統一的正犯体系の知見を生かした共犯理論の構築:貢献度に応じた柔軟な量刑にむけて
Project/Area Number |
23KJ2043
|
Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 05050:Criminal law-related
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
中田 己悠 早稲田大学, 法学学術院, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2026-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
|
Budget Amount *help |
¥4,200,000 (Direct Cost: ¥4,200,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,400,000 (Direct Cost: ¥1,400,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,400,000 (Direct Cost: ¥1,400,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,400,000 (Direct Cost: ¥1,400,000)
|
Keywords | 刑法 / 正犯 / 共犯 / 正犯と共犯の区別 / 統一的正犯体系 / 旧刑法 / デンマーク刑法 |
Outline of Research at the Start |
わが国の刑法典は、正犯と共犯を区別する共犯体系を採用している。これを前提として、わが国の刑法学も議論を行ってきた。しかし、実務において「共犯」が問題となる場面は稀である。この点から、実務は犯罪関与者を原則として「正犯」として処罰し、正犯と共犯を同一視する統一的正犯体系を事実上採用していると評されてきた。ここに、実務と学説の乖離がみられる。本研究は、統一的正犯体系を立法上採用するオーストリア刑法とデンマーク刑法を題材とした比較法的検討を通して、統一的正犯体系の知見を生かした、実務との整合性と理論的一貫性とを両立させる新たな共犯理論を提示し、もって実務と学説の架橋に貢献しようとするものである。
|
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、第一に共犯体系に基づく議論が前提としてきた「正犯とは実行行為を行う者である」との思考枠組み(以下、「『正犯=実行』枠組み」とする)に関する系譜的考察を行った。そのうえで、第二に、統一的正犯体系を採用するデンマークの共犯理論に関する知見をわが国の共犯理論に活用するために必要な準備作業を実施した。 上記第一について、「正犯=実行」枠組みに関する系譜的考察は、旧刑法パートと現行刑法パートに分けて実施された。旧刑法パートでは、旧刑法典が「正犯=実行」枠組みに忠実な規定を有していたにもかかわらず、学説は正犯と従犯との区別に関して「正犯=実行」枠組みに忠実な解釈を行っていなかったという事実を明らかにした。続いて、現行刑法パートでは、旧刑法下において量的な正犯と従犯との区別基準が有力であったという事実を踏まえ、現行刑法下においてどのように「正犯=実行」枠組みを評価する潮流が生成され、その潮流がどのように受容されたのかを明らかにした。 上記第二について、デンマーク刑法は犯罪における共働現象を規制するにあたり、統一的正犯体系を採用しており、量刑レベルで各関与者の犯罪への貢献度を個別的に評価し、それに応じた量刑を定めることで、関与形式に合わせた刑罰価値を判断する点に特徴が認められる。しかし、その判断枠組みは従来のわが国において、言語的障壁から盛んには紹介されてこなかった。そのため、デンマークの共犯理論に関する文献を幅広く収集し、わが国の正犯と共犯の区別基準にデンマーク共犯理論の知見を活用するために必要な準備作業を完了させた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
わが国の刑法と統一的正犯体系の知見との整合可能性を提示するための準備作業として、日本における「正犯=実行」枠組みに関する系譜的考察を完了させ、これを公表した。また、デンマーク刑法における各関与者の犯罪への貢献度に関する評価基準の検討は、その準備作業が既に完了している。もっとも、わが国の正犯と共犯の区別基準にデンマークの共犯理論の知見を活用するに際しては、デンマークの刑事実務における共犯事件の量刑基準を分析する必要があり、現在その研究作業を遂行中である。以上から、現在までの進捗状況は、概ね順調であるということができる。
|
Strategy for Future Research Activity |
第一に、デンマークにおける各関与者の犯罪への貢献度の判断枠組みを析出する作業を完了させる。そのためにはまず、デンマーク共犯理論における議論とデンマーク刑事実務における共犯事件の量刑基準を分析する必要がある。 第二に、デンマークと同じく統一的正犯体系を採用するオーストリア刑法における各関与者の犯罪への貢献度の判断枠組みを析出する作業を実施する。その際には、現地でのみ入手不可能な文献を入手し、これらの資料を基に分析を実施する。これにより、本研究の中心的な作業として位置づけられるところの統一的正犯体系を採用する諸国と日本との比較法的検討が完了する。 最後に、以上の比較法的検討を通じて析出された量刑理論を、わが国の共犯理論における実務・学説の考え方と対比することにより、正犯と共犯の区別基準をはじめとしたわが国の共犯理論に接合する。
|
Report
(1 results)
Research Products
(4 results)