM合金とは異なり、結晶構造の異なる複数種の水素化物を低い合成圧力で形成できる要因の解明」を考察する。
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