Project/Area Number |
23KJ2105
|
Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 04030:Cultural anthropology and folklore-related
|
Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
孔 文浩 立命館大学, 先端総合学術研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2025-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
|
Budget Amount *help |
¥1,700,000 (Direct Cost: ¥1,700,000)
Fiscal Year 2024: ¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
Fiscal Year 2023: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
|
Keywords | 贈与 / 譲渡可能性 / 転贈 / 月餅の贈与慣行 / 人間関係 / 人情 |
Outline of Research at the Start |
補助事業期間の前半は修士課程中の研究成果を引き継ぎ、長期の参与観察を行う。調査対象が日常生活におけるささやかな贈答行為から、盛大なイベントの贈答行為まで記録することにより、維持・拡大している「慣習的」な贈答文化とする月餅の贈与慣行で、可視化・再確認された人間関係の重要度が、その後の恩顧的な関係や日常的な贈与にいかに反映されているのかを明らかにする。 後半は前期の研究成果の論文を執筆する。さらに月餅と月餅券に止まらず、他の貨幣化・数値化されていく贈り物の贈与慣行の解明を中心として、アンケート調査とインタビュー調査をするため再びフィールドワークを行い、現代中国の贈答文化の変容を明らかにする。
|
Outline of Annual Research Achievements |
前年度は長期調査を通して、月餅の贈与慣行と日常的な贈与行為の実態を明らかにし、中国の贈答文化を考察するために重要なデータを収集した。 調査では、月餅の贈与慣行の前後の日常的な贈与から、人間関係の重要度の変化は見当たらなかった。一方、予備論文の当時と同じ調査対象のA氏の贈与の記録とも比較して考察してみると、月餅を贈らなくなった相手に対してはすでに連絡しなくなったことから、やはり月餅の贈与慣行を通して人間関係を可視化にして、「差序格局」の特徴を持つ社会関係の変化を意識させることが分かった。 また、対象者たちの日常的な贈与行為に対しても、ともにイベントに参加することで取材して考察してみた。定年退職したB氏は友達に対して返礼の期限を遅らせることで、「人情」を借りている状況を作り出し、返礼するためにまたのイベントを催すことより、相手との関係性を深めていく特徴があると考察した。一方、医者であるA氏は相手が患者であれば、あえて返礼しないことで、借りをしている状態を維持して安心させるが、関係の良くない相手に対しては即座に返礼することで、「人情」を欠かせないようにする特徴があると考察した。 さらに月餅券をめぐる調査も進展した。これまでの月餅券をめぐる調査と考察は、流通システムにおいてどのような役割を果たしているかに注目してきたが、今回の長期調査では月餅メーカーの本部の販売拠点で月餅券の販売について聞き取り調査をした。月餅券の発注は企業に限らず、個人相手にも可能な一方、発注する枚数次第に割引が可能になると知らされた。また、本部を通して注文すれば、対照な月餅ギフトボックスより遥かに低い値段で月餅券を買えることが分かった。これまで考察と並びに分析すると、月餅メーカーは最初から月餅券を低価格で販売すれば、大量に流通させることが可能になり、月餅の販売以外の利益をさらに儲けられることが考察できた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度の当初の計画では、前期において修士課程中の研究成果の論文執筆および投稿を並行して進み、後期で長期調査を行う予定だった。しかし、研究成果を整理したところ、当時の調査データに多少の問題点を見つけ、論文を執筆するには地元の参考文献が必要だと気付いた。そのため、後期の長期調査において、フィールドワーク調査とともに文献調査を行い、並行して論文を執筆することにした。 また、フィールドワーク調査では修士課程当時と同じ調査対象を中心にして行ったため、当時の調査データと比較しながら、新たな研究成果を考察したり、地元の文献を参考したりして、論文を執筆した。 調査を終えて日本に帰国した後は、調査のデータを整理しながら、指導教授の指導に基づいて論文を完成した。投稿は間に合えなかったため、今年度中に投稿することにした。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進として、論文を投稿したうえ、引き継いでフィールドワーク調査を通して中国の贈答文化を考察する。 今年度はまず、今までの研究成果を論文にして投稿する。修士課程の成果と昨年の調査データに基づいて完成した、月餅の贈与事例を通して中国の贈答文化を分析する論文を最初に投稿する。そして同じデータに基づいて今執筆中の、月餅券をめぐる流通と回収のシステムを分析する論文を今年度の後期に投稿する。 また、三つ目の論文を執筆するため、後期は再び長期調査としてフィールドワーク調査を行う。しかし、月餅の贈与に限らず、さらに広い視野から中国の贈答文化を分析するために、貨幣化や換金化できる贈り物を中心に調査を行う。また、現金より電子貨幣の使用が主流になっている現在の中国では、祝日における贈与行為や一般的な贈与行為において、いかなる反映されるのかを考察することも、調査の目標とする。そして今度の調査を通して、博士論文のテーマを決めて、問題提起できるように進行していきたい。 調査を終えて日本に帰国した後は論文の執筆に専念して、論文の投稿と博士論文の執筆を目指す。
|