Ethnographic research on the dynamics of Kinship relationships: child bridge marriages in contemporary China
Project/Area Number |
23KJ2104
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 04030:Cultural anthropology and folklore-related
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
LI SIHANG 立命館大学, 先端総合学術研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥1,600,000 (Direct Cost: ¥1,600,000)
Fiscal Year 2024: ¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
Fiscal Year 2023: ¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
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Keywords | 中国福建省 / 新婦仔 / ルーツ探し / DNA 鑑定 / 親族論 / 人情 / 生活史 / ライフストーリー |
Outline of Research at the Start |
中国には、幼い女児を成長後に息子の嫁にするために養子として引き取る新婦仔という習慣がある。本研究は従来の新婦仔に対する研究における見解に変わる新たな視点や見解を見出すことを目指す。親族論の1990年代以降の転換として、規範>行為というパラダイムから脱却して行為の反復から(親族)規範が生じる行為>規範という視点への転換があった。しかし、新婦仔の事例からは、行為と規範のどちらも曖昧で弱いなかで、状況主義的・操作的に親子関係が(資源として)用いられるような事態がある。そこで、DNA鑑定を契機として新婦仔と生親とが再会した事例を取り上げ、近年の人類学における親子関係論に新たな視点を提示する。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、かつて養家の嫁にすることを前提として幼少期に養子に出された新婦仔(シンプア)と呼ばれる女性たちの現在をめぐる研究の一環として、中国の天津市および福建省でおよそ3か月にわたって実施された。これまでの研究実施状況は、以下4つ挙げることができる。 (1)新婦仔、彼女たちの実家族および養家族に対する生活史調査を実施した。DNAに基づく血縁関係だけでなく、実践的な親子関係のリアリティーも明らかにした。個々の人生の以外、社会的文脈について網羅的に収集した。調査先における村民たちとの間のラポールを形成してきた。(2)申請者はボランティアとして新婦仔の「ルーツ探し」を支援するNPOに加入し、宣伝などの仕事を担当している。今度の調査を契機に、NPOの参加者(団体の体表者を含む)に対してより詳細な聞き取り調査を行った。(3)研究会誌等への発表:李思航2024「中国における新婦仔と実親とのつながりの再構築──福建省ホ田と長楽の二つの家族のライフストーリーを事例に──」『白山人類学』27号(査読あり)に掲載決定された。本稿では新婦仔と実親との親子関係の構築には異なる文化圏に属する地域における社会関係の構築原理の理解とその実践が重要であることを指摘した。(4)学会発表:李思航「実親・娘探しを通じた「家」の再創造―中国福建省における実親の新婦仔との関係についての事例からー」(日本華南学会定例研究会 2023/6/18)。本報告では、DNA鑑定を契機として新婦仔と生親とが再会した事例を取り上げ、親子関係を「親の分人」という観点から検討することで、近年の人類学における親子関係論に新たな視点を提示する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、主に以下A-Cの3つの課題に応答するために、フィールドワーク調査や資料調査を実施した。 A:「夫が外で働く場合、新婦仔との関係をどのように築いていくか」。この問いに答えるために、天津市では、これまで新婦仔たち本人への生活誌調査を中心に行ってきたことを踏まえ、家族・親族を対象として出稼ぎ先での暮らしぶりや新婦仔との関係構築過程などについての聞き取りを実施した。B:「実家側の冠婚葬祭における新婦仔の役割から、親子関係を再考する」。この問いに答えるために、福建省では、同じく新婦仔および彼女たちの家族・親族を進めると同時に、当事者たちが置かれた社会的状況を明確化すべく、行政や村落組織などを含む地域社会に関する調査も行った。そこでは、葬儀にまつわる地縁・血縁関係の協働における新婦仔の位置づけなどについて新たな知見が得られた。C:「尋親活動を組織する団体の発展史と構成員の状況についてはどうなのか」。この問いに答えるために、福建省では、親/娘探しの過程で重要な役割を果たすある公益団体への調査も前年度から継続して行った。その成果として、団体代表者やボランティア(新婦仔経験を持つ女性および娘を新婦仔に送り出した経験を持つ親)などにインタビューを行い、論文執筆において有用と思われる事例が収集できた。 期間中には、データ整理と不足部分の補足調査を併行して行うことで効率的に成果が得られたほか、現地図書館や資料館での文献調査も実施した。今回の渡航によってさらに関係者との信頼関係を深められたことも、本研究計画の実現可能性を高める成果であると考える。 以上のような調査を行った上で、成果発表も行った。生活史インタビュー調査の結果を学会に報告し、学術雑誌には、関連するデータをまとめた研究論文が掲載決定された。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度も、昨年度と同様に、主に以下のA-Cの3つの課題に応答するため、フィールドワーク調査や資料収集を継続して実施する予定である。それぞれの問題に応じて本年度の課題を述べる。A:「司法鑑定所におけるDNA鑑定の手順について調査する」。科学技術の進歩が、現代のルーツ探しやムスメ探しにどのような影響を及ぼすのか、「探し」の歴史がどのような変化をもたらしたかを明らかにしたい。B:「人身売買のネットワークについて調査する」。地域研究の一環として、時系列データを収集し、時代によって新婦仔販売のネットワークの特徴を明らかにする。養家族との関係だけでなく、C:「新婦仔たちと周りの人々との関係についてどうなのか」、インタビュー調査と参加観察によって探究したいと考えている。
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Report
(1 results)
Research Products
(2 results)