Project/Area Number |
23KJ1891
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 47030:Pharmaceutical hygiene and biochemistry-related
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
桑島 佑太朗 慶應義塾大学, 薬学研究科(芝共立), 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,000,000 (Direct Cost: ¥2,000,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
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Keywords | TRPV4 / コレステロール / 細胞膜 / 1分子イメージング |
Outline of Research at the Start |
細胞膜には脂肪酸組成の異なるリン脂質分子種やコレステロール等の様々な脂質が動的かつ不均一に分布し、膜タンパク質の反応場を形成している。細胞膜の脂質多様性は膜タンパク質を起点とするシグナル伝達に影響を与えているが、その制御機構については不明な点が多い。本研究では、膜脂質分子により活性制御を受けるTRPV4チャネルに着目し、細胞内1分子イメージングにより生きた細胞での分子の振る舞いを定量的に解析することで、細胞膜脂質環境と共役したTRPV4活性制御機構の解明を目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、全反射蛍光顕微鏡を用いたコレステロールプローブD4HとTRPV4の生細胞二色同時一分子イメージングにより取得したデータを用いて、D4HとTRPV4の拡散動態及び共局在性を解析した。その結果、細胞膜上のコレステロールとTRPV4には、拡散速度や会合状態により、三つの異なる拡散状態が存在することが分かった。両分子間の距離と拡散係数に基づき共局在解析を行なったところ、定常状態において、TRPV4はコレステロールに富み流動性の低い膜ドメインでコレステロールと共局在することが分かった。また、TRPV4特異的アゴニスト (GSK1016790A) 刺激によってTRPV4が活性化すると、両者の共局在性が低下することを突き止めた。興味深いことに、TRPV4活性化後、D4Hのクラスターの減少や拡散係数の増加など、D4Hの拡散動態の顕著な変化が認められた。この結果は、従来想定されていたような細胞膜コレステロールによるTRPV4の活性制御だけでなく、その反対にTRPV4活性化による細胞膜コレステロール動態制御を示している。さらにTRPV4遺伝子の骨系統疾患変異体やCa2+流入の特異性に関する解析を行ったところ、TRPV4活性化依存的なD4Hの動態変化には、定常状態におけるコレステロールとの相互作用やTRPV4を介したCa2+が重要であることが示唆された。これらの結果から、TRPV4を介したCa2+流入により、細胞膜コレステロールの動態が変化して流動性の高い膜ドメインが生じることで、TRPV4とコレステロールの拡散が速くなり、両者の共局在性が低下すると考えられた。以上、TRPV4による細胞膜コレステロール動態制御に関して得られた結果をまとめ、筆頭著者として論文を発表した (Kuwashima Y, et al. Biophys J. 2024) 。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は研究計画に基づき、TRPV4とコレステロールをモデルとした生細胞二色同時一分子イメージング解析を実践した。コレステロール認識プローブD4Hの拡散動態解析から、TRPV4活性化による周囲の膜脂質環境の変化、特に細胞膜コレステロール動態の変化という当初想定していなかった現象が明らかとなった。骨系統疾患を生じるTRPV4遺伝子の変異により細胞膜コレステロール動態制御系の異常が生じることも見出し、骨系統疾患の新たな発症機構が示唆された。上記の成果を含む内容についてまとめ、筆頭著者として論文を発表した。 また、コレステロールプローブD4Hの安定発現株を用いることにより、TRPV4とD4Hの一過的な共発現の場合と比べて十分高効率に96ウェルプレートを用いた自動二色同時一分子計測が実施可能であることが分かった。一方で、脂肪酸添加時のTRPV4とコレステロールプローブD4Hの生細胞二色同時一分子計測は、当初計画よりもやや遅れている。予備的に、EPAやその酸化代謝物を含む数種類の脂肪酸を添加して生細胞二色同時一分子イメージング解析を行なったものの、TRPV4とコレステロールの拡散動態や共局在性に生じる変化を安定して検出することが困難であった。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は、2023年度に引き続き、コレステロールとTRPV4の共局在性に影響を与える脂肪酸を明らかにするため、脂肪酸添加後の生細胞二色同時一分子イメージング解析を進める。脂肪酸処理条件を検討し、徐々に安定した結果が得られるようになってきており、今後最適化した処理条件で約60種類の脂肪酸処理時の生細胞二色同時一分子イメージングを実施する。 また、本研究を進める中で新たに明らかとなったTRPV4の活性化依存的な細胞膜コレステロール動態変化について、TRPV4依存性やその分子機構を探索する。具体的には、他の膜受容体が活性化した際の細胞膜コレステロール動態変化を解析するとともに、TRPV4活性化時の細胞膜コレステロールの分布の変化を蛍光イメージングや生化学的解析などにより調べる。
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