Project/Area Number |
23KJ2045
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 02040:European literature-related
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
西角 美咲 早稲田大学, 文学学術院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥1,500,000 (Direct Cost: ¥1,500,000)
Fiscal Year 2025: ¥500,000 (Direct Cost: ¥500,000)
Fiscal Year 2024: ¥500,000 (Direct Cost: ¥500,000)
Fiscal Year 2023: ¥500,000 (Direct Cost: ¥500,000)
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Keywords | 巡礼記 / 中世ロシア / 旅 / 人間関係 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、信仰や時代潮流といった旅人の持つ社会的背景と旅の特性との連関を、中世ロシアの旅の諸記録を題材に考察するものである。そのために、まずは中世ロシアの旅の諸記録を精読する。その上で、旅人が自分自身を含めた人間をどのようにとらえ、それを書き記したのかを、記述から読み取り抽出する。そして旅人の思考や行動の同時代的意味や、旅という状況が旅人にもたらした影響を、特に人類学的観点を用いて考察する。例えば、イギリスの人類学者ターナーが用いた、ある一つの基準に明確に拠り立っていない状態を指す「境界性」、このような状態において発生する社会関係である「コミュニタス」といった観念を援用する予定である。
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Outline of Annual Research Achievements |
報告者の研究は、旅人が旅の間にどのような人間関係を築いたのか、人間関係の構築のされ方にはどのような要素がどのように関わっているのかを、中世ロシアの旅の諸記録を用いて分析するものである。本研究の遂行により、中世ロシアという時代場所の特性や旅における人間関係の構築のされ方に関する洞察が深まり、中世史およびロシア史へ新たな知見を加えるのみならず、人間関係という我々人類の生の基盤への新しい洞察を得ることが期待される。 本年度は、史料の分析および研究成果の発表を主として行った。精読し分析した史料は、12世紀初頭のエルサレム巡礼の記録である『ルーシの地の修道院長ダニイルの聖者伝および巡礼記』(以下『巡礼記』とする)とフェラーラ=フィレンツェ公会議(15世紀前半)へ参加したロシア人による記録である『フィレンツェ公会議への旅』、『ローマ覚書』、『スーズダリのアブラーミイと府主教イシードルの第8回公会議への旅』、『イシードルの会議と旅』(これら4点をまとめて『出張記録』とする)の計5点である。『巡礼記』からは、作者ダニイルがどのような道程の巡礼を行ったのか、その間にどのような人物と関わりどのような心情を抱き、どのような行動をとったのかが読み取れた。『出張記録』からは、記録の作者らがどのような旅を経て公会議へ臨んだのか、公会議ではどのような態度を取ったのか、彼らが旅の道中で何を思いどのような行動をとったのかが読み取れた。 同時に、これまでに得た知見を活かし、学内誌への投稿および複数回の研究発表を行った。これにより、報告者の研究のための示唆を得ることができ、そして中世ロシアの旅の記録(とりわけ『巡礼記』)の学界での認知度を上げることもできた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は研究の中核をなす史料の分析およびこれまでの研究成果の公開を主として行った。研究成果のうち公にしたのは、『巡礼記』の翻訳および分析結果・考察と、『出張記録』の分析結果・考察である。うち翻訳の掲載が2回、研究発表が4回である。これらは、報告者の研究の進展に大いに寄与している。また、こうした機会の際に得た学界におけるコネクションもまた、報告者の研究の進展にとって有益であると見込まれる。 よって、本研究の進捗にはいたって問題が無く、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は主に中世ロシアの史料や、それらのコンテクストの分析が研究活動の主であった。一方で、本研究の遂行のためには、考察対象である旅という現象そのものや人間関係そのものについての洞察も深めなくてはならない。そのため、旅や人間関係に関する人類学的、社会学的知見の獲得を今後の目標とする。また、その成果の公表を常に念頭に置くことで、より研究を推進させていきたい。
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