Project/Area Number |
23KJ1892
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 59020:Sports sciences-related
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
平田 昂大 慶應義塾大学, 健康マネジメント研究科(藤沢), 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥1,800,000 (Direct Cost: ¥1,800,000)
Fiscal Year 2024: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2023: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
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Keywords | 運動 / スポーツ / 余暇時間身体活動 / 有害事象 / 事故 / 地域住民 |
Outline of Research at the Start |
運動には多くの健康上の利点が示されており、国内外で身体活動・運動促進の取り組みが行われている。しかし、我が国では少子高齢化が進み、高齢層や慢性疾患を有する方などの運動時に配慮が必要な可能性がある人口の割合が多くなっている。そのため、安全・安心な運動環境の構築はこれまで以上に重要であると言える。そこで、本研究では地域住民が自主的に実施している運動を対象にして、運動実施者の属性(年齢・身長・体重・基礎疾患など)や運動頻度を明らかにするとともに、運動中の有害事象の実態を前向きに調査し、その対策を実社会で講じることを目的とした、観察疫学、社会実装研究である。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、地域住民が自主的に実施している身体活動・運動における(1) 有害事象・ヒヤリハットの発生状況と発生頻度を明らかにし、(2) 得られた知見に基づいた適切な対策を講じることで、安全安心な身体活動・運動環境を構築することを目的としている。2023年度は、以下の3点に取り組んだ。 一点目は、本研究領域における学術的な知見を整理する事を目的としたスコーピングレビューの実施である。英語および日本語の原著論文を対象に、PubMedと医中誌Webを使用してこれまでに、地域住民が実施する運動中(トップアスリートの競技、学校の体育授業を除く)の有害事象に関する疫学研究を整理した。本研究は、現在国際誌へ投稿中である。 二点目は、①横浜市栄区で自主的に運動を実施している集団、②藤沢市内の公的運動施設内のトレーニング室の利用者(以下、藤沢市)を対象に、有害事象・ヒヤリハットの発生状況を前向きに観察した研究である。本年度は、この二つの地域で実施した研究成果をまとめ、論文として公表した。これらの研究の結果、中高齢者における転倒が主な有害事象であること、事前に定めた基準と報告書を用いた調査であったが、ヒヤリハットの報告がなかったことが明らかとなった。運動中の有害事象の頻度は高くないが、重大事故に繋がり得る事例は可能な限り事前に把握し、対策を講じておくことが重要である。そのため、ヒヤリハットの把握と共有は重要な安全要件であるが、現状ではヒヤリハットの把握に課題があることが明らかとなった。 そこで三点目として、藤沢市のトレーニング室の施設職員に対して、ヒヤリハットに関する意識調査と安全教育介入、安全教育の効果検証行うための研究をスタートした。2024年度は、本研究を進めるとともに研究成果の公表、アウトリーチ活動を予定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の対象は、①横浜市栄区で自主的に運動を実施している集団(以下、①栄区)、②藤沢市内の公的運動施設内のトレーニング室の利用者(以下、②藤沢市)である。2024年3月の時点で、①栄区では、14ヶ月間の前向き調査を完了し、その解析結果を英文誌に投稿し、採択された。また、②藤沢市を対象とした前向き調査においても、その解析結果を英文誌に投稿中である。加えて、本研究テーマに関する文献のスコーピングレビュー論文を1件投稿中である。上記の3件の論文投稿に加えて、公開済みの論文が4件、国際学会での発表を2件行うことができた。またアウトリーチ活動として、関連する内容について、学会シンポジウムでの発表が2件、記事の執筆、講演会の講師を複数担当することができた。 上記の研究の結果、地域で一般集団が自主的に実施している運動中には、その実施内容に関わらず高齢者の転倒が代表的な有害事象であることが明らかとなった。発生頻度(1000人・時)では、特筆して頻度が高いわけではないものの、地域住民が実施する運動は運動実施者が多く、運動習慣がない人や基礎疾患を有している人の割合も高いことから、運動実施者に対するセルフスクリーニングの実施や、緊急時対応計画といった万が一の事態に対する備えの必要性が明らかとなった。そして、報告されたヒヤリハットの件数の少なさから、ヒヤリハットの報告に対する心理的・時間的障壁の存在と運動指導者等の周囲の人間における安全管理に関する教育的介入の必要が示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の遂行を通して、対象となる自治体や地域の運動実施者、運動指導者、行政職員と継続的にコミュニケーションをとることができた。研究者(報告者)とステークホルダーとの間で課題意識や共通理解を深めることができたことで、2024年4月からは②藤沢市を対象に、運動を安全・安心に実施するための教育介入を運動施設の実務スタッフを対象に実施し、その介入効果を前向きに追跡する予定である。この研究では、②藤沢市の公共トレーニング室(3施設)で監視・指導業務に従事している職員(アルバイト・パート)を対象に、安全教育介入を行う。介入は、本研究に関連して報告者が作成した「安全・安心に運動を行うためのハンドブック」の配布、新しいヒヤリハット記録表の運用、安全管理に関する勉強会の実施、職員間・施設間での有害事象・ヒヤリハット事例の共有の4つである。この介入効果を予防行動採用プロセスモデル(The Precaution Adoption Process Model: PAPM)の段階でその変容状況を評価する。あわせて、職員の基本属性、教育介入の実施状況、運動施設の有害事象・ヒヤリハットの報告数、施設利用者数、開館日数、施設の環境面の状況を記録する。これらの評価項目は、研究成果の社会還元を試みるトランスレーショナルリサーチの手法であるRE-AIMモデル(Glasgow, 1999)を用いて、到達度、有効性、採用度、実施頻度、維持度の視点から実社会における実現度合を前向きに評価する。
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